「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 子どもを"認める"ことが自己肯定感を育てる?(写真:マイナビニュース)

    子どもを"認める"ことが自己肯定感を育てる?

子どもの自己肯定感を育てるためには、子どもを「認めること」が大切です。ほめるのでもなく叱るのでもなく、認めることが大切なのです。しかし、これはとても難しく「ほめなければと思っているのに、叱ってばかりで落ち込みます」というお母さんお父さんはとても多いです。

では「認める」とはどういうことなのでしょうか。今回は、「子どもの自己肯定感を育てるために、どう認めてあげればいいの?」というお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

褒めず叱らず「認めること」が大切

たくさん褒めて育てたのに、自分の考えや主張がなくて自信を持てない子に育ったという例は少なくありません。一方で、叱られて育ったけど、愛を感じているという子もいます。両者の何が違ったのか、それは親が子どもに対して「認める言葉」をかけられていたかどうかでしょう。

先日、自己肯定感を育てることの大切さを学ぶ講座に参加したお母さんから、こんな相談がありました。「娘にかわいいシールを買ってあげたら、クラスメイトに自分のシールと交換しようと言われて、かわいくないシールに全部替えられて帰ってきました。その時言い返せない娘が不甲斐なく感じてしまったのですが、親としてなんとアドバイスしてあげれば良かったのでしょうか」

たしかに歯がゆい気持ちになるのはとてもよくわかります。あなたなら何て声をかけるでしょうか。講座の他の参加者にも考えていただいたのですが、回答は大きく以下の4つに分かれました。

1「イヤってはっきり言った方が良かったんじゃないかな」
2「もうかわいいシールを学校に持っていくのはやめようね」
3「そんなシールを買ってあげたママがバカだったわ。悲しい思いをさせて、ごめんなさいね」
4「そんなかわいくないシールに替えてあげられるなんて、あなたは優しい子ね」

その時の講座では、"お子さんの自己肯定感を育むために、認める言葉かけをしましょう"と話をしたので、皆さんは叱らないように考えてくださったようです。では、これらの答えはどう子どもへ影響するのか、一つひとつ見ていきましょう。

指示や禁止では子どもの意見は育たない

1はどうすべきかを優しく教えているように見えます。しかし「○○したほうがよかった」「△△しなさい」など、親が勝手に状況を想像して指示をしてしまうと、お子さん自身が本当はどうしたいのかを考える力を失わせてしまう危険性があります。

2の「○○をやめようね」と禁止する言葉も同じです。お子さんが自分でどうしたいのか、何が嫌で何がいいのかを考える力が育たなくなる可能性があります。親が考えて決めることが子どもの考える力を阻んでしまうのです。

では、3はどうでしょうか。ママが子どもを傷つけないために「ごめんね」と声をかける光景はよく見かけるのですが、ママに謝られることで、子どもは自分の価値基準より、ママを悲しませないことや喜ばせることに判断基準を作ってしまう可能性があります。さらに、謝られることで、子どもはとても悪い子なんじゃないかと自分を責める可能性もあります。

最後に4ですが、これは一見子どもを認めているように思えます。しかし、子どもは自分が優しい子であるために、これからもいらないシールに替えてあげなければならないと思い、自分の行動を狭めてしまう危険性があるのです。

こう見ていくと、1~4はどれもママの考えを子どもに押し付けている、という点では同じではないでしょうか。

親の価値観を押し付けず、子どもが自分で考えることが大切

「何かアドバイスして教えなきゃ」とそんなに難しく考えなくても「へえ、シール交換したんだね」と事実を言うだけでいいと思います。つまり、親がそれは良いとか悪いとかジャッジしないことが大切で、これがそのままを認める言葉かけなのです。

もし、子どもに考えるきっかけを与えたいと思うのであれば、認める言葉をかけた後に、「ママは使わないな」とか「ママはこのシール好きだな」などママの考えを加えるだけでいいのではないでしょうか。子どもに不甲斐ない自分を認識させる必要はありません。親から認める言葉をかけ、それを聞いた子どもが自分はどうしたいかなと自身の考えを育んでいくことが大切なのです。

そして、いつか子どもが「私こんなシールいらない、もう交換したくない!」とお友達に言えるようになったら、もう十分に自分の思いや判断力が育っている証拠です。その時は「そうだね、交換しなくていいと思うよ」とその意見をそのまま認める言葉をかけましょう。

また、「交換したくないから、次はなんて言い返せばいいかな?」と聞かれて初めて、「よし! 相手に嫌な印象を与えない返事の仕方を一緒に考えよう!」で、いいのではないでしょうか。

ほめて親の思い通りに子どもを誘導したり、叱って子どもを強制したりすることは、親だけが頭をフル稼働して、自分の価値観を子どもに教え込もうとすることになり、子どもが考える機会を奪うことになってしまいます。

親がすべきことは、子どもが自分で考えて決めて行動できるように導くことです。これが自己肯定感を育てる目的なのです。

執筆者プロフィール :天野 ひかり

・親子コミュニケーションアドバイザー
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師などを実施。
自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰する。

■HP: h I k a r i a m a n o
■著書
・Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
・最新刊
「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。