今年も台風が頻発しています。そうすると耳にするのが、自宅が浸水したというニュース。自分の家を守るために加入する住まいの保険ですが、誤解している人や考え方が違っていないかなと思う人も見受けられます。そこで今回は火災保険について整理しておきたいと思います。

火災保険は補償の範囲に注意

まず火災保険の対象を確認しておきましょう。火災⇔建物というイメージを持つ人が多いと思います。もちろん「建物」は対象のひとつです。さらにもうひとつ大事な対象があります。それが「家財」。建物自体と、建物の中にある家具・家電などは別扱いされます。つまり補償してもらいたいのは「建物」なのか、「家財」なのか「両方」なのかを加入前にはっきりさせておく必要があります。

また、一般的には「火災保険」といわれていますが、実は火災だけを補償しているわけではありません。損害保険会社によって名称はいろいろありますが、大別すると「住宅総合保険」というタイプと「住宅火災保険」というタイプがあり、補償の範囲が異なります。簡単にいうと住宅総合保険の場合は、住宅に損害を生じさせた原因が幅広くカバーされるのに対し、住宅火災保険は一部の原因に限定されています。そのため保険料は総合保険よりも割安です。

  • 【住宅総合保険と住宅火災保険のカバーの範囲】

例えば台風の大雨で床上浸水してしまったとか、配水管を詰まらせて階下に水漏れさせてしまったというのは、日常的にありがちなリスクですが、住宅火災保険ではカバーされません。

もちろん保険料のこともありますからどちらが良い悪いではありませんが、保険というのはそもそも万一に備えて加入するものです。また建物の修理は決して安くはないので、火事よりもむしろ浸水や水漏れなどは確率が高いことを考えれば、個人的には総合タイプを選ぶことをお勧めします。

家財保険てなんだ?

火災保険と音は似ていますが、中身は全く異なる家財保険。文字通り、家具・家電などの損害をカバーします。火災保険に加入していても家財保険に加入していなければ、建物についての補償はあっても家具・家電への補償は何もありません。火事や災害によるものであれば、通常「冷蔵庫が壊れたから買い替える」のとは違い、一度にまとめて買い替えが発生しますので、100万円単位の出費となることも珍しくありません。

ところが、火災保険に加入していれば家財の補償もあると誤解している人や、家財は家ほどの金額ではないから保険料がもったいないと、家財保険に未加入の人もいるため、家財の補償が全くなく、「こんなはずじゃなかった」ということになるケースも…。

もらった火事でも自分で再建

ところで、「もちろん火事は心配だけれど、しっかり注意していれば出さずに済むから大丈夫」と安心しているあなた!確かに注意していれば自分から火災を発生させることはないかもしれません。しかし隣家が火災になり、我が家へ延焼してしまうこともあり得ますよ。「そのときは隣人に賠償してもらえばいい」と思っていませんか?実は驚きの法律があるのです。

通常、「故意や過失で他人に損害を与えてしまった場合、加害者は損害を賠償する責任を負う」と民法に規定があります。それはそうですよね。

ところが、「失火法」という法律があり、「失火の場合は火災を出してしまった人に重大な過失(寝たばこ、子供の火遊び(→保護者の監督責任を問われる)など)がある場合を除き、賠償責任は免れる」とされているのです。つまり隣人が重大な過失でない火災を起こしてしまい、我が家が延焼してしまった場合でも賠償はされないということです。

被害を被った側からすればとんでもない話といえますが、火災の場合、被害が甚大になる可能性が高く、それを失火者が賠償するのは困難とされ失火法ができました。ですから自分の家は自分で守らなければならないのです。

損害保険にもしっかり向き合おう

生命保険に関しては、十分討したり保険の見直しをすることも当たり前の風潮になってきていますが、損害保険については意外と無頓着な人がまだまだ多いと感じます。

命はあっても損害が甚大であるケースは多く、その場合でも生活再建しなければなりません。命が一番大切であることは間違いありませんが、費用面でいえば一般的な入院、手術よりはるかにかかるケースも多く、その点ではライフプランが揺らいでしまう可能性もあります。自宅や家財に関する保険も一度確認しておくと良いでしょう。

鈴木暁子

鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。