多くの人の支持を集めることが人気のバロメーターである一方、常に評価の目にさらされる宿命にあるのが著名人たち。それぞれの職業観の中で、どのような言葉を支えにして苦境を切り抜けているのか。連載「わたしの金言」は、著名人たちが心の拠り所としている言葉を聞く。

第8回は、吉田羊が主演する『ラブ×ドック』で初の映画監督を務めた鈴木おさむ氏。弱冠19歳で放送作家デビューして以降、数多くのタレントたちと番組を共にしてきた鈴木氏が、今も心に留めている言葉とは。


鈴木おさむ

『ラブ×ドック』で初の映画監督を務めた鈴木おさむ氏 撮影:大塚素久(SYASYA)

放送作家の不遇時代「お前に何があるの?」

大事にしているのは、「自分に何の付加価値があるのか」。19歳でこの世界に入って、ある現場のスタッフから「こいつのこと知ってる?」と紹介された方が、有名な不祥事の当事者だったんです。ニュースを見て、「この人の人生、終わったな」と思っていた人が、この世界では「面白い人」として紹介されていて、ご本人はすごく恐縮されていたんですけどね(笑)。イジっている周りの方が、何となく誇らしげでした。

その頃の僕は、何を書いても評価されませんでした。「お前に何があるの?」といつも言われていた。もちろん犯罪はダメなことですが、この世の中において否定されていることが、その人の付加価値になることもあるんだと知った出来事でした。

企画書の価値基準

「東大出身」が付加価値と思っていても、テレビ局に行けば、東大出身なんてたくさんいる。「イケメン」というだけで田舎の高校ではモテるけど、都会に出たり、芸能事務所に入ったりすれば、ものすごい数のイケメンがいて厳しい現実を知る。みんなが知っている付加価値は、世の中に出ると意外と通用しないものなんです。そういう中で、自分にどうやって付加価値を付けていくのか。すごく大事だなと思います。

  • 鈴木おさむ

普通の会社でも「普通の社員」と「美人の社員」の企画書、ほとんど同じ内容だった場合はどちらを採用しますか? きっと、美人の方が採用される確率は高いはずです。自分が選ぶ側だったら、美人の付加価値の方がよく思えてしまうし、「世界一周してきた人」の企画書と「普通の人」の企画書、内容が同じだったら「世界一周のしてきた人」を採用する。世界中のいろいろなものを見てきたという期待値です。

自分には何の付加価値があるのか。僕は、今でも常に考えています。

  • 鈴木おさむ

    映画『ラブ×ドック』(公開中)
    鈴木おさむ氏はインタビュー取材で、「たけしさんが何で怖い役の迫力が増すのかというと、やっぱりFRIDAY襲撃事件があったからだと思うんですよ」「役者としてカメレオンになることは大事なんだけども、バックボーンが重要で」「『吉田羊』が端々で見え隠れするのは、僕にとってはすごく大事なことです」と語っていた。 (C)2018 『ラブ×ドック』製作委員会

■プロフィール
鈴木おさむ 1972年4月25日生まれ。千葉県出身。大学在学中に放送作家デビュー。多数の人気バラエティ番組を担当。これまで、『ラブ★コン』(06)、『ハンサム★スーツ』(08)、『ONE PIECE FILM Z』(12)、『新宿スワン』(15)などの映画で脚本を担当。現在公開中の『ラブ×ドック』が初の映画監督作品となる。また現在配信中のAbemaTV開局2周年記念連続ドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』の脚本も担当。