連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
子どもが3人おり、今後の教育資金が心配です。また自分たち夫婦の老後の生活も不安に思うこの頃。教育費と老後の資金作りはどうすればいいでしょうか? 今から準備しておいた方がよいことなどがあれば、アドバイスをお願いします。

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • あくまで概算ですが、長男の大学入学から三男の大学入学まで、毎年の収支は赤字になり、貯蓄を取り崩す生活になってしまいます。赤字の解消の仕方は、収入を増やすか、節約をするか、貯蓄を運用するかしかありません。現在絵里さんは100万円を上限に働いていると思いますが、絵里さんが収入を増やす場合、社会保険に加入することになります。税金が上がってしまいますが、ご自身の年金も増えますので老後の資金作りにもなります。

  • 漠然とした状態では不安は解消されません。家計簿を最低でも数カ月はつけ、その数字をもとにキャッシュフロー表を作ってみましょう。実数で把握することで不安はかなり解消されるはずです。キャッシュフロー表とは、今から平均寿命(もしくは100歳?)まで生きたとして、収入と支出、貯蓄がどのように推移していくかを見ていく表です。

(※詳細は以下をご覧ください)


「贅沢をしているつもりはない」といわれる通り、堅実に生活されています。平均が正しいわけではありませんが、松本さんと同じくらいの収入家庭の平均を見ると、収入40万円~45万円の家庭の食費は61,688円なので、松本家の食費はぴったり一致しています。(総務省の家計調査(平成24年)より)これからますます食べ盛りになる息子さんたち相手に、食費を増やさないよう頑張ってほしいなと思います。

人生の三大出費の重なり

人生の中でお金がかかる三大出費は「教育費」「住宅ローン」「老後資金」と言われます。松本さんの場合それが重なってしまいます。

いただいた情報を基にキャッシュフローのシミュレーションをしてみました。ご主人は65歳まで、絵里さんも64歳まで働くこととし、教育費は、「子でもの学習費調査(平成22年度)」を参照に習い事などの費用も含め、教育費は高校までは公立、大学は4年生私立(文系)に進学すると仮定しました。

教育費は本人の希望や家庭での考え方(私立に行くか、浪人は何年まで許容できるかなど)によって大きく差が出てくる出費です。価値観を共有するためにも、一度ご夫婦で話し合ってみましょう。

あくまで概算ですが、長男の大学入学から三男の大学入学まで、毎年の収支は赤字になり、貯蓄を取り崩す生活になってしまいます。

赤字の解消の仕方は、収入を増やすか、節約をするか、貯蓄を運用するかしかありません。

松本さんの支出を見ると、とても堅実に生活をされているので、これ以上の節約はストレスをためかねません。普通預金と定期預金で運用されていることを考えれば、いきなり貯蓄の一部を投資にというのも難しいでしょうから、収入を増やす対策でシミュレーションしてみました。

長男の大学入学から6年間、今の収入より60万円多く働ければ、赤字を回避することができます。

現在絵里さんは100万円を上限に働いていると思いますが、絵里さんが収入を増やす場合、社会保険に加入することになります。税金が上がってしまいますが、ご自身の年金も増えますので老後の資金作りにもなります。

大学進学までは親が出してあげたいとのことでしたが、息子さんたちが奨学金を受けられれば赤字は回避されます(日本学生支援機構の貸与型で年64万円で試算)。貸与型はローンと同じですので、返済義務のない給付型を狙いたいところです。もちろん誰でも受けられるわけではなく、金額も学校によりますが、受験校を選ぶ際に奨学金も一緒にチェックしましょう。奨学金で賄える分は、老後資金として備えることができます。

教育費準備

下のお子さんはまだ学資保険に加入されていないようです。学資保険は、契約者が万一の時は、保険料は払わず、保険金は当初の計画通り受け取れるというのがメリットですから、検討する価値はあると思います。ただ、生命保険の標準利率が2013年4月より、12年ぶりに1.5%から1.0%に引き下げられたため、多くの保険会社は貯蓄性の高い貯蓄型保険の保険料の値上げをしましたので、払い込み保険料より多く戻る学資保険は数が絞られてくると思いますが、学資保険ではなくても、養老保険などを探せば払い込み保険料より多く戻ってくるタイプの保険もありますので、学資保険だけにとらわれず、検討する余地はあります。

死亡保障についても、よく考えられて加入されているようです。個人的には、もう少し余裕があってもよいのかなと思いますが、今のまま、堅実な生活を続けられれば、最低限必要な保障はつけられていると思います。

住宅ローン変動金利の注意点

住宅ローンは変動金利を選択されているとのこと。現在金利はとても安く、多くの人が利用していますが、金利は上がりはじめると速いです。金利が上がってしまったら、金利の上昇分を抑える分だけ繰り上げ返済をし、固定金利に変更するかどうかを検討するなど、常に注意が必要です。

繰り上げ返済にも充てられるように、定期預金は分割しておく、期間は短めのものも利用するなどして、可動性のある貯蓄を用意しておきましょう。

個人年金について

加入してよかったのか迷われているようですが、個人年金保険料以外に貯蓄もできていますし、個人年金保険料控除の適用も受けられているのですから、続けられたらよいのではないでしょうか。

ただ、最近加入されたということは予定利率で1.7%程度でしょう(実際の運用利率とは異なります)。住宅ローンの金利が上がってしまうと、金利の低い個人年金で増やすより、繰り上げ返済をしたほうがよいので、その時点で解約も視野に入れましょう。

キャッシュフロー表を作ってみましょう

漠然とした状態では不安は解消されません。家計簿を最低でも数カ月はつけ、その数字をもとにキャッシュフロー表を作ってみましょう。実数で把握することで不安はかなり解消されるはずです。

キャッシュフロー表とは、今から平均寿命(もしくは100歳?)まで生きたとして、収入と支出、貯蓄がどのように推移していくかを見ていく表です。

ご主人や絵里さんが何歳まで働くか、年金はいくらもらえそうか(年金見込額は日本年金機構の「ねんきんネット」で試算できます)、教育費にどれくらいお金をかけるか、将来を想像しながら作ってみてください。足し算と引き算だけですから、エクセルで自作することも可能です。難しければ、気軽に私たちFPなどに相談するといいでしょう。

作成の際のポイントは「収入は厳しめに、支出は多めに」です。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 内田まどか

「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるためのライフプランニングなど、シミュレーションを活用してアドバイス。個人相談を中心に活動している。