リモートワーク下で求められる「支援型マネジメント」の第2のポイントは、部下の「仕事の具体化」への支援だ。第1のポイントの期初面談による「責任の明確化」(本連載の第3回)を踏まえ、部下の今期(半年間を想定)の具体的な仕事の目標や取り組みを定め、リモート下であっても自律的に仕事を進められる態勢を整えたい。

  • 「伴走型の支援」が望ましい

    「伴走型の支援」が望ましい

私が開発した「任用面談シート」(以下に記入例を掲載)をもとに、上司が部下と面談を行いながら、部下の仕事の具体化を支援する手順とポイントを解説しよう。

部下のキャリア希望も踏まえ、「今期のミッション」を定める

  • 上司は部下との任用面談(任せる仕事を具体化し動機づけする面談)に先立ち「任用面談シート」を用意する

    上司は部下との任用面談(任せる仕事を具体化し動機づけする面談)に先立ち「任用面談シート」を用意する

ミッションとは、部下に任せる業務のことだ。まず、上司は部下との任用面談(任せる仕事を具体化し動機づけする面談)に先立ち、「任用面談シート」に事前記入を行うことから始めよう。本連載の第2回(前回)で解説した、部下と行った期初面談の結果を振り返りながら、その際に用いた「メンバー育成計画シート」への事前記入内容で変更がないものはそのまま転記し、面談の結果修正を要する点は整理して記入すればよい。シート記入例の黒字部分が該当する。

シートの中段、「今期のミッション」(記入例の赤字と青字の欄)が、これから行う任用面談のメイン部分だ。上司は部下への依頼事項として、赤字部分を以下の要領で検討し、予め記入しておく。

「優先順位順」の枠……今後6か月間に部下に取り組んでほしいミッション=より具体的な業務の項目を記入

「シェア」の枠……本人の仕事全体の中での、各ミッションの重みづけ(部下が力を割く割合)。合計100%で記入。

上司はここまで記入し、青字部分は空欄のまま残しておく。

このシートへの事前記入のポイントは、部下との期初面談の結果を十分に踏まえながら、次の任用面談で部下を前向きに動機づけできる内容に仕上げることだ。部下本人の将来へのキャリア希望と上司の期待を土台に、本人の強みを活かし弱みを補強する視点を加味しながら、「任せたい役割・仕事」の領域で本人に当面力を発揮してもらうに相応しい業務として「今期のミッション」を書き込もう。

本人への期待を込めて、「役割・仕事」を動機づける

以上の準備が整ったら、任用面談を実施しよう。面談では、シートを部下にも共有し、部下との対話を通して部下の「今期のミッション」を具体化していく。以下シートの記入例に触れながら、手順とポイントを説明していこう。

面談では、まず上司がシートの記入内容を部下に説明する。期初面談での共有事項(黒字部分)は再確認部分ではあるが、先の面談での対話も振り返りながら、本人の胸に落ちるストーリーとしてしっかりと伝えることが大切だ。

記入例の田中一郎主任の場合は、本人がコンサルティング営業の職場風土づくりへの貢献を通して自らのキャリアを磨きたいと希望を表明している。これを踏まえ、上司は田中主任に次のような期待を述べることが考えられる。

即ち、本人の法人営業の実績に加え、高いコミュニケーション力を評価していること。その強みを活かし、他部署との連携強化も図れるリーダーに成長してほしいこと。そこで、今回の主任昇進を機に、まず「営業グループの新規開拓リーダー」として、理想の職場づくりに向け率先垂範で力を発揮してほしいこと。その際、本人の課題である仕事の正確さや緻密さの向上を意識して取り組んでほしく、上司もOJTで支援すること、などを語っていくのだ。

部下が、任された自分の役割・仕事の意義と概要を再確認でき、具体的なイメージをつかめることが大切だ。

「今期のミッション」の意義と重みづけ(シェア)を示す

次に、上司は、自ら定めた「今期のミッション」の「優先順位順」と「シェア」の欄(記入例の赤字部分)を部下に説明する。

記入例の田中主任の当面の役割として最も大事なものは、既に実績のある法人営業で「新規営業のトップランナー」としてさらに業績を上げ、チームのけん引役・ロールモデルになることだ。そこで、本人の50%の力を期待する。

次いで、チーム全体のコンサル営業力の強化は本人の希望でもあり、チームリーダーである主任の本務である。そこで、これを如何に進めるか、「営業力の底上げ」へのリーダーシップの発揮に期待し、シェア30%で取り組んでもらうことにする。

さらに、コロナ禍の影響で、「非対面型営業の仕組みづくり」は喫緊のチーム課題だ。優れた営業力から新しいノウハウを生み出し、この課題をクリアしてほしいと期待を込める。

ミッションの説明に際しては、これまでの本人の行動や成果で評価している点や、今後期待する姿をできるだけ具体的に述べていこう。また、チームの課題点や今後めざしたい方向など、職場全体の課題感も伝えたい。部下の仕事の工夫や進め方など細部に立ち入るのは避けつつも、上司が部下の各ミッションに込めた考え方や期待の理解に相互のズレが生じないよう、しっかり伝えよう。

部下自身に期間目標を提案させ、承認する

以上の上司からのメッセージを踏まえ、シートの記入例の青字部分の期間目標(終期の意志目標と、それに至る区間目標)は、部下自身に立案させる。一度部下にシートを持ち帰らせ、よく練って記入させる方法と、面談で対話を続けながら一緒に記入していく方法がある。新入社員など自力での目標の具体化が難しい場合は、面談で一緒に立案するのが現実的だ。

青字で記入された一番右の「意志目標」が、今期中に達成をめざす最終目標だ。その左の「6か月」「3か月」「1か月」は、そこに至るプロセス設計と、さらに細かく刻んだ各区間の到達目標である。それでは、部下の仕事の具体化支援のポイントを押さえておこう。

「"作業"を"仕事"に変える3ステップ」で支援する

まず上司が留意すべきは、あくまでも任せた仕事の主人公は部下自身と心得ることだ。リモートワーク下で日々の上司の支援がなくても、部下が自律的に業務を遂行できることが重要だからだ。したがって、部下自身が納得して仕事の目標を立案し、上司に提案し、相談の上で承認を受ける形が望まれる。連載第2回でふれた、「内発的動機づけ」である。

そこで、上司は部下自らが「"作業"を"仕事"に変える3ステップ」を踏めるように、伴走型の支援を行うことが望ましい。

第1ステップでは、上司は部下に対し各ミッションの説明をしながら、質問や意見を促す。部下が自らの意志目標を効果的に具体化するための対話を深め、上司からミッションの目的やより具体的なイメージを十分に引き出させることがポイントになる。上司が一方的に説明しきるのではなく、あえて部下自身に考えさせ質問させることが大事だ。部下の主体性を引き出し、成長を支援する対話を心がけよう。

第2ステップでは、部下に各ミッションの目的を踏まえた意志目標を検討・工夫させる。大事なことは、部下が各ミッションの本来の目的に立ち返り、その実現に相応しい手段を創意工夫し、目標とプロセスを組み立て、必要に応じて自ら軌道修正できる姿勢を養うことだ。仕事の一つひとつは単純作業に見えるが、常に大元の目的に紐づけて考えることで、より良い創意工夫や改善が生まれる。重要な点であり、任用面談では部下によく説明し、十分理解を促しておきたい。

第3ステップでは、部下が意志目標を上司に提案し、アドバイスを受けながら承認を得る。上司は部下の提案をできるだけ尊重しながら、目標の具体性や現実性、達成の段階分けや期間の取り方、実行上の課題など、過不足や無理がないかを見極めアドバイスを行い、必要な調整の上で承認する。

部下の成熟度に応じた支援に留意する

仕事の具体化の支援にあたって、上司は部下の成熟度に応じた対応を心がけることも大切だ。中堅やベテラン層であれば、本人の提案をできるだけ尊重し、必要最小限のアドバイスに留めよう。例え正論でも上司が過干渉になると、部下の自律意識を損ない士気を下げることになりかねず、逆効果になる。

一方、新入社員などの場合は、期間をさらに細かく1か月ずつに刻み、各月の目標は上司が提案して達成方法は本人に考えさせるなど、より踏み込んだきめ細かい支援が必要だろう。各月の目標も一気に難易度を高くせず、「小さな階段」を刻み、最初は易しい仕事から始め、順に仕事量や範囲を増やすなど、段階的な成長を促す目標設定に配慮しよう。