お笑いコンビ「ジョイマン」の高木晋哉が、ちょっぴりほろ苦く、そしてどこかほっこりする文章で綴るこの連載。読者のお悩みにジョイマン高木ならではの視点で答えてもらいます。

今回のお悩み

「会社の同僚や先輩が彼女とのクリスマスのデートプランやプレゼント選びに頭を悩ませています。口では『マジでめんどくさいんだよ』などとぼやいていますが、彼女のいない僕からすると、とてもうらやましいです。『彼女いない歴=年齢』の僕は、今後もこのシーズンに、この苦しみを味わわないといけないのでしょうか」(20代男性会社員)

はじめまして。ジョイマンの高木晋哉です。人間というのは本当にないものねだりの生き物です。彼女がいなければ、「なんで自分には彼女ができないんだ」と文句を言って、彼女がいたらいたで、今度は「自由が欲しい」と言います。人間はずっとそう。おそらく死んでもそうでしょう。地獄に行ったら鬼に「釜茹での刑の熱湯が俺のだけ熱過ぎじゃないか」とか文句を言いますし、天国に行ったら行ったで「ちょっと平和過ぎて刺激が足りない。天使同士の格闘技の試合が見たい」とか言い出すんです。

ジョイマンは2008年にテレビに出て、たくさんの仕事をいただけるようになって、丸1年くらい休みがありませんでした。その状態は、それまで全く仕事のなかった僕らのような芸人にとってはありがたいこととわかりつつ、記憶にあるわけではありませんが、根がぐうたらな僕は当時「明日も朝早いからしんどいなあ」とか自然に言っていたかもしれません。そして、それを聞いていた人間は不快に思っていたかもしれません。

時が経てわかりますが、そういうことを言う人は、幸せを表現する方法がわからないだけなのだと思います。幸せを感じるのが下手なのだと思います。不幸せに文句を言うことに慣れ過ぎて、急に幸せが訪れても文句を言うことでしか表現ができない。そして、その文句に対する周りの反応でしか幸せを感じることができない。幸せを持て余してしまった人間の哀しい性です。

空腹に慣れ過ぎて胃が小さくなっている人は、何か食べたらすぐに満腹になってしまって、それ以上食べろと言われても嫌かもしれません。せっかくの好意で出された料理を断ってしまうかもしれません。でも、常に満腹まで食べることができている人は胃が大きくなっているので、胃が小さい人よりはたくさんの料理を楽しむことができます。

幸せも似ていて、幸せが入る器が小さい人は、大きな幸せが訪れると抱えきれなくて文句すら言い出しますが、広くて深い幸せの器を持っている人は、大きな幸せも自然に両手で抱き締められるのだと思います。だから、20代男性会社員さん、できるだけ普段から自分なりの幸せをたらふく感じておいてください。幸せの器を大きくしておいてください。彼女のいる人のそんな言葉に、他人の反応でしか自分の幸せを感じられないような人の言葉に、苦しみを感じている暇はありません。

20代男性会社員さんがどんなに小さな幸せも見逃さないように、そんな人の言葉に耳は貸さないでいい。心を動かされないでいい。でも、でもね、これは甘えなのかもしれませんが、できれば、幸せの器が小さくなってしまった人間には文句くらいは言わせてあげてほしい。僕も器の小さな人間なので、わかるんです。弱いから文句を言わないと壊れちゃうんです。自分でも気付かないうちに飢えて小さくなってしまった胃袋、それが少し満たされた時に「もう食えないよ、勘弁してくれよ」と言いたいんです。そこに何も悪意や人を不快にさせようなんて意図はないんです。

確かに世界に対する甘えなのかもしれません。でも、言いたいだけなんです。幸せな時に、ただ純粋に「こりゃまいったなあ」とニヤニヤしたいだけなんです。言い方は気をつけます。彼女や彼氏のいる方々、気をつけましょう。人の反応を見るような、いやらしい言い方は極力しないようにしましょう。

人間は弱い生き物。彼女がいない人、彼女がいる人、お互いが弱さを持っています。その弱さを否定し合ってしまえば、息苦しい世の中になるだけ。彼女や彼氏がいる人間は、ただただ黙って幸せをかみしめていなければいけないなんて世界は暮らしづらいと思います。お互いの弱さを認め合って、さらけ出し合って、いつの日か、両者がストレスを与え合うのではなく、穏やかな幸せを与え合えるような関係になれるよう、ジョイマン高木は祈っています。

筆者プロフィール: 高木晋哉

お笑い芸人。早稲田大学を中退後、2003年に相方の池谷と「ジョイマン」を結成。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。趣味は詩を書くことで、自身のTwitterでの詩的なツイートが話題となっている。