寝苦しい夜が続く今日この頃。真夏の暑さを吹き飛ばすべく、3人のお笑い芸人に奇妙な体験について語っていただきました。涼しさとともにほかのなにかがやってこないよう、ご注意ください……

最終回となる今回の語り手は、お笑いコンビ「井下好井(いのしたよしい)」の好井まさお。相方に取り憑いた生き霊はまさかの……

  • 井下好井・好井まさお

    阪神大震災をきっかけにたびたび心霊体験をするという「井下好井」の好井まさおさん

『生き霊が憑いていたのは……』

数年前の話ですが、喫茶店で相方とネタ合わせをしてるとき、近くの席にキレイな女の人が座っていて、僕はつい、チラチラその人のほうを見ていました。

そして別の日、違う喫茶店でネタ合わせをしていると、またその女の人がいることに気が付きました。

はじめは、場所も近いし偶然かなと思っていたのですが、また別の日も別の喫茶店で、いつもその人がいるんです。

それが1カ月の間に何回か続き、「これはほかの人には見えてないやつや……」と思い始めました。

僕、生き霊か死んでいる霊かは見分けがつくんです。その女の人は生き霊でした。

思い返すと相方と一緒にいるときに必ず見るので、「あ、コイツに憑いてるんや……」と僕は確信しました。

どうすればいいか分からず、霊に詳しい知り合いに電話してみると、まだ何も言っていないのに「生き霊のことでしょ」と言うんです。

そして、「生き霊は危害を加えることがあるから、気を付けたほうがいいよ」と。

相方に知らせないと、と思ったんですが、二人きりのときに言うのもなんだか怖いので、ある日ほかの芸人たちと舞台の稽古をしているときに、「なんか井下(相方)に、生き霊憑いてるねん……」と話してみたんです。

本人は半信半疑だったんですが、ほかの芸人も「井下めっちゃ怪我するんちゃう……」と心配したりしていました。

僕は「あいつ、女の生き霊に憑かれるってことは、すごい女遊びしてるんかな……」と思っていました。

そして、舞台の本番の日――。

クライマックスに、僕ともうひとりの芸人が舞台上に二人きりになる場面があるんですが、僕がセリフを言おうとしたそのとき、舞台にその女の人が立っていたんです。

しかも、相方は近くにいない。

そこで始めて気付きました。

「憑かれてるの、オレやん」と。

しかも、心当たりがある……。

  • 「生き霊の正体」 - 井下好井・好井まさおのコワイ話

    生き霊が憑いていたのは相方ではなかった……

動揺しながらもなんとかその場を乗り切って、舞台が暗転しました。

するとその瞬間、だれかに首根っこをガッとつかまれて後ろに引っ張られたかと思うと、ものすごい勢いで突き飛ばされて舞台から転げ落ちたんです。

結局、左腕を骨折していました。

その心当たりの女性というのが、僕が芸人1年目のときに付き合っていた女性で、その頃本当にお金がなかったので、家賃などいろいろとお金を出してもらってたんです。いわゆる『ヒモ』ですよね。

生き霊を「キレイだな」と思っていたのも、僕のタイプだったから。

すぐにさっきの霊に詳しい知り合いに電話すると、「今すぐその人に謝ったほうがいい」と言われ、久々にその元彼女に電話をして、家に行くことになりました。

でも家に着いて玄関先でこれまでのことを話すと、「楽しく付き合ってたし、私全然怒ってないけど……」ときょとんとしている。

僕もよくわからないまま、「まぁ中に入ったら」と言うので家の中に入ると、

リビングのソファにあの生き霊の女の人が座っていたんです。

しかも僕のことをすごい顔でにらんでいました。

その人は、元彼女の妹でした。

姉妹だから顔が似ていて、僕も元彼女と勘違いしたんですね。

「誤解を解いたほうが……」ということでいろいろと話していると、どうやら当時から「姉をたぶらかした男」として、僕のことをものすごく恨んでいたそうです。それはまぁ仕方ないところもあるんですが……(笑)。

結局その後和解して、今では仲のいい友だちです。

井下好井・好井まさお

お笑い芸人。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。大阪府出身。2007年相方の井下昌城とお笑いコンビ・井下好井を結成。フジテレビ『人志松本のゾッとする話』にも数回出演。Netflixのオリジナルドラマ『火花』など俳優としても活躍している。