遅々として進まない女性活躍推進、国を挙げた計画は失敗に

内閣府によると、令和2(2020)年の数値で、就業者に占める女性の割合は44.5%と先進主要諸国と比較して大差はなくなったものの、管理的職業従事者に占める女性の割合は13.3%(令和3年版男女共同参画白書)。国際的水準の30〜40%台に比べ著しく低く、政府が掲げた目標の半分の15%を下回る惨憺たる現状だ。

女性活躍推進に向けて、政府が長年にわたり声高に唱えてきたのが「202030(ニーマル・ニーマル・サンマル)」。すなわち「2020年までに指導的立場の女性を30%に」という政策目標だった。

しかし、政府は2020年12月に発表した「第5次男女共同参画基本計画」の中で、その達成は程遠いと白旗をあげた。そのうえで、「指導的地位に占める女性の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度となるよう目指して取組を進める」とし、さらに「2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す」と、目標や期限を曖昧にし、先送りしている。こうして、国を挙げた女性活躍推進計画は明らかな失敗となった。

定年を迎える男女雇用機会均等法第一世代

一方、1986年に男女雇用機会均等法が施行されて、今年(2022年)で36年。昨年12月に日本経済新聞で、労働官僚時代に均等法立案に奔走した赤松良子さんが『私の履歴書』を連載されていた。90歳を越えても、日本ユニセフ協会会長を務められている。自らも男性優位の職場で少数派としての悔しさをバネにキャリアを切り拓いてきた軌跡に、頭が下がる思いがした。

こうしたパイオニアが創った礎のおかげもあり、昭和の終盤から平成の初めにかけて就職した「均等法第一世代」ともいうべき女性たちが、今や定年を迎え始める年代となった。女性活躍推進施策の黎明期に社会人となり、悔しい思いと苦労を重ねながらキャリアを切り拓いてきた世代だ。男性優位の職場環境で勤め上げ、少数派の管理職として奮闘してきた人も少なくない。

この間、なぜ政府目標が達成できなかったのか。2020年は過去となったが、これからも次世代を担う女性は次々に社会参加してくる。国も企業も失敗の原因を真摯に探り、今後の有効な対策を立てる必要がある。そのためには、生き字引ともいえるこの均等法第一世代の生の声に、謙虚に耳を傾ける必要があるのではないだろうか。

なぜ起業家に占める女性の割合はすでに30%以上なのか

先ほどの内閣府発表データのなかで、私が注目する別の数字がある。それは、「起業家に占める女性の割合の推移」だ。ここ40年来、若干上下しつつも3割から4割を保っており、最新の数値である平成29(2017)年は34.2%となっている。働く人たちの9割はサラリーマンで起業家は約1割だが、そのなかの女性比率は女性管理職比率目標の30%を早くからクリアしているのである。

私はこの数字について、次のような仮説と希望を持っている。女性にとって、昭和に原型ができた男性優位に作られてきた組織の枠組みのなかでリーダーシップを取るのは至難の業だ。過去や先人を否定しなければならない状況が多発するからである。しかし独立・起業すれば活躍しやすい。もちろん、会社の後ろ盾がないなかでビジネスをする苦労は並大抵ではないものの、立ちはだかる内なる組織の壁がないからだ。

だからといって、安易に女性に独立・起業を勧めたいわけではない。企業組織のなかでも、この構図をうまく作り出せれば、女性の活躍は進むのではないかと私は考えている。

ワーク・エンゲージメントが高い"フリーランス"という働き方を参考に

企業など組織の不合理に気づいた女性の中には、フリーランスという働き方を選択する人もいる。自分の持ち味や経験値を活かして、自宅などをベースにしながら自分のペースで働けるからだ。

日本で働く人は、欧米と比べてワーク・エンゲージメントが極端に低いとされている。ワーク・エンゲージメントとは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態を指す。ところが、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の調査(「フリーランス白書2019」)によると、会社員よりフリーランスの方がワーク・エンゲージメントは高いそうだ。またフリーランスに絞ると、ワーク・エンゲージメントの高さは欧米とも遜色がないとされる。これは、柔軟な働き方とともに、自律的な働き方も可能だからだろう。

とはいえ、フリーランスとして独立することは、会社の看板に頼らず個人で働くプロフェッショナルになることであり、全ての人にお勧めできるものではない。組織内での男性優位の壁があるように、組織外でも男性優位の壁にぶつかることもあるはずだ。

そこで、企業の仕組みを改革して、フリーランスの人たちが得られている自律的な働き方をどこまで反映できるかが鍵となる。

先行事例はある。私が見てきた企業の中では、女性経営者のもと、ワーキングマザーたちが活き活き働き、大きく業績を伸ばすところもある。働く現場に共通するのは、顧客・社会貢献に向けた企業理念やビジョンがしっかり共有されており、一人ひとりの働きがいとキャリアを重視し、活躍と成長を支援する本気度だ。たとえ育児などの制約があれども、本人が納得した目標へのコミットは厳しく求めつつ、その実現に向けた働き方や仕事の進め方は社員一人ひとりの裁量に任せている。

あらゆる企業の現場で、本質的な女性活躍に踏み出すことが重要だ。女性が単に働きやすいだけでなく働きがいを育めるように、職場風土、マネジメント層の意識、当事者である女性の意識を変えていくことだ。

社員一人ひとりに自分ならではの重要な仕事が任されており、コミットした目標実現に向けて、柔軟で自律的な働き方が可能で、働きがいを得られる環境を醸成する。そうできれば、女性の退職を減らすのみならず、真の女性活躍が実現できるのではないだろうか。また、こうした改革は何も仕事と育児を両立する女性だけの話ではない。すべての多様な社員の成長・活躍と企業の成長につながるものでもある。

女性活躍推進は、社会や企業の自己改革から

企業は本来、顧客や社会の問題解決に貢献することで存在価値を発揮し、その結果として収益を得る仕組みだ。社会貢献という企業の目的と、結果としての収益を取り違えてはいけない。しかし残念ながら今の企業の多くが、山積する社会問題の解決に対応できていない。この企業のあり方を問い直すことなく、女性活躍だけを目指す取り組み方にも無理があったのではないだろうか。

男性中心、利益第一主義で走ってきた組織を変えることなく、女性リーダー比率だけを上げようとして、横車を押す状況になっていたのかもしれない。これが、女性活躍が進まなかった主因なのではなかろうか。

したがって、女性管理職比率の向上も含む女性活躍推進は、社会や企業の枠組みそのものの改革とセットで進める視点が大事だ。これまで自ら変われなかった古い企業・組織の改革を目的に据え、そのために旧弊とは一線を画す女性の活躍を図るのだ。

さらには、既存の組織や事業から独立した「特区」をつくり、女性リーダーに丸ごと任せることも有効だろう。いわば、前例や慣習に囚われない新たな環境と発想で活躍してもらう企業内起業だ。もちろん既存のチームや事業でも、新規プロジェクトを立ち上げるなど創意工夫の余地はある。

こう考えて来ると、これは何も女性に限った話ではないことがわかる。これまで十分に力を発揮する機会が少なかった多様な人たちに、イノベーションの起爆剤を託すことで、組織は生まれ変わる可能性が高まるのだ。