今回、Fさんはおつりのもらいすぎにその場で気づかなかったので犯罪になりませんが、もらったときに気づいているのに返還しなければ詐欺罪が成立します。

過去に、実際にコンビニでおつりをもらいすぎて返さなかったケースで、男性客が逮捕された事例もあるので要注意です。そのケースでは、男性はコンビニで約13,000円の支払いをするために15,000円を出しましたが、コンビニ店員が60,000円を預かったと勘違いしてしまい、男性に約46,000円のおつりを渡してしまったのです。男性は何も言わずに46,000円を受け取り、自分のものにしてしまいました。

この事案では「男性がコンビニでおつりを受け取った時点でもらいすぎに気づいていたことは明らか」と認定され、男性が詐欺罪に問われました。

故意を否認したら通用する?

逮捕された男性は「酒に酔って覚えていない」と弁明していたようですが、もしもこの男性が「おつりをもらいすぎた時点ではもらいすぎに気づいていなかった」と主張したら詐欺罪に問われずにすむのでしょうか?

おそらくそれは難しいと考えられます。なぜなら男性が出したのは15,000円なので、おつりとして一万円札を4枚も渡されるのは明らかに不自然だからです。日本の通貨を見慣れていない外国人ならまだしも、日本で長年生活している日本人が「気づかなかった」と言っても通用しないでしょう。

よって、この男性のケースでは、たとえ「気づいていなかった」と故意を否認しても詐欺罪が成立する可能性が極めて高いと言えます。

Fさんに、もらいすぎたおつりの返還義務はある

一方本件のFさんの場合には「気づいていなかった」という弁解が通用する可能性が高いと考えられます。

なぜならFさんが受け取ったおつりは339円で、本来受け取るべき239円よりも100円硬貨が1枚多いだけだからです。それだけの違いなら、通常の注意を払っていても気づかないのが自然と言えます。もらいすぎに気づかなかったのもやむをえない当然のこととして、故意が認定されず詐欺罪になりません。

Fさんには刑事的な犯罪は成立しないため、お金をコンビニへ返しに行かなくても逮捕される可能性はありません。しかし民事的にはお金を返還すべき義務があります。Fさんは何の理由もなく100円をもらいすぎているので、「不当利得」が成立するからです。もしもコンビニ側がおつりの払いすぎに気づいて不当利得返還請求をすれば、Fさんは当然100円を返さねばなりません。

実際にはコンビニ側が調査してFさんに返還を求めてくる可能性は低いと考えられますが、法律的には返還義務があります。

また、今回は100円なので見逃されるとしても、これが1,000円、10,000円となってくると店側も黙っていないでしょう。金額が大きくなってお札でおつりを受け取りすぎた場合には、「気づかなかったはずがない」と言われて上記の男性客のケースのように詐欺罪を疑われる可能性も高くなるので要注意です。

店側が免除したら返さなくていい

店側にもらいすぎたおつりの返還を申し出たとき、店側が「少額なので持ってこなくてもいいです」などといって免除してくれれば返還の必要はなくなります。特に遠方に居住していて持参が難しく振込送金するケースなどでは、おつりが少額だと振込手数料を差し引いてマイナスになる可能性もありますので、お店側も返還を免除するケースが多いと思います。

まとめ

最近ではコンビニやスーパーで現金を使う機会が減ったので「おつりのもらいすぎ」が発生するケースは少なくなっています。ただFさんの事例や逮捕された男性のケースのように、あなたにもおつりをもらいすぎる機会があるかもしれません。その場で気づいたら必ず申し出て返還しましょう。返還しないと「詐欺罪」で逮捕される可能性があります。

後で気づいた場合にも法律的には返還義務がありますし、レジでのお金の計算が合わず、お店側は困っていると思いますので、できるだけ店側に連絡をして返すようにしましょう。今後の参考にしてみてくださいね。

※記事内で紹介しているストーリーはフィクションです

※写真と本文は関係ありません