私は今、32歳で起業して5年目です。若いのか若くないのかは読者の皆さまに委ねたいですが、今まで多くの失敗と、それを乗り越えてきた経験がありますので、ぜひ同じ失敗をしないように赤裸々に共有できればと思います(笑)

ビジネスアイディアはスピードが命

同じアイディアを数倍のスピードでやられてしまうというのはよくあります。大学時代に起業したとき、まだFacebookが全然日本で知られてなかった頃に「学校に特化したSNS」を作りました。休講情報や過去問情報などをシェアできたり、授業の大変さなどが載っていたりするようなSNSです。

このときはまだ、「自分たちだけで作りたい」という欲求が強く、自己資金と自分たちのスキルのみで立ち上げようとしていました。結果的にはリリースから3カ月後、まったく同じようなサービスを3倍ぐらいのクオリティで出されてしまい、学校への浸透度も一瞬で追い抜かれて負けてしまいました。

スピードで負けてしまうというのは、本当によく起こります。起業する前に、「どのくらいの規模まで大きくなれば、他の追従を許さないのか。大手が大金をつぎ込んでも、開発期間は最短でもこのくらいかかるから、その期間より前には他の追従を許さない規模までもっていかないといけない」という発想で、リリースの時期などの計画を立てるといいと思います。

起業は仲間が命

友人と起業してうまくいっている例はどのくらいあるのでしょうか? どんな先輩社長に聞いても「仲間割れは必ず起こる」と口を揃えます。

私たちもそうでした。創業初期のメンバーの1人がお金をわんさか使ってしまうタイプで、ビジネスに支障をきたしていた結果、倒産寸前、辞めてもらわざるをえないという状況まで追い込まれました(今は会社も軌道に乗っていますし、辞めたメンバーも今は新しい道でがんばっているので、人にも話せますが、当時は必死でした)。

昔からの友人でもあるメンバーに辞めてもらうというのは、相当に苦しい経験で眠れない日も続きました。しかし、そのおかげもあって会社を成功させると腹をくくりました。今では、そのつらい時期を乗り越えたメンバーはかけがえのない仲間です。戦場で背中を預けられます。どんなに言い争いをしたとしても、その思いは変わりません。

お金周りや、経理というのは本当に大切です。先輩社長が、「経理ルールは不正を起こさないために、しっかりと決めるんだ」とおっしゃっていました。人を疑うから経理ルールを厳しくするのではなく、人は心が弱く環境に追い込まれるとつい魔がさすということが十分にありえるから、不正をさせないためにも社内体制は整えなさいということです。

会社を守るためにも、仲間を守るためにも、そして一人ひとりが楽しく働けるようになるためにも心に留めておかなければいけない言葉です。

人生は約束が命

お恥ずかしい話、今までの自分は本当に未熟でいろんな人に迷惑をかけたと思っています。新入社員のころもそうです。「やれます! できます!」と大きなことを言いながら、まったくできずに先輩や上司に大迷惑をかけていたと思います。

起業当時も、いろんな人に迷惑をかけました。同時に3つのプロジェクトをやり始めたのですが、今の英会話教室の仕事が大忙しになってしまい、他の2つのプロジェクトは道半ばで辞退せざるを得ませんでした。言ってしまえば、約束を破った形になります。

私は小学校からアイスホッケーをやっているのですが、そのOBチームを作ったときも、「作ろう作ろう!」と言ったものの、自分では軌道に乗せることはできませんでした(その後、仲間がしっかりと軌道に乗せてくれたことを本当に感謝しています)。

できない約束をしないというのが、上記のように自分のやってしまったことの大反省ですが、さらに一つ上の教訓として気をつけているのは「自分の欲のために約束を破らない」ということです。

経理が不正を出さないためのルールと同じで、これは経営者として守らないといけないルールだと思っています。大半の経営者の方は素晴らしい方々なのですが、ときどき自分の欲のために約束をねじ曲げてしまって、大失敗している方を見かけます。そうはならないための自分への戒めです。

もちろん、守れない約束もあります。「どちらかの約束を守ると、もう片方の約束を必然的に破ってしまうケース」。こんなときの判断基準として、絶対に自分の欲を優先しないということです。自分の夢や欲は、必ずどこかの段階で達成することができます。目の前の浅はかなチャンスに飛びつく必要はないと思っています。

「目標を掲げたり、こんな世界にしたいというビジョンを語ったりしたケース」。これは約束を破るとは違うと思っています。織田信長も、言ったことは、期限を過ぎてしまったとしても実現してきたそうです。私も一度決めた目標や夢、ビジョンはどんな迂回路を辿ろうと達成したいと思います。

当たり前の大切さ

スピードが命とか、仲間が命とか、約束が命とか、当たり前のことばかりかもしれませんが、私はそれがなかなかできていなかったり、本当の意味で理解できてなかったりしたので、お話をさせていただきました。当たり前のことを当たり前のようにするって、本当に難しいですよね。

執筆者プロフィール: 小茂鳥 雅史(こもとり まさふみ)

株式会社スパルタ英会話 代表取締役

慶應義塾大学院卒業後、外資系証券会社モルガン・スタンレーMUFG証券に入社。退職後、NPO法人JAVO(ボランティア証明書発行機関)を発足。2年後、《語学で「夢はかなう」の実現》を理念とし、3カ月短期集中型の英会話教室を創業。わずか3年で4本のテレビ出演、年商を3億円企業へ。会社規模を拡大させ、世界をひとつのビックファミリーにという想いのもと、語学、IT、金融、人材などの6つの会社を束ねる株式会社We&を設立し、代表取締役に就任。

■株式会社スパルタ英会話