「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第124回のテーマは「理想はあっても疲れに負ける日もある」です。

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我が家は旅行に行くのが好きです。息子の好奇心に合わせて、いつもどこに行きたいか……という話をしています。今年はコロナ禍で海外へは行けませんし、旅行の行き先もどこでも選べるわけではありませんが、国内旅行は何カ所か行きました。

旅行は楽しいのですが、だいたい帰ってくるとものすごく疲れています……。もともと「ここに行くならこれもあれも」と詰め込み系の旅をしがちな我々夫婦。子どもも大きくなったので、つい欲張ってしまいます。なので、帰宅が遅くなることもあり、帰ってきたら全員疲労困憊、みたいなときがあります。

また、疲れるとなにもしたくないタイプと、「なんかしちゃう」タイプもいます。息子はどんなに疲れて帰ってきても、「家に帰ってきたらやりたいこと」をやらないと気が済まないタイプなのです。帰宅すると見たかったテレビの録画を見たいし、旅行先ではできなかった工作や折り紙などをやりたいと言い出します。

こうなると、説得するのが大変です。親も疲れているので、頑なに「やりたい」と言っている息子を説得する気力がありません。息子は疲れているときほど意固地になったりもします。だいたいの場合、説得にかかる時間を考えるとさっさとやらせた方がよかったりするので、やらせちゃいます。

私は「怒って言うことを聞かせる」のがイヤなんですよね。怒るほうがストレスが溜まるし、家の中はギスギスするし、最終的に子どものメンタルケアをしなくちゃならないし、「怒るのはコストが高い」と思うタイプです。また、本人の気が済めばさっさと終わることも多いので、「もう遅い時間だからやめよう」というよりもやらせることが多いです。

なのですが、いざ付き合うとなるとそれはそれで疲れます。そしてこういうのに付き合うのは母親……。お父さんはさくさくと自分のやることをやって、お風呂に入ります。息子は、お風呂は母親としか入りたくないので仕方ないのですが、くたくたなのに折り紙や工作に付き合って、さらにお風呂も入れて、お風呂から出てきたらパートナーがすでに寝ていたら、「お前も子どもの面倒みろ~~! 」とムカつきました。

子どもには腹は立たないけど、同じ責任を負っているハズのパートナーにはめちゃくちゃ腹が立ちます……!

しかし、翌日話を聞くと「あのまま起きてたら、めちゃくちゃ不機嫌だったけどいいの? 」と言われました……。それは大変困ります。不機嫌をまき散らすくらいだったら即寝てほしい。それくらい、不機嫌さを妻と子どもにまき散らす時のパートナーは害悪だと思っています。我が家では「不機嫌は加害」ということは共有されているので、他人に加害するくらいだったら早く体を休めたほうがいいです。

とはいえ、「私も疲れるのになんで子どものこだわりに付き合うのも、世話するのも私なの? 私も不機嫌になって怒りまくってもいいってことになるのでは……」と、不均衡さを感じてしまいました。みんなで「疲れたからさっさと寝よう」と共有できればいいのですが、疲れた時の行動がバラバラだと、疲れたまま誰かに合わせる人に一番負担がかかってしまう。

結局、正解は「疲れないようにしよう」ということなんですよね。

我が家はお互いが快適でいるためにたくさんの話し合いをして、ルールを設定したり共有したりしています。なのですが、結局家族全員が疲れていると、ルール運用はガタガタ、空気はギスギスです。「どんなに話し合っていても、結局こうなるの~」とガックリしてしまいます。でも、お互いのことを思いやれる優しい気持ちになれるのは「元気な時だけ」なんですよね。体が疲れてなくて、心に余裕があるときじゃなければ、ニコニコで優しい状態を保つのは難しいです。

しかし、よく考えてみると今まで話し合ってきたことはムダではないのです。我が家で最も問題なのは、パートナーがキレたり不機嫌になったりして妻と子がそれに恐怖を感じることです。それが一番の困りごとだということが共有されているので、パートナーは無理をしないで先に寝たんですよね。

たぶん、以前だったらパートナーは「無理しても起きていなければならない」と思い込み、そして不機嫌になり、だいたいの場合は家族もストレスを感じてイヤ~な空気になり、最終的にはキレたり怒鳴ったり……という展開になっていたと思います。

そうなるよりは、無理せずさっさと寝てくれたほうが家族にとっては安心安全だったのです。私にはパートナーが無理をせず、メンタルが安定しているほうが圧倒的に優先順位が上です。そのことを夫婦で共有できるようになって、パートナーが「無理をしない選択」をしたのは、長年の話し合いの効果だったんだろうなあ……と思いました。

全員がニコニコでいられる土壌を作るために「疲れないようにすること」は大事ですが、疲れたときに何を優先するかも大事な選択なのだと思います。全員がいつでも体調万全ということもありえないので、誰かが病気やストレスで弱っていたり、みんなが疲れていたり……という時でも、何を優先するかを共有しておくことも快適でいるためには必要なのだなあと思いました。

とりえず、次の旅行の計画は「余裕を持って、疲れないようにする」つもりですが、やっぱり計画を立て始めると「やっぱり一日くらい無理しちゃう? 」とか言い出してしまいます。「疲れたときはどうするか」も含めて考えて、ストレスのない環境を作っていきたいです。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。