東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「卓球」! 競技解説は日本卓球協会のNTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)専任アスレティックトレーナーの羽生綾子さんです。

  • 卓球

卓球の特徴

卓球競技は15.25cmの高さのネットを挟んで長さ2.74m、幅1.525m、高さ76cmの台上で互いにボールを打ち合うスポーツです。その発祥はイギリス。19世紀後半のことです。使用するラケットは、ラバーの厚みに規定はありますが、大きさに制限はありません。1,600種類以上ある公式ラバーから自分の卓球スタイルに合ったものを選んで使います。試合は、11点先取の7ゲーム(予選やダブルス種目は5ゲーム)で行われます。最初のサービスはコイントスで決められ、2本交代で行われます。10-10になった場合は1本ずつ交代となります。

卓球にはいくつかのプレースタイル(戦型)があります。ラケットの握り方にもよりますが、大まかには、卓球台にぴったり付いてプレーする「前陣速攻型」、台から少し離れて(中陣)戦う「ドライブ主戦型」、そしてさらに台から離れて(後陣)、ボールを上から切るように回転をかける「カット主戦型」に分けられます。

卓球は体の特徴に合わせた戦型で戦うことができるので、日本人にも向いています。世界的には日本人は体が小さく不利に見えるかもしれませんが、体が小さい分、すばしっこく、俊敏性があります。台に近づいてスピードの速い卓球をすることで、体の大きい選手はついてくることができません。こういったことから、日本の女子選手には「前陣速攻型」の選手が多く見られます。

卓球を観戦するときのポイント

卓球は回転のスポーツとも言われています。卓球台上で直径40mm、重さ2.7gのボールに回転をかけます。使う技術によっても異なりますが、ドライブでは1秒間に最大160回転もの回転をかけることができます。回転をかける方向や回転量によりボールが急激に曲がったり、止まったり、落ちたりします。テレビなどの画面では回転量を見ることはできませんが、凡ミスに見えるようなプレーの裏には、回転量が関わっているのです。

上記のように、卓球競技は体の特徴に関係なく対等に戦えるスポーツです。男子選手は、パワーがあるのでボールにドライブ回転をかけるダイナミックなプレーもよく見られます。特に体の大きい選手同士のドライブの打ち合いは圧巻です。

一方、女子選手の前陣でのスピード感のある試合は、息をつく間もないほどです。また、何度攻撃されても台から下がったところで徹底的に守るカットスタイルも見応えがあります。こういった戦型を気にしながら観戦するのもおもしろいでしょう。

卓球競技のダブルスは、テニスやバドミントンと違い、2 人の選手がボールを交互に打たなければなりません。ですので、試合を見ていると選手がクルクルと位置を変えながら交互に打球している様子がわかると思います。

東京2020でのチームジャパンの展望

東京2020では、団体戦と個人戦が行われます。団体戦は5戦3試合先取で行われ、第1試合がダブルス、第2試合以降がシングルスです。リオ大会との違いは、第1試合がダブルスということです。日本選手はダブルスも得意としているので、どのペアで戦うのか対戦相手によって変えることができます。

個人戦は、シングルスに加え混合ダブルスが加わりました。水谷隼選手(個人) と伊藤美誠選手(スターツ)のペアリングとなりました。国際大会でも優勝しており、東京2020でのメダルも期待できます。シングルス男子代表は、張本智和選手(木下グループ)と丹羽孝希選手(スヴェンソン)です。張本選手は大きな声で自らを鼓舞し、エネルギッシュなプレーで相手選手を圧倒します。一方、丹羽選手は表情を一切変えず、クールに 淡々と試合を進めていきます。超高速カウンターが魅力的です。

女子シングルス代表は、伊藤美誠選手(スターツ)と石川佳純選手(全農)です。伊藤選手は「大魔神」と呼ばれるくらい堂々とした自信に満ちあふれたプレーで中国選手をも圧倒します。「みまパンチ」と名付けられたスマッシュが特徴です。石川選手はロンドン以来3度目の出場となります。欠点のないオールラウンドのプレーで魅了してくれるでしょう。団体戦、個人戦ともにメダルチャンスがありますので、それぞれの選手の特徴を見比べて観戦すると楽しいと思います。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

私の母校では毎年、教員、PTA、小学生、中学生対抗の卓球大会のイベントがあり、休み時間は同級生で作戦を練ったり練習したりしました。スポーツというよりは娯楽のイメージが強かったです。卓球選手のトレーニングについて初めて学ぶことができたのは、東海大学スポーツ医科学研究所の研修員時代。同僚が卓球の競技特性とトレーニング、そしてケガ予防をテーマに勉強会を開いたときのことです。高校・大学レベルともなると強度の高いトレーニングを行っています。けれど、卓球は子どもでも楽しくできるスポーツとして比較的簡単に体験することができますし、昨年プロリーグが発足しメディアでも取り上げられるようになり、身近なスポーツになりました。同じラケットスポーツであるバドミントン同様、家族で楽しむことができるスポーツであることから、幼い頃からスタートすることができます。私の中学一年生の息子はこのほど卓球部に入ることを決めました。いろんなスポーツを体験させてきましたので、まさか卓球を選ぶとは思ってもいませんでしたが、このようなケースもあるでしょう。一度は家族で卓球大会もよいかもしれませんね。

競技解説:羽生(はぶ)綾子

公益財団法人日本卓球協会専任アスレティックトレーナー。ロンドンオリンピックまで女子ナショナルチームトレーナーとして海外遠征に帯同。その後、味の素ナショナルトレーニングセンターを拠点に小学生からトップまで全カテゴリーの男女ナショナルチームを担当している。また競技者育成委員として、日本全国の小学生へのコンディショニング指導を行っている。