多くの人の支持を集めることが人気のバロメーターである一方、常に評価の目にさらされる宿命にあるのが著名人たち。それぞれの職業観の中で、どのような言葉を支えにして苦境を切り抜けているのか。連載「わたしの金言」では、著名人たちが心の拠り所としている言葉を聞く。

第10回は、女優の武田梨奈。セゾンカードの“頭突き瓦割り”CMで世間を驚かせたかと思えば、数々の役柄に染まり、カメレオン女優として異彩を放っている。2015年放送の連ドラ初主演ドラマ『ワカコ酒』は人気シリーズとなり、2019年1月7日から放送中のSeason4(BSテレ東 毎週月曜24時~)も多くの支持を集めている。武田を支える言葉とは。

  • 武田梨奈

    『ワカコ酒』でも話題の武田梨奈 撮影:島本絵梨佳

■「このままでいいのか分からない」に斎藤工は

事務所に入る前に300回以上オーディションに落ちました。事務所に入ってからも、しばらく落ちる日々が続いて。私が初めて弱音を吐いた時、マネージャーさんから「いつまで役者やりたいの?」と問いかけられて、「死ぬまでやりたいです」と答えました。すると、「じゃあ、今売れようと焦らなくていいよ」と言っていただきました。

普通だったら、「早く売れて、稼いでほしい」と叱咤激励されるのが芸能だと思うんです。でも、「息の長い女優さんになれるよう、地道に一緒に目指していこうね」と言われたことで一気に肩の力が抜けて、「地道にがんばっていこう」と素直に思えました。同世代の方や仲が良い子もすごくキラキラしていて、いろんなところでその活躍を目にするたびに「私って地味だな……」と落ち込んで。でも、そのマネージャーさんの言葉で、「私は地味でいいんだ」と受け入れることができました。

  • 武田梨奈

それが20歳ぐらいの時。去年、久々に自分と葛藤する時期がありました。そんな時に映画仲間の方と会話する機会があって、映画評論家の松崎健夫さんと映画解説者の中井圭さんが「武田梨奈は大丈夫だ」と言ってくださって。私はすごく不器用でひとつのことに入り込みすぎちゃうんですけど、「そこを見てる人は必ずいるから、武田梨奈は大丈夫」と。最近、また肩の力が抜けて。力みすぎる癖があるので、「不器用な部分が武器になる」と言われて自信につながりました。

20歳ぐらいの頃、(斎藤)工先輩に「このままでいいのか分からないんです」と相談したこともありました。工先輩は、「日本に君みたいな女優さんはいないから、絶対に自分を信じて続けてください。君は日本映画界の宝だから」と言ってくださって。そういう方々の言葉はすごくありがたくて、私に大きな影響を与えてくださいます。

  • 武田梨奈

ちなみに、さきほどお話したマネージャーさんは今も担当していただいているんです。中学生ぐらいの時に事務所のオーディションを受けているんですけど、面接で落ちて、高校生の時に受け直してマネージャーさんに拾ってもらいました。私にとって恩人なんです。

私を見守ってくださる方がいて、今の私がある。『ワカコ酒』も、『KG カラテガール』という映画でご一緒したプロデューサーさんつながりでいただいたお話でした。そうやっていろいろなところでつながっているので、「地道」の先には思いもよらない出会いが待っています。だから、私は「地道」でいい。それを周りの方が教えてくだいました。

■プロフィール
武田梨奈(たけだ・りな)
1991年6月15日生まれ。神奈川県出身。10歳から琉球少林流空手道に入門し、月心会黒帯。2009年の『ハイキック・ガール!』で映画初主演、2015年スタートのドラマ『ワカコ酒』シリーズで連ドラ初主演を務める。2018年は、『ボクはボク、クジラはクジラで、泳いでいる。』、『殺る女』、『世界でいちばん長い写真』、『三十路女はロマンチックな夢を見るか?』などの出演映画が公開された。