ニュースや情報番組で見聞きすることも多い「iDeCo(イデコ)」。ようやく自分で収入を得るようになって間もない若い世代の人なら、なんとなく「お金や投資に関することなんだろうな」とは思っていても、詳しくは知らない人がほとんどのはずです。

  • もう年金には頼れない? 自分でつくる年金「iDeCo」とは? /ファイナンシャルプランナー・飯村久美

しかし、ファイナンシャルプランナーの飯村久美先生は、「若い人こそなるべく早くiDeCoをはじめるべきです」と語ります。今回は、iDeCoの基本と併せてそう語る理由を教えてもらいました。

個人で老後資金を貯める「自分年金」の制度

――飯村先生、最近よく見聞きする「iDeCo(イデコ)」というのはどういう制度ですか?
飯村先生 iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」。簡単にいえば、個人で老後資金を貯める制度ですね。いわば、「自分年金」というわけです。

――でも、日本人は誰もが年金に加入していますよね?
飯村先生 そうですね。日本国民全員が加入しているのが国民年金です。それから、公務員と会社員は厚生年金にも加入している。勤める企業によってはそれぞれ独自の企業年金を設けているケースもあるでしょう。

――だとしたら、老後はその年金で暮らしていけばいいとも思うのですが……。
飯村先生 ところが、今後はそれだけでは不安が残るのです。公的年金制度が破綻するかも……といった報道をニュースや情報番組で見聞きすることもあるでしょう? 破綻とまでいかなくても、公的年金については将来的にいくらもらえるのかが現時点ではっきりわかりません。そこで老後の安心のために、自分で老後資金を積み立てて将来手にできる年金に上乗せするのがiDeCoという制度なのです。

――自分で老後資金を貯めておくのでは駄目ですか?
飯村先生 もちろん、たくさん稼いでいる人ならそれでもいいかもしれません。でも、一般的な収入の人がただ貯金をするだけではなかなかお金は増えないのです。いまは超低金利の時代です。たとえば金利0.002%の通常の定期預金に毎月3万円ずつ20年間積み立てたとしたら、預けたお金の合計額は720万円になります。それに対して、受け取れる利息は……約1400円です。

――泣けてきますね……(苦笑)。では、iDeCoを利用した場合はどうなるのでしょうか。
飯村先生 それをお伝えするには、iDeCoのメリットを先に説明したほうがいいでしょうね。iDeCoの最大のメリットは、資産形成しながら節税できる点にあります。

iDeCoのメリットとデメリットをしっかり把握する

――税金が減る! それはぐっとくる響きですね。
飯村先生 支払う税金は誰でもなるべく抑えたいですよね(笑)。iDeCoの場合、積み立てをするときの掛け金は全額が所得控除の対象になりますから、所得税、住民税が軽減されます。また、通常の投資で得た利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoの場合には運用益のすべてが非課税になるのです。さらには、受け取るときにも退職所得控除といったメリットもあります。

【iDeCoのメリット】

――なるほど! となると、先ほどの毎月3万円ずつ20年間積み立てるケースにiDeCoをあてはめると……?
飯村先生 平均利回り3%だと想定した場合でいえば、……約260万円のプラス。20年間で積み立てた720万円は約980万円になるのです。

――それはすごいじゃないですか! 1400円と260万円ではそれこそ雲泥の差ですね。そう考えると、やはりなるべく若いうちからはじめるべき?
飯村先生 そのとおりです。それだけメリットを受けられる期間が長くなりますし、より多くのお金を積み立てることができますからね。でも、もちろんiDeCoにもデメリットはあります。まずは、自分で運用しますから、その運用次第で将来受け取れる額が変動するということ。

――それはちょっと怖いかも……。
飯村先生 もちろん対処法はあります。iDeCoにはさまざまな商品がありますが、定期預金など元本確保型という商品を選べば、元本割れすることはありません。それでも、所得控除や運用益の非課税というメリットがありますから、通常の定期預金と比べると、将来的に受け取れる金額には大きなちがいが出てきます。もちろん、「積極的に投資をして資産を増やしたい」という人なら、元本変動型の投資信託を選んでもいいでしょう。また、元本確保型と元本変動型の両方を組み合わせるといったこともできますから、自分の考えに合った商品を選んでほしいですね。

――安心しました。デメリットはそれだけですか?
飯村先生 あとは、原則60歳にならないとお金を受け取れないということが最大のデメリットかな。「急に大きなお金が必要になったから」と、積み立てたお金を引き出すことができないのです。iDeCoは年金制度ですから、当然といえば当然ですけどね。

――なるほど。でも、それはとらえ方次第でメリットともいえるかもしれませんね。
飯村先生 そうですね。いわゆる「天引き」でしっかりとお金を貯めて増やせるわけですから、お金の使い方に無頓着でずぼらな人にとっては大きなメリットといえるかもしれません。いずれにせよ、これからは公的年金に全面的に頼るのではなく、自分年金をつくることを考えてほしいですね。

構成/岩川悟(合同会社スリップストリーム) 取材・文/清家茂樹 写真/櫻井健司