「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第36回のテーマは「絶対やらないと決めていること」です。

これまでのお話はこちら

  • タスクを「やらない」難しさ

悲しい話をします……。このマンガを描いた後……私は結局ピタゴラ装置を作ってしまったのです……。ううううう。

お父さんがいない夜、息子が「ピタゴラ装置作らないと寝ない」と言い出したのです。

そして私は「そうなの? しょうがないなあ」と手を出してしまいました。目先の「早く寝てほしい」という状況に、もっと先まで見据えた戦略を忘れてしまったのです(号泣)。

お母さん、こういうの作り始めるとわりと本気になっちゃうタイプなんです。だってほら、お母さん、小学生のときは図工の時間しか輝いてないタイプだったから!!!

というわけで、息子のリクエストに応えて、お父さんは2段くらいのレールしか作らないところを、お母さんは3段、4段レールを作り、最後にボールが落ちる場所も「アレが使えるかな」「コレはどうかな」などとやってしまいました……。

あああああ!!! 息子を楽しませてしまったー! そうなったらもう今後「お母さんやって」ってなるじゃないですか。

お父さんの係にしたかったのに!!! お父さんも! もっと子どもから「お父さんがいい」と言われたかったら、全力で子どもをワクワクさせて……! 「お母さんじゃイヤだ」と言われるくらい、もっと全力でやってよー!!!

と思ったけど、やっぱり向き不向きあるし、しょうがないのかもしれない……と諦めの気持ちになりました。相手に自分以上の多くを求めないのも我が家のルールなので。

「タスクをシェアするには、やらないのが一番」(第35話参照)というの、本当によくわかってるし、できればそうしていきたいんですが、やっぱり難しいですよね。

我が家では私が「炊事やる気がまったくない」という理由で、パートナーに丸投げ。ごくたまに「小麦粉を練ってみたい」という気持ちになったときだけ、子どもと一緒にクッキーを焼いたりパンを焼いたりします(なので、我が家ではオーブン系は私の役目)。そこだけはうまくいってます。

家事を平和的に分担するために、「やりたいほう、得意なほうがやる」というのは基本的にいいんですが、「じゃあ、得意なことが多いほうが負担が増えるのでは?」という問題があるんですよね。

なので、私は「負担が増えそう」と思うことについては極力「やらない」という選択をするようにしています。でも、こうやって「本当はできるのに、やらないようにしている」ことって、ついつい「やっちゃう」んですよね……。

「やらない」って、難しい!

「できるならやればいいじゃん」というのもあると思うのですが、「能力的にできる」のと「キャパシティ」はまた別の問題なんだと思います。

私は初婚で、「得意なほうがやればいい」「私のほうができるから」と何でもかんでも背負い込み、最終的にキャパシティオーバー。そしてタスクをいざ相手に渡そうとしても、「能力的に無理」とか「モチベーションがない」とかそういう問題を解決できずに結局離婚となりました。

ちなみにこの原稿を書いてる現在……子どもが保育園を風邪で休んでいます。こういうときに限ってお父さんは外出の仕事。子どもはもう4歳なので、ものすごく説得して「もう少し1人で遊んでくれるかな? お母さんお仕事終わったら一緒に遊ぶから」とお願いして、なんとか仕事をしている最中です。

これを母親として「子どもの快適さ」を全力で優先した結果、「おうちでお母さんといつもいたい。保育園行きたくない」とか言われちゃうのもすごく困るのです。だってお母さんが働かないと、我が家の家計は立ちゆかないので……。

「できること」「やりたくないこと」「やらないといけないこと」「もっとやればより高いレベルが望めること」……家事、育児、すべてにおいて段階があります。

「すべて完璧にやらないと」と抱え込めば、ストレスや過労で人がつぶれてしまう。でもタスクをやらなすぎても家庭がまわらず生活が破綻します。

だから、結局は自分の能力、キャパシティ、価値観を考えながら「ちょうどいいところ」をみつけていくしかないんですよね。そして、それはテストや資格のようにわかりやすい「正解」はない。

私は「家族のだれかが悲しくないからいいかな」と判断しているのですが、そこに「おもしろいピタゴラ装置を作る」というタスクを入れるか、外すかという判断でも、いちいち悩んでしまいます……。ああ、日々葛藤。

タスクのクオリティや、やるかやらないかの取捨選択を日々続けていくのが、「日常生活」なのかなあと思っています。私は、「私が頑張ればいい」と自分のキャパシティよりも多くのタスクを抱えてしまいがちなタイプなので、なるべく「やらない」を選ぶようにして、悩んだらなるべく「つらくない」「楽しい」ほうを選ぶように心がけています。

そういえばピタゴラ装置作りは、たしかに楽しかったです……。でも「たまにお母さんがやる」くらいにしておきます。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。