海外にいると、日本の姿が違って見えてくる。日本食、カルチャー、トレンド、価値観……世界各地の目線から見える“ニッポンの今”とは? 現地在住ライターが、海外から“逆照射”される日本の面白さをお届けする連載、第15回のテーマは、「オーストラリアの最新・魔改造Sushi事情」。
オーストラリアの寿司が進化しすぎてえらいことになっている。……と言ってもピンと来ないかもしれない。百聞は一見に如かず。まずは写真をご覧いただきたい。
「えーっと、これはスイーツか何かだよね?」と思われた方もいるかもしれない。でも目を皿のようにして、「お皿」のほうをよくご覧いただきたい。そう、日本の回転寿司でもよく使われている皿である。そしてその上に乗っているのもまごうことなき寿司なのだ。
最初の一品は「サーモン&チーズ巻き とびっことマヨネーズ&てりやきソース和え」。寿司の必須要素のひとつである「酢飯」は、垂れるチーズとてりやきソースにその面影もないほどおぼれかかっているが、壁面にかすかにその姿を見せている。
次の一品は「ボルケーノ」。火山という意味だ。炙りサーモン巻きの頂上からとびっことチーズとてりやきソースが零れ落ちる様子が、火山に似ているから命名されたと推測される。こちらも酢飯はこの円錐の内側にちゃんと入っている。
これらを「寿司」と呼ぶべきか。ちなみに辞書的には寿司とは「酢や塩で調味した飯、またはそれを握ったものに、生または塩や酢をふりかけた魚などの具材を乗せたり中に入れたり混ぜたりした料理。握り寿司、散らし寿司などがある」といった感じで定義されている。要は酢飯と具材をあれこれした料理である。
これからすると上記の料理たちは多少、というよりもかなり攻めているが、「寿司と呼ぶのは間違い」とは言えない。定義的には寿司の範疇に入ると言えるだろう。
続いて、こちらの写真の左側の寿司。
実はこれ、冒頭に紹介した「サーモン&チーズ巻き とびっことマヨネーズ&てりやきソース和え」の別日バージョン。具材の量や盛り付けがかなり異なっている。仕上がりがその時々で自由すぎるのも、オーストラリアの寿司の特徴だ。
■食欲×アート=オーストラリア“Sushi” !?
もう少しオーストラリア独特の寿司をご覧いただこう。
こちらはサーモンの寿司、らしい。確かにシャリも見えるし、わさびもガリも乗っているので、寿司らしさは出ている。
ただ、主役のサーモンは「オレは寿司という概念には縛られたくない」とばかりに飛び出しているし、刻みネギとともに振りかけられている物体も謎だ。
この写真は知人にもらったものだが、撮影者に確認しても「たぶんすりおろしたチーズだったと思う」というあいまいな答えしか得られない。
こちらの写真、左は「焼肉チーズ巻き」。右はおそらく「チキンカツとアボカド」だが、てりやきソースやマヨネーズを豪快にまとい、もはや「異形」と形容したくなる仕上がりだ。
と、ここまで“魔改造Sushi”系ばかりを紹介してきたが、日本由来の寿司の面影をとどめた“穏当な寿司”もお見せしておこう。
てりやきソースとマヨネーズに今にもおぼれそうだが、比較的穏当に見えるこちらは、「炙りサーモンとキュウリ巻き」。
こちらの寿司も、とろけるチーズがかかっていようが、てりやきソースに漬かっていようが、「このくらいなら全然アリ」と思えてくるから不思議だ。ちなみにこれは「太巻き」である。
「てりやきソースがかかった寿司」は、その味をひとことで表現すると「甘い」。いなり以外の寿司が甘いと言われると感覚がバグるかもしれないが、「日本の寿司ではなく、“Sushi”という別ジャンル」だと考えると、「これはこれでいけるなあ」と徐々に洗脳されてくる。ある種の中毒性があるのだ。
■もちろん普通の寿司もある
オーストラリアの寿司の名誉のために言うと、こうした“進化系Sushi”ばかりではない。本格的な握り寿司もあれば、太巻き寿司もある。
ただし、太巻きは海苔が内側に入る「裏巻き」か、海苔の外にライスペーパーが巻かれていることが多い。
ちなみに一般のオーストラリア人が「寿司」と言われて最初に思い浮かべるのがこのタイプ。長さは約10センチ、太さは4~5センチの太巻きと細巻きの中間くらいの太さの巻き寿司だ。
左からツナ、サーモンとアボカド、エビ天、チキンカツ。「ん!?」となる具材もあるにはあるが、ソースなどがかかっていない分、視覚的にもすんなり受け入れられるだろう。
繁華街やショッピングセンターのフードコートには、こうした寿司を提供する店が必ずと言っていいほど入っている。
かつては「おにぎり」も、梅・しゃけ・こんぶ・おかかくらいだったものが、今やコンビニの棚を見ればものすごいバラエティになっている。アメリカで生まれた「カリフォルニアロール」が国内でもしっかり認知されているように、いつかオーストラリアの”Sushi”の中から日本に逆輸入されてスタンダードになるものが出てくる日も遠くないかもしれない。








