「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 妻が子どもにガミガミ……それ、旦那に対してですよ?(写真:マイナビニュース)

    妻が子どもにガミガミ……それ、旦那に対してですよ?

昔に比べると、お父さんからの子育てのご相談も増えてきました。夫婦で一緒に悩んで、一緒に家族になっていくのだなあと、とてもうれしく受け止めています。

「子どもが私の言うことを全然聞かなくて、どうしたらいいのでしょうか」「自分からできる子にするにはどうしたらいいのでしょうか」など、子育ての悩みにお父さん、お母さんの違いはありません。

ところが、よくよくお話を聞くと、お父さんならではの悩みが共通してありました。それは、夫婦間でのコミュニケーションについてです。今回は、「妻が子どもにガミガミ叱っている時はどのようにふるまうべきでしょうか」というお父さんからお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

お母さんのイライラの原因は……?

「家に帰ると妻が子どもにガミガミ怒っています。そんなに怒らなくても……と思うのですが、私はこういう時どうすべきでしょうか」。最近どこに行っても聞かれるお父さんから多いご相談です。

そこで、実際にお父さんたちはどうしているのか聞いてみると、大きく3パターンにわかれました。

1.「そんなに怒らなくても、子どもはわかってると思うよ」と優しく諭してみた。
2.何を言っても無駄なので、何も言わない。そっと自室にこもって、嵐が通り過ぎるまで気配を消している。
3.その場面に遭遇しないように、(子どもの就寝後など)帰宅を遅らせる。

いかがでしょうか。残念ながら、どれもあまり解決には至らないと言えるでしょう。

なぜ解決しないのか。それは"奥様が怒っている原因は、子どもではないから"です。きっかけは子どもだったかもしれませんが、実は、何もしない夫にイライラしている場合がほとんどなのです。

1を選んだお父さんは、父としてどうすべきかをお母さんに教えているつもりだと思います。まちがっているわけではありません。しかし、言われたお母さんは「何もしてないあなたが偉そうに言わないで!」と感じている場合が多く、火に油を注いでしまっているのです。

2を選んだお父さんが、実はとても多かったのですが、お母さんはどう感じているでしょうか。多くのお母さんは、お父さんが帰宅するとき、夕食の準備をしなければいけない、けど、子どもの宿題やおけいこの練習もやらせなければいけないと、バタバタしています。そうすると「私はやることがいっぱいで大変だ」と思い、お父さんが部屋にこもっていても、イライラはおさまることなく余計に続いてしまうでしょう。

3は、一見お父さんはその場におらず、お母さんと子どものペースで生活が回るので平穏に感じます。しかし、このまま進むと、お父さんの居場所がなくなってしまうかもしれません。なぜなら、お母さんの夫に対する根本的な問題は先送りされたままで、何も解決されていないからです。残念なことにこのままの生活を続けた奥様が、15年計画で離婚を内密にすすめているという話をたくさん耳にします(泣)。

実際に、お母さんたちの本音をうかがうと、「お父さんが仕事で大変なことはわかるけど、私も家事と子育てと仕事でヘトヘトなのを分かってほしい」と考えているようです。

つまり、「ガミガミ怒らないほうがいい」と正論を言われるのではなく、「よし、大変な君の代わりに、夕食の準備をするね」と言われた方が、素直に受け止められるのです。

夫婦で共感することが大切

夕食を作るのは難しいというお父さんは「代わりに、洗い物するね。お風呂洗うね」など、できる家事を手伝うようにしましょう。お父さんが手を出すことでお母さんの家事の負担が倍にならないように、ある程度は家事のスキルを磨く必要もありますが、お父さんが一緒に生活(家事・子育て)をする意欲が何よりも大切なのです。

ご相談者の中に、料理をしたことのないお父さんが「このままではいけない」と思い、里芋のお味噌汁を作ったとき、「里芋って本当に手がかゆくなるんだね、君はいつもこんなに大変な思いをして作ってくれていたんだね」と言ってくれて気持ちが軽くなったという方がいました。お母さんは、自分の大変さをわかってくれたことがとてもうれしかったようです。

実際に家事をすることは大切ですが、それ以上にお母さんは、大変さに共感してほしい、そして一緒に生活をして家族を作り上げてほしいと思っているのです。

一方で、実はお母さん自身もイライラの原因がわかっていないという側面もあります。子どもがお茶をこぼしたり、服をぬぎっぱなしにしたりすると、いつもなら笑顔で対応できるのに、お父さんが帰ってきたタイミングだと、なぜか怒ってしまうなど……。

子どもと同様、お父さんも言われて初めて気づくことが多いのです。だからこそお母さんは、子どもにイライラを向けるのではなく、お父さんに対して、「夕食の準備はまだできてないから、お米洗ってくれたら助かるんだけど」など自分のお願いを言葉にして伝えることからスタートしましょう。

このように、自分の思いを感情的にならず伝え合うお父さんとお母さんの姿を見ることによって、子どもはコミュニケーション力を身につけ育っていくのです。