「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第113回のテーマは「子どもに我慢はさせない方針」です。

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今回は、家族で遊びに行った日に、我が家のパートナーが仕事で先に帰ったときのエピソードです。

我が家はパートナーの子、つまり私の子の異母姉弟と交流があります。お姉ちゃんやお兄ちゃんと話していると、今のお父さんと以前のお父さんはだいぶ違うことがわかって興味深いです。

パートナーはよく私が「子どもに甘い」と言います。第105回「子どもの『やりたい』を潰さないのが親の役目」でも書きましたが、私は子どもになにかを強制しない方針です。

甘いというよりは、基本的に「我慢をするのはよくないこと」だと考えているのです。なので、なるべく子どもにも我慢はさせません。我慢をしないというのは「子どものワガママを聞きまくる」ということではなくて、「なにか問題があるとしたら解決する」ということです。

たとえば子どもの「暑い」とか「歩きたくない」は、なにか理由があって困っているということなので、それを「我慢しなさい」というのではまったく解決になりません。解決せずに我慢をさせてしまうと、苦痛ばかりが残ります。

というのも、もちろん自分の体験からそう思うんですが……。よくパートナーが息子のことを「この子は繊細」みたいなことを言うんですね。実際、結構神経質なところがあるとは思います。それを見ていて「ああ、私もそうだった……」と思い出すことが多いのです。

私は幼少期からとにかく外が苦手でした。なんで嫌いなのか子どものころはわからず、「外が嫌い」としか認識できなかったのですが……。大人になってやっとわかったのは、私はどうやら目が眩しさに弱く、明るいところにずっといると頭が痛くなってしまうのです。なので、大人になってからはずっと帽子をかぶり、それでも眩しいときはサングラスをしています。

私たちの世代が子どものころは、子どもがサングラスをするなんて、発想自体なかったですよね。でも、息子も赤ちゃんのときから眩しいのをすごく嫌がっていました。ある程度の年齢になって子ども用サングラスを買ってあげると、自ら進んでかけるようになりました。

また、昭和の子どもって「夏は日焼けしてなんぼ」みたいな感じでしたが、私は日焼けも嫌いでした。海やプールに行ったあとお風呂に入ると、痛くて染みて、そして夜は体が熱くて寝られない……みたいなやつ。あれが本当に嫌いで嫌いで、苦痛でしかなかった。でもそれが「当たり前」だったんですよね。ラッシュガードもないし……。

でも、母親は水着の上に長袖を着ていて、今思えば「それ、子どもにも着せてーー! 」って感じなんですけど、子どもの苦痛は結構放っておかれたな……という記憶です。昭和の子育ては今ほどケアについて言われてなかったのもあるし、我が家は4人姉弟で親の手が回らなかったというのもあるので仕方ないんですけどね。

とはいえ、私は中学生のときに家族で海に行って日焼けで苦しんで以来、「二度と海には行かない!! 」という強い決意をしました。海の楽しさよりも圧倒的に苦痛が勝ったんですよね……。

大人になるにつれて、徐々に日焼け止めも進化し、ラッシュガードも普及し、自分が日光に弱いことも理解したので対策をするようになって、やっと「海が楽しい」を手に入れたのは、最近なのです。

我慢をせずに苦痛をなくしていれば、もっといろいろ体験できたことはあったんだろうな……と思っています。なので、息子には「我慢しなさい」となるべく言わないようにしています。我慢は苦痛を呼び、嫌いになるものが増えるだけ。そして嫌いなものが増えると、選択肢チャンスも減ってしまいます。

ただ、親が子どものすべての問題を解決することはできません。今年は健康に害が出るくらいの猛暑でした。猛暑の中を歩かせる必要があるときに、無理は厳禁です。でも駅までは数分歩いてもらわないと困る……というときは日焼け止め、サングラス、日傘、途中で水分補給と休憩、全部やって、あとは本人に頑張ってもらうしかない。強制はせず、励ましながら本人に頑張ってもらいました。

我が子のお姉ちゃんによると、前妻と離婚する前のお父さんは結構厳しかったらしく、わりと「我慢しろ」系の親だったそう。

そもそも、パートナーのほうが私よりも苦痛に鈍感……というか、私が日焼けが嫌いだった話をしても全然ピンとこないようなタイプ。そんな「我慢しておけばなんとかなる」みたいな人もいるわけです。その辺は、「その人にとってなにが苦痛なのか」をよくよく話し合わないとダメだなと思いました。

今は後妻である私の方針に寄り添ってくれていて、娘から見てもずいぶん「優しくなった」そうです。私は親が子にをかけて従わせるのは全然合理的ではないと考えていて、それを今はパートナーにも共有してもらっています。

なので現在のパートナーの子どもへのコミュニケーションは以前とは結構違うとのこと。お姉ちゃんは「今のお父さんの方がいい」と言っているので、やっぱり「我慢させずに解決する」「子どもに強制しない」ほうがいいよね、と思っています。

もちろん、我慢が必要なことは人生にあると思います。それに私だってこの先ずっと息子の苦痛を軽減したり、問題を解決したりし続けることはできません。

でも、なにか問題があったら「我慢する」ということが身についてしまうと、問題を解決する力が育たないと思っているんですよね。なので「我慢はしなくていから問題を解決しようね」ということを伝えて、いずれそれが自分でできるように、成長に合わせてサポートするようにしています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。