今回から始まる連載コラム『あなたの家計簿見せて! "給料減少時代"の家計診断』では、相談者のプロフィールと実際の家計簿をもとに、5人のFPが順番に、相談者の家計に関する悩みについての解決策をアドバイスします。


【相談内容】
近々1~2年の間でマイホームを購入したいと考えています。また、そろそろ第2子もほしいなと考えているところです。大丈夫でしょうか?

相談者プロフィール

相談者の家計状況


【プロからの回答です】

  • 現在の世帯収入が月50万円ですから、ローンの返済額は月額10万円が一つの目安です。頭金として500万円を用意できれば、ひとまず3,000万円のマイホームの購入が見えてきます。

  • さらに第2子の出産も実現するには、家計の見直しが必須です。食事代、レジャー費、被服費、雑費、おこづかいだけで毎月18万円の支出がありますね。これを3~4万円程度節約してみてはいかがでしょう。

(※詳細は以下をご覧ください)


住宅ローンや頭金以外の出費に注意

まず、住宅の資金計画ですが、一般的に住宅ローンの返済額は収入の2割以下、頭金は物件価格の2割以上が理想と言われています。峰岸様の場合、現在の世帯収入が月50万円ですから、ローンの返済額は月額10万円が一つの目安です。また、仮にローン金利2.5%(全期間固定金利・元利均等返済)、退職時に完済するとして返済期間30年間で試算すると、返済額が月10万円なら2,500万円借りられることになります。頭金として500万円を用意できれば、ひとまず3,000万円のマイホームの購入が見えてきます。

しかし、ここで注意したいのは、ローンや頭金以外の最初にかかる諸費用やランニングコストです。諸費用とは、契約の印紙税や登記費用、ローンに関する保証料や保険料、マンションなら修繕積立一時金などを指します。また引越し代や場合によってはインテリアや家電の購入費用も見込んでおく必要があるでしょう。さらに、中古物件の場合は、仲介手数料として物件価格の3%と6万円(+消費税)がかかるのが一般的です。これらの諸費用は、3,000万円の新築マンションなら150~200万円、中古の場合はプラス100万円を頭金とは別に見込んでおきましょう。

また、住宅を購入すると固定資産税など税金が毎年かかってきます。3,000万円のマンションの場合、土地や建物の評価額にもよりますが7~10万円程度。さらに、マンションの場合は管理費や修繕積立費が住み続ける限りかかってきますから、ランニングコストとして、年間30~35万円程度は見込んでおく必要があるでしょう。

ライフイベントや世の中の変化に注目

お二人の収入が、退職まで現状並みに維持されるなら、現在の家計で3,000万円の物件は比較的現実的なプランといえます。ただし、これから二人目を出産するとなると、葉子さんは休職や時短勤務などで収入が減ってしまうかも知れません。また、男性の収入も30~40代までは上昇したとしても、50歳を過ぎるとそれまでの2~5割程度減少することも珍しくありません。

一方、支出面では、お子さんが学校に通うようになれば今より教育費が増えますし、さらに二人分を見込んでおく必要があります。また、今後、消費税や社会保険料のアップなどが予定されていますから、たとえ額面収入が今と変わらなくても手取り収入は減り、支出が増えることが予想されます。このようなライフイベントや世の中の変化も見据えて、それでも長い期間ローンを払い続けられるか? という観点でもう一度、物件価格やローンをチェックしましょう。峰岸家の場合、たとえば葉子さんが仕事を辞めて収入がなくなることや、高仁さんの収入が50代半ば以降下がることを見込むと、上記のプランでは一気に将来の収支は悪化。そして今の生活費のペースを続けていくと、50代で貯蓄は尽きてしまいそうです。

家計の見直しと資金計画

では、どうしたらいいのでしょうか。住宅購入と第2子の出産を実現し、さらに"毎年、家族で海外旅行に行きたい"という希望をできるだけ実現するには、家計の見直しが必須といえるでしょう。家計簿を拝見すると、食事代、レジャー費、被服費、雑費、おこづかいだけで毎月18万円の支出がありますね。これを3~4万円程度節約してみてはいかがでしょう。ご希望のライフイベントを実現するためには、支出の中で優先順位をつけて、満足度や優先の低いものから見直して、節約するのがポイントです。

住宅購入までに節約できた分で貯蓄を増やし、頭金の原資にします。仮に、頭金を500万円から700万円に増やせば、ローンの借入額は2,300万円に減らすことが可能です。そうすれは、同じローンの条件でも返済額を年間約10万円減らすことができます。そして、住宅購入後も節約を継続できれば、たとえ将来葉子さんの収入が100万円程度になったり、高仁さんの収入が50代半ば以降2~4割減少したりしても、ギリギリ赤字に転落せずに済みそうです。ただし、葉子さんが仕事を辞め、当面の収入がゼロになることまで考慮するなら、物件価格をもう少し下げ、ローン返済額も高仁さんの収入の2割、つまり7万円以下に抑えないと厳しくなるでしょう。

このように具体的な住宅の資金計画を立ててから、物件を探すことをおすすめします。先に見てしまうと、気に入った物件がどうしても欲しくなり、無理な返済プランになりがちだからです。目先のことだけでなく、将来を見据えたマネープランを立てることによって、希望のライフプランの実現が近づいてきます。

<著者プロフィール>

(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャルプランナー 田辺南香

(株)プラチナ・コンシェルジュ取締役。大学卒業後、大手情報サービス会社に勤務。社内のITコンサルタントからFPへ転身。心豊かな生活を実現するお金のコンシェルジュとして、家計管理、保険、ライフプランなどに関するアドバイス、執筆、セミナー講師などを中心に活動中。