「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第114回のテーマは「怒っても子どもはいう事をきかない」です。
前回、私は「子どもに我慢はさせない。解決する」という方針であるという話をしました。それと同じく、強制もしないようにしています。
息子は小さいときから偏食で、なかなかご飯を食べてくれないタイプです。子どもがたくさん集まるところでお菓子やジュースを出されても、何も食べないなんてこともよくあります。そもそも、食べること自体への意欲が少ないので「自分だけ食べるものがない」みたいなことを悲しむこともありません。
食への意欲がない息子の食事は、結構苦労します。我が家はお父さんが炊事担当なので、栄養バランスも含め「どうやったら食べてくれるか」を考えてくれています。でも考えてもなかなかちゃんと食べてくれないので、お父さんはストレスに感じることもあるんですね。
それは私もわかっているので、長年息子の食事をケアする係をやっていました。「どうやったら全部食べられるか? 食べやすかったら食べるのかな? 」など、息子とコミュニケーションをとって、「おにぎりにしてほしい」と言われればご飯はおにぎりにするし、ふりかけをかけてほしかったらかけてあげるし、もっと小さく切ってほしかったら切ってあげるます。そして「頑張って食べよう~! 」と声をかけるなど、気を抜くと痩せちゃうというレベルの息子になんとか食べさせる努力をしてきました。
これは私が「我慢はさせずに解決する」という方針だからです。食べられないのにはそれなりに理由があるんですよね。おにぎりにしてほしいのはお箸でご飯を食べる技能と集中力がないからだし、ふりかけをかけてほしいのも、おかずとご飯をバランスよく食べられないから。
これらは発育とともに徐々に改善していき、今はおにぎりにすることはほとんどありません。お箸がうまく使えるようになれば、息子にとっての「食事の困りごと」は減っていき、1人で食べられるようになるんだな~と思っています。食べることが好きなら早くそれができるようになるでしょうし、食べることへの意欲が少なければ、ちょっと遅いのだと思います。モリモリ食べるほかの子を見て、「羨ましい! 」と思うこともありますが、様子を見ながら「本人が困らないか」を主軸にサポートするようにしています。
しかし、炊事担当のお父さんは息子のご飯が進まないことにストレスを抱えており……。「早く食べて」とか「まだ終わらないの」とか、結構感情的な指導をすることがありました。そうなるとプレッシャーを感じるので、そもそもあまり意欲のない息子は、頑張って食べる気持ちがくじかれちゃうんですよね。
それで息子は、「お腹痛いから食べられない」と言うようになってしまいました。さらにお父さんはそれについて「嘘なんじゃないの」と問い詰めてしまっていたので、根本から問題解決しないとダメだな~と思い、ご飯の食べ方について話し合いをすることになりました。
息子が進んで食べられるように、苦手なものは出さず、バランスのとれたメニューを考えているお父さんが食べてもらえないことに傷つくのは理解しています。だからこそ、ずっとそこから先のケアは私が担っていました。
でも私でさえ、「なんで食べるのにそんなに時間がかかるんだ」と食事のたびにイライラするお父さんにうんざりしていたところがあったんですよね。怒っても、問い詰めても、圧をかけても、モチベーションが低いんだから食べるわけないんです。その結果が「お腹痛い」って言うようになっただけで、「嘘つくんじゃない! 」って怒るのはお門違い。「その嘘はあなたがつかせている嘘です」ということをまず解ってもらいました。
そして、なんとなく「ちゃんと食べて」と言っていただけの行為を、夫婦で話し合って根本から改善することに。
1. 息子に話を聞いたら、「保育園の給食で大好きなものが出るとおかわりをすることがある。そういう日は夕方でもまだお腹が空いてなくて、夕飯をたくさん食べられないことがある」ということでした。なので、最初にまず「今日はこれくらい食べられるか」ということを息子に確認する。
2. テレビがついていると映像を追って集中力がそがれるので「家族でニュースを見たい」という方針でつけていたニュースを見るのをやめて、音だけ聞くことに。
3. タイマーをセットして、決められた時間内に集中して食事を食べるという目標を息子に持たせる。
4. お父さんはイライラせず、息子を時間内に食べられるように声かけをして、励ます。
これらをやったら、初日から息子は自分で最後まで食べられるようになりました。
息子にとっての「できない」の原因をちゃんと考えて、一緒にそれをなくしてあげればできるようになるんですよね。もちろん、発育によってまだできないことと、もうできることというのがあるので成長過程をよく見てあげないといけないのですが。
大人がイライラするのを子どもに見せたり、感情的に叱ったり、圧をかけたりしても、子どもはできるようにはならない。そういうコミュニケーションの結果「できる」ようになったように見えても、ただそれは「成長したから改善した」だけかもしれない。できないことができたとしても、親との食卓が苦痛になったり、食事自体が楽しくないと思うようになったりしてしまうかもしれない。
そうしてその先の親子の信頼関係が失われてしまうかもしれないと思うと、手間はかかるけども、子どもの「困った」を取り除いてあげる努力はしてあげないといけないな、と思います。
とはいえ、私も本音では「早くさっさと1人でご飯食べて~! 」とは思っています……。しかし息子も来年から小学生。手がかかるのは今のうちだと割り切ってサポートしています。
新刊『骨髄ドナーやりました!』
(少年画報社刊/税別950円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ
著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』
(幻冬舎/税込1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ
著者プロフィール:水谷さるころ
女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。