社会に出て働きはじめ定期的な収入があるはずなのに、どうにもこうにもお金が貯まらない。銀行残高を見れば溜め息ばかり……。これはもう、若い世代における共通の悩みかもしれません。金融広報中央委員会が平成30年に公表したデータによれば、20代単身者の預貯金を含めた金融資産保有額の中央値は、なんと5万円だそう。なぜお金が貯まらないの? どうすればお金を貯められるの? 

  • お金が貯まらない人必見。「貯められない3タイプ」を知れば、お金は貯まる! /ファイナンシャルプランナー・飯村久美(第1回)

そんなあなたの悩みを解決すべく、「お金のプロ」であるファイナンシャルプランナーの飯村久美先生のオフィスに向かいました。

お金に無頓着でルーズな「ズボラ型」ってどんなタイプ?

――飯村先生が監修された、『一生お金に困らない! 貯め方・増やし方』(ナツメ社)によれば、お金が貯まらない人にはいくつかのタイプがあるそうですね。
飯村先生 はい。でも、若い世代で考えると、タイプのちがい以前に共通した特徴があります。その共通点とは、お金を貯める仕組みづくりができていないということ。でも、それもある程度は仕方ないことのように思います。だって、社会に出て間もないのですから、仕事上でのストレスもたまりやすいでしょうからね。そのストレスを発散するためにお金を使うということが多いのです。加えて若い人は、「お金は使うもの」と思っている節もありますよね。

――というと?
飯村先生 30代や40代になって家庭を持てば、教育資金や老後資金についても真剣に考えるようになるでしょう。でも、ようやく自分で稼げるようになったばかりの20代の人なら、自分のためにお金を使いたくなってあたりまえです。そういう使い方もわたしは悪いことだとは思いません。でも、限度というものがあります。ですから、無理するのではなく、好きなことを楽しみながら、こつこつとお金を貯めていくことを心がけてほしい。そうじゃないと、貯蓄は続きませんからね!

――なるほど。では、あらためて、お金が貯まらない人のタイプと、その改善法について教えてください。
飯村先生 お金が貯まらない人には、「ズボラ型」「浪費型」「支出限定型」の3つのタイプがあります。ズボラ型はとにかくお金に無頓着でルーズ。わかりやすくいえば、時間外手数料も気にせず平気で夜間のコンビニでお金を下ろすような人が該当します。また、ズボラ型の人は部屋が散らかっていることも特徴のひとつです。

――部屋が散らかっている??
飯村先生 そうなんです。部屋が散らかっていて汚い状態だと、必要なものが見つからずすぐに新しいものを買うので、部屋を整理してみると同じものがいくつも見つかるということもあります。

――ああ、なるほど。たとえば、ホチキスがふたつあったり、同じカッターがふたつあったり。これはありがちですよね。
飯村先生 まさにそれ!(笑)。そういう支出は抑えるべきですし、それではお金は貯まりません。

――ズボラ型の人がお金を貯められるようになるには、どうすればいいですか?
飯村先生 まずは、身のまわりを整理すること。そして、買い物は必要なものを見極めて買うこと。そのうえでわたしがおすすめしているのは、クローゼットや冷蔵庫のなかを撮影してから買い物に出かけるという手法です。そうすれば、自分がなにを持っているのかを把握できますから、無駄なものを買ってしまうことを避けることができます。そんな習慣をつけて、財布の紐をしっかり締めましょう。

――ATMの使い方については、意識を変えるしかないでしょうか。
飯村先生 それもまた身のまわりの整理と同じように、お財布のなかを整理する癖がつけば解決可能です。定期的にお財布のなかを整理すれば、所持金がいくらなのかをつねに把握できます。そして、今後お金が必要な場面がわかっているなら、前もって引き出すことが自然にできるようになるはずです。

いまこの瞬間を楽しみたい「浪費型」ってどんなタイプ?

――続いて、「浪費型」について教えてください。
飯村先生 浪費型は、いまこの瞬間の幸せを追い求めて散財してしまうタイプです。外出好きの人が多く、買い物に出かけると次々と欲しいものが目に入り、誘惑に負けて目的以外のものもつい買ってしまうような人ですね。

――浪費型の人はどうすればお金が貯まるようになるでしょうか。
飯村先生 ざっくりでいいので、その日に使ったお金を手帳などに書き出すことをおすすめします。たとえば、朝、お財布に5000円あることを確認したら、夜に500円しか残っていなければ「−4500円」と書き出すのです。浪費型の人には自分がどれだけのお金を使っているかが見えていません。それを「見える化」するわけです。

――しかしいまは、キャッシュレス決済が広まっていて、現金を使うことが減ってきました。
飯村先生 だからこそ、浪費型の人には現金主義になってもらいたいですね。いまは、キャッシュレス決済の推進も含め、世の中が「どんどんお金を使わせようとしている」時代です。浪費型の人はただでさえ自分が使っているお金が見えていないのですから、現金でしっかり確認する癖をつけてほしいですね。でも、あえてクレジットカードやスマホ決済を使うという手もあります。

――それはなぜですか?
飯村先生 きちんと明細が残るからです。浪費型の人の場合、レシートなどで自分が使うお金をきちんと管理する意識を持たないまま現金主義になると、それこそ「使途不明金」ばかりになってしまう可能性もある。でも、クレジットカードやスマホ決済なら、あとから明細を見れば、どこでいくら使ったのかをしっかり確認できますよね。

――わたしはいま40代なので若い人とはお金の使いどころもちがうと思いますが、おそらく浪費型で、ついはしご酒をして何軒もスナックをまわるようなことがよくあります。それこそ、翌朝に財布のなかを見てびっくりするようなことも……。
飯村先生 どこでいくら使ったのかわからないなんて、困りましたね~(笑)。でも、場合によってはそれも無駄な出費ではないかもしれませんよ。出ていくお金には、「生き金」と「死に金」というものがあります。もし、本当にスナックのママさんとの会話を楽しみにしていたり、そこで人脈が広がったりしているようなら、その支出は自分のために生きるお金、つまり「生き金」です。でも、酔っ払ってお酒の味もわからないのにただ惰性ではしご酒をしているなら……それは完全に、「死に金」ですね(笑)。

――後者のケースも多々あります……。反省します……。

好きなことに徹底的にお金をかける「支出限定型」ってどんなタイプ?

――では、気を取り直して……最後の「支出限定型」について教えてください。
飯村先生 支出限定型は、たとえばアイドルの追っかけをしているような、大好きなものに徹底的にお金をかけているタイプですね。もちろん、好きなことにお金を使うのは悪いことではありませんよ。でも、際限なく使っているようなら問題ありです。今後の長い人生を思えば、大きなお金が必要となるライフイベントも待っているのですから。

――支出限定型の人は、どうすればお金を貯められるようになりますか?
飯村先生 ざっくりと月の予算を立てることです。そのためにも、目安が必要でしょう。そこで、首都圏など都市部における新社会人をモデルに理想の支出割合を出してみました。

(注)ひとり暮らしの場合を想定。住居費の適正割合は地域により異なり、それによって貯蓄割合も変わる

飯村先生 趣味に使えるのは、「おこづかい」です。毎月の手取り額が20万円の人なら、1カ月あたり2万8000円まで、年間で33万6000円までということです。注意してほしいのは、趣味の内容によっては限られた時期に支出が偏るケースもあるということです。

――それこそ夏フェスが大好きで、その会場付近の宿をとって全泊参加するような人もいますよね。
飯村先生 そのとおり。そういう人の場合、夏以外の時期には夏に使う分も考えて節約する必要があります。月々の収支を確認することも大切ですが、年間での収支を意識することも大切です。そういう意識を持つことが、ゆくゆくは一生涯で必要なお金について考えることにつながるからです。

――ちなみにわたしは月に10万円はスナックに落としている気がします……。
飯村先生 そんなお客さんがいっぱいいるなら、わたしもママさんになってみようかしら! お店でお金のことなどお客さんの相談に乗って……。うんうん、それもいいかもしれない(笑)。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司