「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第35回のテーマは「分担の秘訣……それはやらないこと」です。

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  • 家事分担の秘訣、それは「やらないこと」

家事分担の秘訣。それはなんと言っても「やらない」ことです。

おもに女性のほうが「全部やらなきゃ」という気持ちをなくすことが大事なのですが、人によってはかなりの難易度だと思います。

我が家の大体の家事分担がうまくいってる秘訣はなんと言っても、私が炊事をやらないからです。初婚で一生懸命、元夫の好きなものを作り続けて、離婚したら自分のためには一切炊事ができなくなってしまって以来、私は必要に駆られない限りは炊事をしていません。

「やりたくない」というよりは、心理的には「できない」に近いくらいの「やらない」です。一人だったら本当に毎日カップ麺で平気なので、「やらなきゃ」とも思わないし「やりたい」とも思いません。

でも、そういう状態にならない限り、私はたぶんパートナーに炊事をやってもらう、ということができなかったと思うんです。それくらい私には「結婚したら、女性が食事を作るもの」という呪いが強かった。

だから「家事分担の秘訣はやらないことだよ」なんて言われても、「え、無理」っていうタイプでした。私自身が。家事を抱え込むことで「ちゃんとした妻」みたいな気持ちになれて安心していたんですよね。

でも結局は離婚……。憧れていた「ちゃんとしている」ということに挫折して、よくよく考えてみたら「私は食事を作るのが、別に好きじゃなかった」ということに気が付きました。

掃除は離婚後もできたので、「ああ、掃除は自分の快適さのためにやってるから、好きでやってるんだな」とわかりました。離婚してみないと、好きでやってるのか、「やるべきことだ」と思い込んでやってるのか、自分で判断できなかったんだ! とものすごくビックリしました。

そういうことがあったので、再婚後は「社会的な役割としてやらなきゃいけない」と思って何かのタスクをやるのは、やめることにしました。

パートナーも「男だから○○をする」みたいなのはイヤだったので、すべてのタスクを「ちゃんと話し合って、得意なほう、またはこだわりがあるほうが率先してやる」というルールに決めました。

そのルールは、「得意なほう」「こだわりがあるほう」というポジティブな理由でタスクを分担するには問題なかったのです。

だがしかし! 「やらないと不安だから」という理由でタスクを片方がやってしまうと、禍根を残す……ということに気が付いてなかったんですよね……!

我が家は、炊事は「健康的な食生活を送りたい」気持ちが強い夫が担当。掃除は「快適な部屋で暮らしたい」という気持ちが強い私が担当です。

そこはよかった……。問題は「保活」です。認可保育園に入るための準備!

夫は離婚前の家庭も共働きだったので、保育園のお世話になっていました。経験があるから「得意なほうがやる」ということで、やってくれると思っていたら「この時期忙しいから動けない」と言われて、慌てて私がやることになりました。

帝王切開産後、1カ月半過ぎたくらいで、まだまだガタガタの体にヒヨヒヨの赤子を抱いてあっちこっち調べて回ることになり……メンタルも不安定だし、ものすご~~~くネガティブな気持ちでいっぱいでした。

この話を最近パートナーにしたら、「でも、さるころがやらなかったらオレがやったよ」と言われたんですよね……。

「仕事で時間がない人」と「仕事はしてないけど産後で体はガタガタの人」を比べた状態でも、「やらないと不安」なほうがやらざるを得なかった。

私は「不安だから」というネガティブなモチベーションで保活というタスクを引き受けてしまった。あの時「でも、私も体が辛いから無理~」って言えばよかったってこと?! と、なんとも言えない気持ちになったのです……。

でも思い返してみても、「認可保育園に入れなかったらどうしよう! 仕事どうしたらいいの?!」という不安に押し負けて、あの時に「不安だけどやらない」ってことはできなかったと思うのです。じゃあそれは「君がそう選択したんでしょう」と言われると、そりゃそうだけどさ~と、やっぱり納得できないものがありますよね。

タスクは「やりたいほうがやる」分にはいいのですが、やりたくないことを「やらざるを得ない」と思ってやると、未来にまで禍根を残します。なので、「やりたくない」ことを我慢してやる時ほど、納得いくまで話し合いをしないとダメなんだなあと思います。

でも、大体そういうタスクは「今やらないと間に合わない!」みたいな時間制限があるので、そう簡単にいかないですよね……。

「保活は出産前からしておこう」とよく聞きましたが、出産前は全然リアリティがなくて「え~わかんないよ~」と、とくになにもしていませんでした。

でも保活で一番大事なのは、実際に役所に行くとか保育園の見学に行くとかだけじゃなくて、「夫婦のどっちがどれくらいやるか」をちゃんと話し合っておくことだな……と今になって思います。

難易度の高いタスクを「不安に押し負けて引き受ける」と、禍根が残る! というのは我が家で教訓として刻まれたので、今後そういうことがないようにしていきたいです!

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。