「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第88回のテーマは「なかったことにはできない」です。

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世の中によくある夫婦ケンカだと言われる一つ……。「女は過去の失敗を持ち出してずっと責める」っていうもの。我が家でもあります。

しかし、そもそもなぜ、それが起こるかというと……? 我が家の場合、パートナーが過去に私を怒らせたり傷つけたりしたことは……多々あるわけですが、それに近い他人の話をしている時に、そのやらかした人(大体は夫)のことを「バカだなあ」とか「妻側もそんな男と結婚したのが悪かったね~」などと言い出すことが多いのです。

そうなると「え、私もバカと結婚した女ってことじゃん……」となり、「あなたも同じようなことしたじゃん」と言ってしまいます。そして、過去の過ちについて指摘すると、パートナーは「過去のコトを持ち出すのか!」「何度謝ればいいんだ」とか言い出すんですが……似たようなことを自分もしたのだから、そんなこと言わなきゃいいのに……と思うわけです。

でも、そもそも私は「過去のことを怒ってる」わけじゃないんですよ。

現行で「過去のことを、まるでなかったかのようにしていること」に傷ついているわけです。それは「過去のコト」じゃなくて、たった今、行われていることなんですよね。

こっちからすると「ケンカして、話し合って間違いを認めて仲直りしたのは事実。でも仲直りしたからって、やったことがなかったことになるわけないよ? あの時間違いを認めた気持ちはどこへ……」って気持ちなんですよね。

パートナーには「怒りポイント」というのがいくつかあって、その中の一つに「自分がバカだと思わされる」というのがあります。「過去のやらかし」は自分が失敗したことなので、自分が愚かだったと認識させられることなんですね。そうすると傷ついて怒り出しちゃう。自分を守るために攻撃に出る。そのパターンを散々やって私に指摘されて、攻撃に出ちゃうその態度を反省し……と繰り返しても、そう簡単には「怒りポイント」は治らないものです。

対処方法はまず【他者の夫婦の話で、夫のやらかしをバカにしない】ようにすること。やらかした人に対して「まあ、きっとそのうちわかるよ」とか言えば……こちらも「そうだよね〜」と思える。

しかしまあ……同族嫌悪とかそういうものなのか「やらかし夫」にイラっとするようで……。結果的にバカにして、私が「自分もそうだったでしょ」とつっこまれることが多い。その場合は「また過去のことを謝れっていうのか!」って言うんじゃなくて「今はオレはそうじゃなくてよかったね!」と言えばいい。なぜなら、過去のことを謝ってほしいわけじゃなくて「なかったことにしてる」ことに怒ってるから。

「今はそうじゃなくてよかったね」は過去はそうだった、ということなので、私を傷つけることにはならない。

という結論に至りました。別に過去のコトを謝らなくていいから「なかったことにしないで」と。

……って我が家は話し合うんですが、コストがかかるんで、ここまでガッツリやりたくないですよね。ここで「男の人はプライドが高いから、立ててあげないと」という「衝突を避ける」 方法は、有効だと思います。しかし、我が家のパートナーは「立ててもらう」ことは屈辱だと感じる人なんですね……。

過去の過ちを指摘されて傷ついて怒っちゃうけど、「男は立ててあげないと」って言われるほうが、より「バカにされてる」と思うタイプなのです。なので、我が家ではちゃんと両者が納得できる対処方法を考えています。

そして「ちゃんと過去の過ちを認めたほうがいい」とわかるのは「自分が言われる側」に立って痛感……。夫婦関係においては夫に対して私が「やらかす」ことは夫婦の関係性上、あまりないのですが、子どもと親となると私も「やらかす」ことがあります。

とある日に……出かけ先で夫が問題があると私が感じる行動を取りました。そこで帰宅途中の駅前で「ああいうのはやめてほしい」と話を始めたら……夫婦ゲンカに発展したことがあります。相手が酔っ払っているのに(私は下戸)、話し始めたらまともに話し合いにならないのに、外でするべきじゃなかった……と、後から反省したのですが、息子に「恥ずかしいからやめてほしい」と言われました。

「ケンカするなら家でして!」と……。その通りですね。その日は「二度とやらない」と誓って息子に平謝りしました。息子がその駅前に来ると「お父さんとお母さんがケンカしてたのがイヤだった」と言うんですね。す、すみません……と思いつつ、それ、かなり前のことだから、もう許してくれないかなあ……とも思ってしまう。

でも、ここで私が「まだ言うの~」とか「もういいじゃん!」とか「なかったこと」みたいに振る舞ったら息子は傷つきますよね。そう思うと、やっぱり「なかったこと」にはできない。「あの時はごめんね。もうしないからね」としか言えないのでした。

とはいえ、過去のことを何度も素直に謝るということは全然悪いことではないと思うのです。だって「あの時の過ちをちゃんと理解していますよ」ということだから。「過去の過ちを何度も責められている」と感じるよりも「ちゃんと今はわかってますよ!」のほうに心のフォーカスを当てれば、誰もイヤな気持ちにはならないんじゃないかなと思います。

ちなみに私は過去の人間関係で「今の話題と全然関係ない過去のことを持ち出してあーだこーだ言われる」というのも経験したことはあります。なので全ての「過去の過ちを持ち出す」案件が正当な怒りかと言われればそうではなく、それはそれでケースバイケースだなとも思います。相手が過去のことで怒っている時に、自分のたった今の立ち振る舞いが、「過去の過ちをなかったことに」してないかどうかを判断基準にするのは有効かなと思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。