「数年以内に引っ越したい」「近い将来に留学をしたい」。そんなふうに考えて、毎月こまめに貯金をしている人もいるでしょう。もちろん、それは素晴らしいことですが、「お金のプロ」からすると、それだけではちょっともったいないのだそう。

  • マイホーム購入などに威力を発揮! 「つみたてNISA」ってなに? /ファイナンシャルプランナー・飯村久美

お金のプロであるファイナンシャルプランナーの飯村久美先生がおすすめするのは、「つみたてNISA」。たしかによく見聞きする言葉ですが、いったいどんなものなのでしょう。

少額の投資で得た利益は非課税になる制度「NISA」

――先生、いきなりですけど、「NISA(ニーサ)」ってなんですか?
飯村先生 本当にいきなりですね(笑)。どうしたんですか?

――よく飲み屋で会う先輩に「おまえもNISAを使うなりしてちゃんと資産をつくっておいたほうがいいぞ」といわれて……。もちろん、その言葉自体は聞いたことはあるんですけどね……。
飯村先生 NISAとは「Nippon Individual Savings Account」の略称で、正式名称を「少額投資非課税制度」といいます。2014年にスタートしました。その名のとおり、少額の手頃な掛け金で投資をして得た利益は非課税になるという制度のことです。

――なるほど。ところで、NISAとは別に「つみたてNISA」というものも見聞きするのですが、それぞれ別のものですか?
飯村先生 つみたてNISAは2018年からはじまった新たな制度です。こちらもその名のとおり、NISAの積み立て版。投資信託を長期にわたって積み立てていくタイプの制度です。

――それぞれ、どんなちがいがあるのでしょうか。
飯村先生 まず大きくちがうのは投資可能額ですね。NISAは年120万円まで、一方のつみたてNISAは年40万円までが投資可能な上限額となっています。それに、NISAの場合は積み立てに特化されているわけではありませんから、たとえばある1社の株にバーンと一括で100万円を投資することもできます。また、非課税期間にもちがいがあって、5年間のNISAに対してつみたてNISAは20年と長いのが特徴です。でも、NISAは2024年から大きな変革がされることが決まっています。

――というと?
飯村先生 いわゆる「2階建て」になるのです。1階部分は年20万円までの積み立て。2階部分は先ほどお伝えしたような株を買うといった1階部分よりリスクが大きな投資です。その2階部分を利用できるのは、1階部分の投資をした人に限られるようになります。

――なるほど……でもよくわかりません! なぜ1階部分の投資をした人に限られるのですか?
飯村先生 (苦笑)。つまり、国がそれだけ長期にわたってコツコツと投資をすることを後押ししているということ。わたし自身も、つみたてNISAのほうをよりおすすめしています。投資では、そのように国が推奨している制度にうまく便乗することが大切です。それだけ、お得なメリットがたくさん用意されていますから。

低リスクの金融商品だけが用意されている「つみたてNISA」

――お得なメリットといわれると、聞かないわけにはいきません。
飯村先生 ですよね。まずは、すでにお伝えしたように、投資をして得た利益は非課税になるという点。通常の投資で得た利益には20.315%の税金が課せられますが、NISAの場合には課税されません。それが最長で20年も続けられるのですから、そのメリットは非常に大きいといえます。

――それだけでも十分そうですが、「たくさん」ということは他にもメリットが?
飯村先生 投資に失敗するリスクが低いことですね。

――投資にはリスクがつきものと聞きますが……。
飯村先生 そのとおりです。でも、つみたてNISAの場合には、厳選された低リスクの金融商品しか買えなくなっているのです。

――買えなくなっている……?
飯村先生 じつは、投資信託は国内だけで6000本ほどの商品あります。そのなかから、手数料が安く、長期で資産形成するのに向いている商品約160本だけを金融庁がピックアップしていて、それ以外の商品には投資できないようになっているのです。そのためつみたてNISAは、低コスト、低リスクで運用しやすいというわけです。

――投資の初心者でも安心感を持てますね。
飯村先生 そうでしょう。加えて、つみたてNISAは、いつでも資金を引き出したり解約したりすることもできますよ。この点が、つみたてNISAとよく比較される「iDeCo(イデコ)」との大きなちがいですね。iDeCoは簡単にいえば自分で年金をつくる制度ですから、60歳にならなければ資金を引き出せないというデメリットがあります。ですから、旅行資金や留学資金、住宅購入の頭金を貯めるといった使い方をするなら、つみたてNISAがおすすめです。つみたてNISAにしろiDeCoにしろ、それぞれの特徴やメリット、デメリットをきちんと学んで、自分のライフスタイルや人生設計に合った投資をぜひはじめてください。

【つみたてNISAのメリット】

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司