「毎日のように怒ってしまう」「言うことを聞いてくれなくて困る」「夫(妻)と育児方針がかみ合わない」……などなど、育児に悩みは尽きません。特に、毎日忙しく過ごしている共働き夫婦なら尚更でしょう。

ここでは、育児中のマイナビニュース会員に"育児の悩み"についてアンケートを実施。寄せられたお悩みに対して"どのようにすべきか"を、NHKの育児番組でキャスターを務めた経験を持ち、現在は育児のセミナー講師や書籍執筆なども行っている天野ひかりさんに、アドバイスしてもらいます。

  • 「○○しないと、鬼が来るよ」子どもを脅す言葉は言っちゃダメ?

子どもに何かを教えるとき、叱ってしつけるのではなく、なるべく穏やかに話をして、できるようになってほしいと多くのお母さんお父さんが願っていると思います。しかし、子どもが今までできたことが急にできなくなったり、やりたくないと言い出したり時に、親としてはどう対応していいのか悩みますよね。

今回は「子どもに何かやらせる時に、脅すような言葉をかけてはいけないのでしょうか」というお悩みに、親子コミュニケーションアドバイザーがお答えします。

「○○しないと、鬼が来るよ」の効き目とは?

先日、あるお母さんからこんな相談がありました。「ずっと歯磨きをしていた娘が、急にやりたくないと言い出して、やらせてくれません。何を言ってもダメだったので、つい『歯磨きしないと、鬼が来るよ』と言ってしまいました。娘は怖がって歯磨きしてくれましたが、脅すみたいなことを言ってしまったので……」

一般的に「子どもを脅して、しつけるのはやめましょう」と言われているので、お母さんも気にされていたようです。

そこで、まじめで一生懸命なお母さんに、私はこう返しました。「大丈夫ですよ。脅してしまってよくなかったと悩む必要もないと思います。お母さんが思っているより子どもはずっと賢いので、あっという間にまた歯磨きできるようになるはずです」

もちろん、日常的に脅しながらしつけをするのはよくありませんが、日ごろから子どもに歯磨きの必要性をしっかりお話できているのであれば、そんなに気にしなくても大丈夫ということです。

他のことなら「そのうちまた出来るようになるわ」とゆったり構えられることも、今回のような「ムシ歯になってしまうのでは」と思うと、そうはいかず悩むお母さんお父さんも多いようです。

私が、「今は虫歯予防のキシリトールタブレットもあるので、上手に利用しながら、親子でストレスなく予防できるといいですね」とお話すると、ほっとされたようで、前向きに受け止めておられました。

「目的」と「手段」を混同しないように

親は子育てに一生懸命になると、本来の目的を失いがちです。今回のケースであれば、「歯磨きさせること」が目的になってしまっていましたが、本来の目的は「虫歯にならない健康な歯を作ること」です。歯磨きはそのための手段のひとつですよね。

もちろん、虫歯にしたくない一心で、とりあえず今だけでもしてくれればいいから、と思う場合もあっていいと思います。では、なぜ「○○しないと、鬼が来るよ」といったような脅す言葉はよくないのでしょうか。

それは、歯磨きする理由が"鬼が来たら怖いから"になってしまうともったいないからです。子どもはきっとあっという間に、鬼が来ないことを理解するようになるでしょう。そうすると、また歯磨きしなくなってしまった……なんてことになり残念ですよね。

それよりも、子どもに「健康な歯になりたいから、歯磨きをしよう」と思う気持ちを育めたら、子どもはずっと自ら行おうと思うようになるでしょう。もう親が何度も言ったりやらせたりする必要がなくなり楽ですね。

実は、小さいころ子どもに歯磨きを一生懸命にさせたお母さんから「息子は大人になって、全く歯磨きをせず、虫歯になってしまいました。私のあの努力は何だったのでしょうか……」と落胆して、相談を受けることがしばしばあります。

きっと、そういったお母さんたちは、歯磨きをさせることが目的になってしまって、子どもが"歯磨きしたい""健康な歯になりたい"と思う気持ちを育むことが後回しになってしまったからではないでしょうか。ではどのような言葉かけが、子どもに健康な歯になりたいと思わせるのでしょうか。

やる気を育む言葉とは

「いつか王子様とキスするときに、虫歯のないきれいな歯がいいよね!」と、ご相談のあったお母さんに提案してみました。

眠れる森の美女のオーロラ姫が、王子様のキスで目覚めるシーンを見た後で、こんな風にお母さんに言われたおませな女の子は、あっという間に歯磨きを自ら進んでするようになったそうです。

お子さんの性格とタイミングを見極め、お母さんならではのオーダーメイドの言葉で、お子さんのやる気を育てていけるといいなと思います。

大切なのは、お子さんと向き合うときに「これをさせる目的は何か」を忘れないこと。ときには、対症療法があってもいいですが、子どもが自分でやりたいと思える心を育むような言葉かけをしましょう。

親は、常に子どものことを思い、「子どもに"これ"をさせる目的は何だろう」と考える習慣を作れば、ぶれずに子育てできるでしょう。子どもは、親からご褒美や罰を与えられてやらされるよりも、自分で決めて実行する方が幸福度が高いという研究結果もあります。

何かを実践することが、子どもにとって、幸せを感じるための目的や、なりたい自分になるための目標、と思える言葉かけができるといいですね。やる気と向上心を持てる子どもに育てるために、日々の言葉こそ、子どもを成長させるのです。

執筆者プロフィール :天野 ひかり

・親子コミュニケーションアドバイザー
NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。
NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、全国の親子に寄り添いながら、講演会や講座、シンポジウム、企業セミナー講師などを実施。
自身が立ち上げたNPO法人でも、子どもの自己肯定感を育てる親子のコミュニケーションを学ぶ教室「ことばでおやこみゅ教室」を主宰する。

■HP: h I k a r i a m a n o
■著書
・Amazon子育てランキング1位のロングセラー
「子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ」サンクチュアリ出版
・最新刊
「賢い子を育てる夫婦の会話」あさ出版 ほか。