「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第75回のテーマは「私の人生にこんなことがあると思ってなかった」です。

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「どんなときに結婚してよかったなと思いますか?」とたまに聞かれます。もちろん、話し合いがちゃんとできたときとか、いろんなときに「この人と結婚できてよかったな」と思ったりするのですが、一つだけ、なぜか私の心の琴線みたいなシチュエーションがあるのです。

それが「家族でドライブ」です。これは子どもができてから、すごく感じるようになりました。子どもができる前も、パートナーのノダDとレンタカーでドライブしたことはあるんですけど、そのときは、そこまで感動したりはしなかったんですね。まあ、過去にもドライブデートに連れて行ってくれた人……というのはいたし、「ドライブ」が琴線ではないらしい。

でも、なぜか子どもがいて旅行中にドライブしていると「こんなことが……私の人生にあるなんて……」みたいな気持ちになるんですよね……。みなさんにも、ありますでしょうか? そういうシチュエーション……。

我が家は家族旅行は多いです。なのですが、海外旅行に行ってるときは楽しいけどそういう感じはしない。「家族」「日本国内」「ドライブ」の3つが揃うと「私の人生に……!!」みたいなモードが発動します。これ、自分でもちょっと不思議なんですが、私の中では自分の記憶と相まって「家族旅行でドライブ」が「普通の家族の姿」になっているみたいなんです。

自分が育った環境では海外旅行はおろか、家族で飛行機に乗ったり新幹線に乗ったりもしたことがありませんでした。私の実家では「移動」といえば車。家族全員でドライブでした。

なので、これはおそらく幼少期の刷り込みなんだと思います。私は初婚で失敗したときに、幼少期からの刷り込みやイメージを頼りに「こうするものだ」と思って行動してしまったことが多かったと感じました。なので、今はむしろそういう「刷り込み」は、自分の今の生活と本当に合っているのかどうか、慎重にすり合わせなくてはならないので、気をつけるべきものだと感じています。

なのですが……「家族でドライブ」というシチュエーションになると、「ウワー」ってなっちゃう。どうも自分の心の奥に刷り込まれている「普通の家族」みたいなことができている、ということに感動しちゃうみたいなんですね……。

30歳で「結婚したくてしたくて」初婚をした動機に、「普通の家族がほしい」という潜在的な願望みたいなものがあったと思います。つまり、わりと前から「私は普通の結婚をしたり、家族を作ったりできないのでは」と思ってたってことでもあるんですよね。「そうなりたい」ってことは同時に「それが叶えられていない」という気持ちの表れなので。

そして、初婚がうまくいかずに離婚した後は、「やっぱり私には無理だったんじゃないか」という気持ちが残ったのだと思います。とはいえ、その後「自分なりの幸せとは」と、よくよく考えて行動して、今の結婚生活に至ります。

事実婚していたり、家事育児を分担したり、共働きだったり……。今の自分の生活というのは、基本的に「自分で自分の理想」を考えて行っていることです。自分が育った環境とは全然違うけど、ストレスがなく、本当にやりたいことをやっていると思っています。

なのに、なぜか家族でドライブに行くと「私の人生でこんなことあると思ってなかった~」って感動しちゃう。普通に楽しいな、と感じる海外旅行や他のシチュエーション以上に琴線に触れちゃう。正直ちょっとこれって「刷り込まれた呪い」みたいなものを感じて、幸せを感じつつ「怖いな」とも思います。「幸せな呪い」みたいな感じです。

心の中に埋め込まれた何か、というのは自分の感じ方を左右して、自分の人生を作っているのだということを実感してしまうからです。

ちなみに、私は免許は持っていますが、ペーパードライバーです。なぜなら、車の運転がとても苦手だから。パートナーも私の車の運転の苦手さはよく知っており、「酒が飲めなくても、どんなに眠くても、自分が運転する」と言っています。運転を感謝されることは、パートナーも全然悪い気はしてないし、お互いWin-Winなので、きっとこの先も感動し続けると思います。

でも、いつか「パートナーが運転して、子どもと自分がその車に乗っていること」を特別な事態ではなくて、普通のことだと受け入れられて、他の楽しい出来事と同じように感じられる日が来たら、それはそれでよいことなんじゃないかなと思っています。

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