住まいを取得する際には、それに関するすべての費用を算出してください。関連費用が思ったよりかかるとわかります。取得しようと思い立ってから入居までは、いくらか間があるのが普通です。住まいの取得をより安心して進めてもらうために、「住まいが欲しい思ったらすぐに節約に着手」を勧めていますが、総費用の算出はその確かな動機付けになります。

  • 住宅ローンの諸費用、いくら必要?

取得の形によって大きく異なる諸費用

マンションや建売住宅等の購入、住まいの建築、あるいは中古物件の購入などで諸費用に違いが出ます。いくつかの例で計算してみましょう。

新築vs中古

仲介手数料

新築住宅を購入する場合は、売主であるディベロッパー等から購入するので、仲介数料は不要です。中古住宅の場合は仲介業者を通じて斡旋されることが普通なので仲介料が必要です。ただし中古住宅でも不動産業者が直接販売する場合は仲介料不要です。仲介手数料の上限は3%+6万円です。それに消費税がかかります。購入価格を3500万円とすると、以下となる。

→(3500万円×3%+6万円)×1.08≒120万円

消費税

物件価格の内、消費税がかかるのは建物価格の部分です。土地の取引には消費税がかかりません。3500万円の物件価格のうち、建物価格は2000万円、土地価格は1500万円と仮定します。消費税額は以下となる。

→2000万円×8%=160万円

ただし、消費税は個人間の取引にはかかりません。中古住宅の仲介を受けて個人から取得する場合、仲介手数料はかかりますが、消費税は不要となります。中古住宅でも宅地建物取引業者から直接購入する場合は消費税が必要となります。

新築vs建替

マンションや建売住宅を購入するのではなく、建築するケースもあります。それも新しい土地に建築する場合と現在住んでいる住まいを建替える場合があります。建て替える場合は解体費用や2度の引っ越しと借り住まい費用などがかかります。

購入+リフォーム

最近は中古マンション購入と同時にリフォームやリノベーションをするケースも増えてきました。購入資金とリフォーム等の資金を合わせて融資する仕組みも充実してきました。ケースによって様々ですが、契約やローン関係の諸費用は若干増えるでしょう。

諸費用の支払い時期のスケジュール表を作ろう

諸費用の概略がわかったら、支払い計画表を作ってみましょう。諸費用も頭金同様に現金が必要です。手持ち現金を諸費用にするのか頭金にできるのかがはっきりします。諸費用の支払い時期によっては、次のボーナスをあてにできるかもしれません。

馬鹿にならない関連費用の額

住まいの取得に関する関連費用の項目を一覧表にしてみました。本当に多くの項目があり、びっくりすると思います。赤字はマンションや建売住宅購入等の場合に該当する項目です。その他は戸建て住宅を新築する場合の関連費用です。該当すると思われる個所にマークをして、準備ください。ほかにも各家庭の事情による項目があるかもしれません。

また、新しい住まいには家具も新しくしたいものです。手持ちの家具ではサイズが合わなかったり、使い勝手が悪かったり、デザイン的にチグハグになったりする場合もあるかもしれません。新居では友人などを招く機会も多くなります。できれば新しい家具で迎えたいのは当然です。しかし費用は相当掛かります。入居してから資金を貯めて、長く使える良いものをじっくり選ぶことをお勧めします。

ローンの諸費用

融資手数料

定額3万円~5万円程度か融資金額の1%~2%程度の定率方式があります。かなり額が違うと思われるかもしれませんが、一般的に定率方式の金利は安く抑えられていて、定額方式より総支払額が少なくなります。

団体信用生命保険料

金利に組み込まれている場合と、別立てで支払うケースがあります。別立ての場合は、毎年支払うようになります。

保証料

保証料とは、保証人の代わりとなるものです。数千万円の住宅ローンの保証人になる方は身内でもなかなかいません。ほとんどは保証制度を利用します。金利に0.2%程度上乗せする場合や一括支払いのケースがあります。1000万円当たり30年返済で26~27万となり、かなり高額です。諸費用として最も多い金額となると思います。

さらに保証料の制度を利用したとしても、万一の時に返済が免除されるわけではありません。保証会社が債権者に代わるだけです。繰り上げ返済すると差額の保証料は戻ってきます。フラット35のような証券化ローンは保証人も保証料も必要ありません。返済がされなくなるリスクは証券化されたその債券を購入した人が負うからです。

繰上げ返済手数料

当初の諸費用ではありませんが、借入先を選ぶときにはチェックしておきたい項目です。フラット35は繰り上げ返済費用の手数料は必要ありませんが、一般的な住宅ローンは手数料が発生します。一回の繰り上げ返済金額の指定がされているケースもあります。あまり少額の繰り上げ返済だと手数料を考えると、意味のない場合も考えられます。

ネットバンク等は手数料なしで、1万円から繰り上げ返済できるケースもありますので、収入が一定でなく、多い時には少しでも多く繰り上げ返済したいケースには向いています。

火災保険

住宅ローンを借り入れると、火災保険に必ず加入しなければなりません。銀行は担保となる住宅が消失して、債務者が返済に窮する事態は避けなくてはなりません。消失しても債務は残りますので、火災保険は「新価特約」として、保険金額を住宅が再取得できる価格に設定しましょう。

何年契約にするかで、保険金額が変わります。地震保険や家財に関する火災保険・地震保険は任意ですが、いつ来てもおかしくない震災を考えれば、地震保険には是非加入したいものです。

印紙代

借り入れが1000万円を超えて5000万円以下の場合は2万円です。売買契約や請負契約も同様で、5000万円を超えると6万円になります。

住まいの取得と登記の諸費用

住まいの取得や登記にもお金がかかります。現在は居住用の建物や敷地は特例で税率が軽減されています。特例は期限が決められていますので、その時点の法律を確認ください。

不動産取得税

  • 特定の住宅の敷地場合 固定資産税評価額×1/2×3%-所定の控除額(※平成33年3月31日まで)

  • 特定の新築住宅の場合 (固定資産税評価額-1200万円)×3%

  • 中古住宅の場合 (固定資産税評価額-A築年数による数値)×3%

所有権の保存登記

  • 建物の固定資産税評価額×1.5/1000(平成32年3月31日まで)**

所有権の移転登記

  • 土地の固定資産税評価額×15/1000(平成31年3月31日まで)**

  • 建物の固定資産税評価額×3/1000(平成32年3月31日まで)**

抵当権の設定登記

  • 債権金額×1/1000(平成32年3月31日まで)

特定認定長期優良住宅、認定低炭素住宅等の認定住宅は別途優遇措置があります。

※平成30年度の税制改正大綱による改正予定のものです。


取得する住宅には条件があり、また制度は度々改正されますので、詳細は個々に確認ください。

重要なことは全容を把握して、優先順位を決めて、支払う時期のスケジュール表を作成することです。一般に販売業者や住宅メーカーであれば、諸費用の額と必要時期の情報は詳しく教えてくれると思いますので、早めに諸費用の全容を把握しておきましょう。そのうえで、どれを優先するかを判断します。

■ 筆者プロフィール: 佐藤章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。