「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第115回のテーマは「脳の発達は大事」です。

これまでのお話はこちら

  • 家事と育児と男と女

前々回「我慢はさせない。解決する」という話で、前回「強制しない」という話でしたが、今回はその根拠のひとつ「脳の発達に合わせる」という考え方を私がしているというお話です。

うちの息子はこだわりが強めで、食事も偏食気味です。今はだいぶ食べられるものが増えましたが、前は食べられるものが少なかったために、「好きなふりかけ」などにこだわりがあって、それがないと説得するのが大変でした。

息子をなだめすかし、叱り……と結局落ち着くまでにだいたい30分くらいかかります。一方、我が家からコンビニまで10分弱くらいです。「だったらコンビニ行って買って帰ってきたほうが早くない? 」というのが私の考えでした。

もちろん、子どもも親を見ているので、「舐められる」のはダメです。本当にダメなこと親をバカにするようなことがあれば、年齢にかかわらず叱ります。でも、「今自分が食べたいものがない」みたいな気持ちくらいは、尊重してあげてもいいのかなと思うのです。

時には、ないからって買いに行ける環境ではないことや、どうやっても手に入らないモノを欲しがることもあります。それをパートナーは「我慢しなさい! 」と叱りがちだったのですが、私は「叱ってもしょうがないんじゃないかな~」と思いました。

だって、幼児はお金も持ってないし、1人で行動できるわけもない。それでも欲しいモノはある。でも自分の意志では叶わない。「そんなの悲しいに決まってるよね~」と思うと、泣かれてもこちらの感情はネガティブになりません。私のそういう考えをパートナーに理解してもらうようにしました。

そもそも「理性が働く」のは脳が発達してから、と以前テレビやっていたんですよね。それは3才児と6才児の前におやつを置いて、「食べちゃダメだよ」と言って親がいなくなると、子どもは食べずに我慢できるのか、という実験だったのですが、6才児は我慢できて3才児はできなかったというものでした。結論としては、6才ごろから脳が発達して先のことを考えたり、理性的にものごとを考えたりできるようになります、という趣旨でした(うろ覚えの記憶でエビデンスとしてはかなり弱めですが)。

私はそれをみて「そりゃそうだよね」と思いました。乳幼児がオムツをしているのは、排便のコントロールがうまくできないから。まだお箸が使えないからフォークで食事する。感情だって同じだよね。よく考えれば当たり前じゃない……?

昭和のしつけのスタイルが、「親として子どもを言い聞かせなくてはならない」という雰囲気だったのは「それができなかったら子どもが立派に育たないかも」という親の不安が大きかったんじゃないかと思うのです。親が「子どもが成長すればきっとできる」と信じられれば、本当に実現不可能なこと以外は我慢させなくていいんじゃないかなあと思うようになりました。

パートナーは私の意見に最初のころは懐疑的でしたし、「本当にそれでいいの? 」と結構心配していました。「我慢させるトレーニングをしないと、我慢できない子になる」という考え方が強かったです。でも「脳が発達すれば理解できるようになるらしいよ! 」と私が言っていたら、パートナーも「そうかもしれないなあ」と、なかば実験みたいな感じで私の方針に合わせてくれるようになりました。

そしてパートナーも息子の「いつもあるものがない! 」とか「どうしてもアレが食べたかった! 」などの要望に、可能な限りは承諾してくれるようになり、食事の途中に買い物に行くこともありました。

そんな方針の我々でしたが、最近6才になった息子が毎朝必ず食べてるヨーグルトが切れていたときに……本当にあっさり「ないならいいよ」と言ったのです。

脳の発達!! 本当だった!?

まあこれはあくまでもn=1の我が家のケースなので、子どもの性格にもよると思います。でもこの「脳の発達」に合わせて考えようという方針は、親も楽になるんじゃないかなあと思うのです。

2才~4才くらいの子どもにすごい勢いで「○○するな!! 」と怒鳴っているお父さんとかお母さんを街中で見ると、ついつい「脳が発達して我慢ができるようになるのは6歳くらいからですってよ~」って言いたくなっちゃうんですよね。

能力的にできること以上のことを「できる」と思って叱りつけたり強制したりしても、誰も幸せじゃないのに……と見てて辛くなっちゃいます。子どもが何かできないという時に、ついつい親が焦って「できるようにさせなくては! 」と七転八倒してどちらも疲弊するくらいなら、「成長すればできるようになるよ~」という気持ちを持ったほうがいいと、私は思います。

もちろん、他人に迷惑をかけているのに「そのうち成長するんで~」と放置する言い訳にするのは違います。それに命にかかわることは別。道路で走って道に飛び出すとかは大きな声で制止する必要があると思います。

でも、家の中でのことや、命や安全に関わらないことなら「まだ成長してないからしょうがないね」という気持ちを持って接してあげられると、親も子もハッピーじゃないかなと思います。

新刊『骨髄ドナーやりました!』

(少年画報社刊/税別950円)
初代骨髄バンクアンバサダーの俳優・木下ほうかさんも「『ちょっと人の命を助けて来るから!』。こんなカッコいいことを言い放つお母さん。私はこんな最強マンガを待っていました」と絶賛する書籍が発売!! 日本骨髄バンク完全監修の爆笑必至の骨髄ドナー体験マンガです!
夫婦揃って献血が好きで、骨髄ドナーに登録しているさるころとノダD。2人は事実婚・共働きで息子を育てています。夫のノダDは今までに3回骨髄ドナーにマッチングをしていて、3回目で骨髄提供をしました。そんなある日、骨髄バンクから届いた書類をよく見ると、なんと今度は妻のさるころが骨髄ドナーにマッチングしたお知らせでした……! 非血縁ドナーのマッチング確率は数百~数万分の1とも言われており、骨髄ドナーは登録してもマッチングするとは限りません。そんな中、なんと夫婦で2年連続ドナーを体験。そんな激レアなn=2のリアルガチな体験談をあますことなくお届けします! 詳しくはコチラ

著書『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』

(幻冬舎/税込1,100円)
全編書き下ろしエッセイマンガ!
バツイチ同士の事実婚夫婦にめでたく子ども誕生! ここから「家事と育児をどうフェアにシェアしていくか」を描いたコミックエッセイです。家事分担の具体的な方法から、揉めごとあるある、男の高下駄問題、育児はどうしても母親に負担がいってしまうのか、夫のキレにどう対処する? などなど、夫婦関係をぶつかりつつもアップデートしてきた様子を赤裸々に描きます。くわしくはコチラ

著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。