東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「柔道(女子)」! 競技解説は、女子柔道のトレーニング指導も務めてきた、アスレティックトレーナーの柳田尚子さんです。

  • 柔道(女子)の魅力とは?

柔道(女子)の特徴

柔道は、いわずと知れた日本発祥のスポーツで、男女ともメダル量産が期待されるスポーツです。男子柔道は1964年の東京大会で初めて五輪の正式種目として取り入れられました。それに対し、女子は1970年代半ばまでは日本でも大会自体が開催されず、1980年になって初めて世界女子柔道選手権大会が開催されました。それから8年後のソウル五輪で公開競技として実施され、1992年のバルセロナ五輪から正式種目として採用されました。実は女子柔道の歴史はまだまだ浅いのです。

柔道は、「投技(なげわざ)」と「固技(かためわざ)」を使って、相手を制すことを目指す競技です。女子の個人戦は体重区分による全7階級制で実施されますが、2016年リオデジャネイロ五輪では、7階級中金メダル1個、銅メダル4個という成績を収めました。東京2020では男女各3人計6人による男女混合の団体も行われる予定で、日本はメダル候補です。会場は1964年の東京五輪でも使用された日本武道館です。

柔道(女子)を観戦するときのポイント

個人戦は、各階級ワンデートーナメントで実施され、決勝戦まで一日で勝敗が決まります。柔道は五輪期間の序盤に実施されるので、日本選手団の勢いが出るかどうかは柔道の闘いぶりにかかっているともいわれています。女子は最軽量である48kg以下級の渡名喜風南(となきふうな)選手が初日に闘い、7日間にわたり、一階級女子一人の日本選手が試合に出場します。試合制限時間は4分ですが、試合開始直後に「一本」で試合が終わることもありますし、4分で勝敗の決まらないこともあります。制限時間内に勝敗が決まらない場合は、時間無制限の延長戦(ゴールデンスコア)を行います。

前回のリオ五輪からルールが大幅に改正されています。今の柔道は観る側の視点に立ち、「わかる」「楽しい」「エキサイトする」柔道が展開されており、技のポイントは「一本」、「技あり」の2種類。これまでの「有効」というポイントは廃止されました。また、技によるポイントを評価するために、「指導」というペナルティはポイントとしてみなされなくなりました。「指導」を3回もらった時点で反則負けとなりますが、どちらかが「投技」、「固技」でポイントを取らないと終わらないので、試合が10分と続くこともあり、こうなると消耗戦です。「技あり」は2回取ると、その時点で試合終了となります。主審とともに、選手の投げた技が「一本」か「技あり」なのか、一緒に判定しながら観戦するとおもしろいのではないでしょうか。

また、柔道の精神は、礼儀や規律、相手を尊敬する道徳的観点から、世界中で人気があり、正しい礼法が実行されます。試合が終われば、柔道衣を正しく着用し直し、お互いを称え合うためにしっかりした礼をして畳からおりていきます。このような柔道の精神の美しさを観ることも観戦のポイントともいえます。

東京2020でのチームジャパンの展望

国際柔道連盟には200もの国が加盟していることをご存知でしょうか。日本は世界と対戦しても負け知らずと思われがちの柔道ですが、近年、世界各国で競技者人口が増えているため、苦戦する試合も数多くなりました。ただ、ルール改正により、「投げないと勝てない」、「固技でポイントを取らないと勝てない」というルールとなり、技術的に優れている日本人にとって大変有利です。

すでに、女子は7階級とも東京2020出場選手は内定しており、なかでも2019年、東京の日本武道館で開催された世界選手権で金メダルを獲得した2人の20歳の選手に注目が置かれます。52kg以下級の阿部詩(あべうた)選手、78kg超級の素根輝(そねあきら)選手です。 阿部選手は多彩な技を持ち、どんな形からでも「一本」を取れる技を持っています。一方、素根選手は、超級といって78kg以上の体重の選手が集う階級の中では大変小柄ですが、持久力と技術で、世界で結果を出し続けています。いわゆる「柔よく剛を制す」ことを体現している選手です。

また、日本人選手は「固技」が得意な選手が多く、立った状態でも寝た状態でもどこからでもポイントを取ることができます。そして延長線となっても粘り強く闘い抜くことができます。日本選手の巧みさ、粘り強さ、そして正しい礼法を武道の聖地・日本武道館で観ることができます。ぜひ一緒に応援しましょう。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

柔道といえば、2004年頃、日本大学女子柔道部のウエイトトレーニングの指導アシスタントとして定期的にサポートしていました。普段の技術練習に加えてかなりハードなトレーニングをしていた記憶があります。階級制なので体格に関係なく取り組めること、また、社会的スキルのひとつである「礼の精神」を学べることから、子どもに体験させる保護者も多いと聞きます。柔道ではレスリングと同じように、押す・引くなどの動きや筋発揮や脱力が繰り返される局面もみられるため、幼少期に学んでおくと、いずれ様々なスポーツに展開ができそうです。

競技解説:柳田尚子(やなぎだしょうこ)

東京医療保健大学アスレティックトレーナー。江戸川大学女子バスケットボール部、国立スポーツ科学センタートレーニング体育館(非常勤)に勤務後、立命館大学スポーツ強化センターで女子柔道・女子バスケットボール部のトレーニング指導を務める。2016年4月から現職。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者。