「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第134回のテーマは「家族とファッションの問題」です。

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最近、いくつか「男の子の服選び」についての話を目にしました。身近なところでも、「母親に服についてあーだこーだ言われて苦手意識がついた」という話を聞くことがあります。

実際に子育てを始めてから、子どもの服を選ぶことって結構センシティブな問題だな……と感じています。一番わかりやすいのは、ジェンダーの問題です。何も考えずに男の子に男の子らしい服を、女の子に女の子らしい服を着せてもいいものか……? というものです。

「○○らしさ」というのは社会の慣習などにより学習するもので、育て方次第で人間の価値観が決まっていく……みたいなことを言われると、21世紀の親としては息子に「男の子らしさ」の押し付けは良くないよねと。「男の子でも、ピンクの服を着てもいいじゃない」という意識でいます。かといって、本人がピンクが嫌いなら無理して着せることはないですよね。なので「本人の好きなものを選ぶ」ということに気を配っています。

というわけで、我が家は「本人の好み重視」なんですが、別に服に興味のない子もいますよね。そういう場合は親が選ぶのだと思います。周りのママ達を見ていると、やっぱり「自分の好みではないものは着せたくない」というこだわりのある人もいます。親と子の好みが合っていればいいのですが、合わない場合は親の趣味が優先されたり、「こういうものだから」「こっちのほうがいい」と親の力を行使できたりしてしまいます。

ファッションについて「イヤな思い出」がある人の話を聞く限り、その「親の権力」によって自分の選択を尊重してもらえなかったという体験は、苦手意識に繋がるのだなと思いました。「こっちのほうがいいよ」とかではなくて、「そんなの好きなの? 」とか「ダサイから自分で選ぶのやめなさい」とか、相手の選択を否定をしてコントロールすることは自尊心を傷つけてしまう。それによって「服を選ぶ力」を奪うことになるのは、誰の幸せにもならないと考えます。なので私は、極力「子どもの好みに合わせよう」と思っています。

そもそも、服装を選ぶというのは支配関係になりやすいことだと思うのです。身だしなみについて過度な規定がある校則などがわかりやすいですが、家庭内においても「家族の服を選ぶ」ということも、気をつけないと支配の証になってしまうこともあります。

パートナー同士の場合は、「相手の好みに合わせる」というゆるやかな思いやりみたいなものや、基準になることはあると思います。我が家でも、パートナーはあまり強いこだわりがないので、「できたらさるころがいいと思うものを選んでほしい」と言われます。なので、必ず服を買うときは一緒に行きます。

自分で選ぶ自信がないから一緒に選んでほしいとか、パートナーがOKなモノなら安心して着られるとか、そういうことはありますよね。私も自分でその日の服を選んでいて「あれ? なんかちょっとおかしいかな」と思う日は、パートナーに「今日の服、どうかな? 」と聞いたりします。

しかし、これが「私の好み以外の服を着ないで」となってくると話は違ってきますよね。相手の好みや選択を尊重せずに、一方の意見や主張だけになってくると、そこには支配の構造ができてしまう……。これはパートナー同士だけでなく、親から子に対しても同様ですし、パートナー以上に気をつけなければならないところだと思っています。

あと、なぜか男性が女性の服を決めることに関しては、支配の関係から批判されがちですが、女性が男性の服を決めることに関しては許されているような気がします。男性のほうが服に無頓着な人が多い、というのはあると思うのですが、「本人の意志はちゃんと尊重されているのか」という部分は、相手が夫であれ息子であれ気をつけなけばいけないなと思っています。

とはいえ……家族があまりにも自分の趣味と違いすぎるファッションセンスの場合は、話し合いの必要がありますよね。息子がいつか「えー! そんな服を着るの!? 」と私が思うような服を着はじめたときに、何も言わずに「好きにしなさい」と尊重できるのか……? と思ってしまいます。

「あんまりお母さんはそういう服好きじゃないなあ」くらいは言ってもいいとは思うんですけどね。本音を言わないのも問題があると思うので……。でも「やめなさい! 」とか「恥ずかしいからやめて! 」とかは言わないようにしたいです。私と息子は別の人間なので、本人の心の赴くままに生きるほうが大事だなあと思っています。

と、将来の心配をしてる場合でもない我が家です。なにせ、すでに我が息子は「自分が選んだ服以外は着ない」という、こだわりのある男児だからです。そのこだわりは2歳くらいから始まり、服の色、靴下の柄……気に入らないものは絶対に着ないのです。

「暑いから、公園で遊ぶ時は帽子をかぶってね」とかぶせた帽子をたびたび地面にたたきつけられ、「帽子が嫌いなのかな」と思ったら、自分から「ここにはいる」と入っていったお店で選んだ帽子ならかぶる……ということが2歳の時にありました。私が「かわいい~! これ着てほしい」と思って買ったものの、一度も着てもらえなかった、履いてもらえなかった服や靴は、キレイなままよそへお下がりに行きました……。

なので、今では本人の許諾を得ずに服を買わなくなりました。そして私は「別に性別は関係ないのでは」と思う気持ちを強くします。男児だろうが女児だろうが、こだわりがある子はあるし、ない子はないような気がするのです。

現在、息子の選ぶ服はわりと私が見ても「かわいいな」と思うものが多いです。なので、好みのマッチングはいいのだと思いますが、そのうち変わるときもあるのだろうな……と思っています。それでも息子の好みを尊重して、自分の好みを押し付けない親でいたい、と思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。