この仕事をしていると、「家計管理がうまくできないのですが、家計簿はつけた方がいいですか?」と質問を受けることがよくあります。私はいつも「どちらでもいいですよ」と回答しています。

もっとはっきり言ってしまうと、家計簿をつけるのに向く人と向かない人がいるので、向かない人は無理して家計簿をつけようなどと思わなくても大丈夫です。

何も意識しないよりは、ゆるくても支出を意識する習慣をつけよう

私自身がかなり大雑把な人間のため、家計簿が苦手な人の気持ちはとても理解できます。そもそも毎日家計簿をつけるのが面倒なのです。家計簿をつけられない多くの人は、「今年こそは」と誓うものの見事に三日坊主。それを繰り返しても、もはやストレスにしかならないのです。

では、家計簿をつけないと家計管理はできないのでしょうか。そんなことはありません。家計簿をつけるのが苦手なので、家計管理がうまくできていないという人は、まずハードルを下げて実践してみましょう。「予算の範囲」で管理することです。

つまり毎月の生活費の範囲内に納めることをキープすれば、取りあえず予算の範囲でやれているということですよね。

食費や通信費はどれくらいが良いかということを質問されることもあります。確かに統計値のようなものはありますが、これも家庭によって使い方に差があります。私の友人で洋服にお金をかけたい人がいます。彼女は洋服にはお金をかけますが食べることに関してはこだわりがなく、「洋服でお金を使っちゃうから外食は控えないとね」と、食費はかなり抑えています。

人によってどこにお金をかけたいかは違うので、食べることが好きなご夫婦に「もっと食費を抑えて」というよりは、「食べることにお金をかけたいなら、その分他を抑えるようにしてみて」という方が現実的ですし、ストレスもたまらないでしょう。ですから「最低限決まった予算の中でやりくりすることを守れば、あとはどのように使っても良い」と少しハードルを下げても大丈夫です。

家計管理は一生ですので、続けることが最重要。ストレスを感じてやらなくなるくらいなら、少しゆるくても支出を意識する習慣をつけた方が良いのです。ただし、その場合でも以前お話した「先取り貯蓄(まず最初に貯蓄分は確保する)」は必ず守ってください。

なお、今はスマートフォンの家計簿アプリなどがありますので、昔のように転記の必要もなくなっています。手軽なアプリを試してみるのも良いでしょう。

家計簿をつけるのは何のため?

次に家計簿をつけている人へお伝えしたいことです。 コツコツ継続して家計簿をつけているということは、本当に立派です。継続する習慣ができているということは家計管理もすぐにステップアップできますよ。

家計簿をつけている人は、つけた後どうしていますか?

意外に多いのが「レシートなどを転記しておしまい」という人。家計簿をつける目的を考えてみましょう。私は子供の頃、参考書を買っただけで勉強した気になってしまったものですが、家計簿はつけたところで終わりにしてしまうと単なる記録に過ぎず、思っているほど家計管理ができていないことも。もちろん記録するだけでも「赤字になっていないな」とか「使途不明金が多くなっていないな」などは意識できると思いますが、習慣がついているなら次はそれを生かすことを考えましょう。

第2回でお伝えしたように、家計簿をつけている人は消費傾向を把握してみましょう。このときには支出の費目まで意識することになります。自分の家計は何の支出が多く、何の支出が少なめなのかなどがわかると支出を削減したいとき、手を付けやすい費目がわかれば効率的に行動できます。

今月はボーナスをもらう人も多いでしょう。まとまったお金が手に入るタイミングで、家計管理が全くできていなかった人は予算管理を、家計簿をつけていた人はそれを生かしてステップアップした家計管理へ挑戦してみましょう。

鈴木暁子

鈴木暁子

ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)。キャリアコンサルタント。FPオフィス Next Yourself代表。
「多様化するライフスタイルに応じたライフプラン・マネープランづくりが重要」という視点で、企業、自治体、大学オープンカレッジなどで年間約50回のセミナー・講演を行うほか、新聞、雑誌・WEBなどで精力的に情報発信をしている。
「お金はいい使い方をしてこそ活きる」をモットーに、これまでに数百件の家計診断のほか、 個人コンサルティングも行っている。資産運用、ライフプランニングを得意とし、特に共働き夫婦のライフプランニング、リタイアメントプランニング、高齢期のお金と住まい、相続設計に力を入れている。著書に『100歳まで安心して暮らす生活設計』(実業之日本社)。