東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンス! そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「砲丸投」。競技解説は鎌田圭さんです。

  • 砲丸投

    「砲丸投」の魅力とは?

砲丸投の特徴

砲丸投は陸上競技のフィールド競技の投てき種目のひとつ。2.135mのサークルの中から、片手で鉄球(男子は7.26kg、女子は4kg)を前方に投げ、飛距離を競う競技です。その歴史は古く、石を投げて競う「力比べ」から始まり、1860年頃から鉄製の弾丸を投げるスタイルに変化し、現代の形へと変遷してきました。オリンピックにおいては、男子は1896年の第1回アテネ大会から行われており、女子は1948年のロンドン大会から正式種目となっています。

砲丸投を観戦するときのポイント

砲丸投は陸上競技の中でももっともシンプルな力比べの競技です。鍛え上げた肉体を効率よく素早く動かし全身で生み出した力を砲丸に伝え、サークルの中心から広がる扇形のライン内(34.92度)でより遠くに投げられたら勝ちというものです。

投げたあとにサークルの前方に出てしまったり、サークルの中心から広がる扇形のラインの上や外に落ちたらファウルとなり、その試技は記録無しとなります。そのルールの中で、世界各国から集まった大きな体を持つ力自慢たちが闘う様子はまさに大迫力! よって、この種目の観戦ポイントの1つ目は選手の「体格」! 男子の世界上位の選手は身長190㎝前後、体重120~130kg台が多く、女子では180㎝前後、体重は90~110kgにもなります。2016年のリオデジャネイロ大会で男子砲丸投のチャンピオンである、アメリカのライアン・クラウザー選手は身長203㎝、体重が145㎏もあるそうです! そんな筋肉隆々な選手たちを見ていると、それだけで自分も強くなれそうに気がしてきます。

2つ目の観戦ポイントは投てきのスタイル! 国や選手によって投げ方はさまざまですが、現在の主流はグライド投法と回転投法に分けられます。グライド投法はオブライエン投法とも言われ、1950年代に活躍したオリンピックチャンピオン、パリー・オブライエン選手が考案した投法。投げる方向に背を向けて大きくバックステップをしたあとに、体を捻り砲丸を押し出すというもの。動きや記録に安定感があり、日本人選手が多く取り入れているスタイルです。

もうひとつの投げ方は回転投法で、世界選手権などで多くの海外選手が取り入れています。円盤投げのようにサークルを1回転半ほどして砲丸を押し出すダイナミックなスタイル。最近では、日本記録保持者の中村太地選手をはじめ、日本の選手の中でも回転投げを行う人が増えてきたようです。グライド投法に比べ、動きや記録の安定感がやや劣る点はありますが、うまく決まれば一発逆転も狙える可能性があります。大きな身体の選手たちがサークルの中を華麗に素早く動き、大砲のように砲丸を勢いよく押し出す瞬間は圧巻です!

最後、3つ目の観戦ポイントは記録! 砲丸投の世界記録は、男子23.12m、女子22.63m。男子は1990年5月、女子は1987年6月に出て以来、更新されていません。約30年間、さまざまな研究を基に最新のトレーニングや栄養摂取の方法、サプリメントが開発され、選手の身体は大きく力強く成長してきました……が、まだ記録の壁は破られていないのです。ですが、今年ドーハで行われた世界選手権の男子砲丸投で3名の選手が世界歴代3位(22.91 m)と5位(22.90 m/ 2名が同記録)の大記録を打ち出しました! この記録はものすごいもので、世界記録更新まであとひと息のところまで来ています! もしかしたら、東京2020で30年ぶりに世界記録が更新される瞬間が観られるかもしれません。

東京2020でのチームジャパンの展望

東京2020への参加標準記録は男子が21.10 m、女子が18.50 m。現在の日本記録は男子が18.85m、女子が18.22 mですから、男女ともに、日本記録を上回らなければ参加はできません。記録だけを見ると、女子のほうが参加標準を突破する可能性が高いように思えますが、現日本チャンピオンの郡菜々佳(こおり ななか)選手(円盤投げ日本記録保持者)のベスト記録は16.57 mで、日本記録にも参加標準記録にもまだ差があります。今後さらにフィジカル面の強化をし、世界との差を少しずつ埋めていくことが期待されます。

遠山健太からの運動子育てアドバイス

砲丸投は競技としては中学生からとなりますので、幼少期に「砲丸投を体験しよう!」といってもなかなか難しいと思います。投げ方も「投げる」というよりも「押し出す」形なので、子どもには最初はちょっと難しいかもしれません。砲丸投経験者で現在ラグビーチームのトレーナーをしている藤原栄三氏は、「選手は補助的に後ろ、前、横からとさまざまな投げ方で練習を行い、地面から力をもらいながら力を発揮する感覚をつかみます。それは走ったり、跳んだり、投げたりなどの基本動作に通じますので、記録よりもどのようにすれば砲丸を遠くに飛ばせるかという創意工夫をすることも大切なのではないでしょうか」と語っています。なるほど、砲丸投げは難しいけれど、コツをつかめばいろんなスポーツの動きに応用できそうです。成長をしていく過程でチャンスがあれば、安全面に配慮しながら試してみるのもよいかもしれません。

競技解説:鎌田圭

中学、高校、専門学校で陸上部に所属。高校から砲丸投、円盤投を始め、本格的にウエイトトレーニングもスタート。卒業後は「ルネサンス」に入社し、「スポーツクラブ ルネサンス 仙台長町南24」にてフィットネストレーナーとしてトレーニング指導やスタジオプログラムを担当。またボディビル競技に出場し、宮城県選手権で優勝、東北北海道地区の大会で準優勝という成績を残している。

ナビゲーター:遠山 健太

リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数