旧コマ劇場からほど近い歌舞伎町の一角に「射的王」と書かれたお店を発見。いろいろな「王」が歌舞伎町にはいるけれど、「射的王」とは一体……、とのぞいてみると、懐かしさいっぱいの射的の世界が広がっていました。今、ハマる人続出だそうです。しかも、ここ、内定取り消しから誕生したって、どういうこと?

就活&内定取り消しが生みの親?

「実は昨年、内定が取り消されて、このお店を開こうと思い立ったんですよ」。店オープンのきっかけを訊くと、創業メンバーのひとりである村山友紀さんは、はにかみながらそう話しました。射的といえば、お祭りや縁日で見かけるもの。たこ焼きなどをはじめとしたお祭りや縁日で人気の食べ物は、普段の生活にも広まっているのに、射的に代表される遊びだけは普段楽しめないのはどうしてなのか、という思いがあったそうです。

旧コマ劇場から新宿区役所方面へ歩いて2分ほどに「射的王」はある

創業メンバーの村山さん(左)と齋藤さん。今後の店舗の展開も楽しみだ

でも、そう思っても実際に店を立ち上げるというのは、そう簡単なことではないのでは? との問いには、「就職活動をしているときの仲間と一緒に始めたんですよ」との答え。村山さんとともに創業メンバーである齋藤正二郎さんは、就活の場で村山さんと知り合いになり、しだいに仲良くなって村山さんのアイデアに共感、店のオープンへ向けて苦楽をともに分かち合ってきました。「僕の場合、就活は一応していましたが、もともと独立を希望していたんです」と話す齋藤さんに、「そんな人、初めてでしたよ」と村山さんは笑っていました。どうやらすばらしいパートナーに出会えたことも、店のオープンが実現した大きな理由のひとつのようです。

しかし、学生の思いつきで店が始まったわけではなく、さまざまなリサーチをしっかりと行なってきたことも話から窺えます。実は、射的の店はパチンコ店同様の風俗店であるため法的な許可が必要。「射的王」は日本初の法律で許可された射的の店なのです。どうして今までこのような店がなかったのか尋ねると、マーケティングを実施していく中で聞かれたのは「ニッチ過ぎる」との声だったとのこと。でも、そこにスポットを当てて見事命中! したというわけなのです。

シンプルだからハマる。リピーター続出中

「射的は小さなギャンブルのようなもの。ライバルはUFOキャッチャーですが、それよりも断然おもしろいですよ」。齋藤さんは自信を持ってそう言います。

お祭りなどでは、ふつう景品そのものが並んでいて、それを狙いますが、「射的王」では高さ10cmほどのフィギュアが的。それぞれ番号がついていて、同じ番号の景品がもらえるというシステムです。これなら的を撃ち落とす確立は断然アップ。お祭りではよくありますもんね、こんなの絶対落とせないっていうでかい景品。それに比べれば、とっても親切です。

的であるフィギュアは左から右へ動いている。初心者でも比較的簡単に撃ち落せるのが、お祭りの射的とは違うところ

それと弾であるコルクには、パチンコ玉のような鉄玉が入っていて、威力が増すように工夫されています。これも実に親切なはからい、撃ち応え、当たったときの音もいい感じです。なお、弾は6弾400円。とってもリーズナブルではないでしょうか。

弾は「ガラガラ」の機械から購入するシステムとなっている

弾には、鉄玉が埋め込まれているので、コルク弾にはない迫力が味わえる

さて。実際にやってみました。まず何よりも「懐かしい」というのが第一印象。弾をこめて、的のフィギュアを狙います。的はゆっくりと動いているので、最初はギリギリではずれてしまい「チッ」と心の中で舌打ちしますが、まぁ次はいけそう。とにかく、落ちるはずのないプラモの箱を狙い続けたガキのときのお祭りとは違いますから、心穏やかに2発目を発射。はずれ。3発目。はずれ。4発、5発とはずし……、そうそう今回は仕事と思い、インタビュー再開です。

景品はさまざま。ぬいぐるみやおもちゃなどが人気だが、今後もいろいろと取り揃えていく予定

「射的王」がオープンしたのは、今年の4月。口コミなどで広まり、すぐに人気に火がつきました。20代から30代が7割あまりで、サラリーマンなどが中心とのこと。混み合うのは夕方から閉店の23時までです。今は平日で100人から120人、土日祝日は150人くらいのお客さんが1日にやって来ます。今後は、秋葉原などでの店舗展開も視野に入れているとのことでした。

と、そんなこんなで話を終えようとすると、「ぜひ撃ち落としてください」と齋藤さん。まぁ、そうおっしゃるならと銃を構え撃ったものの、またはずれ。すでに、ガキのときのようにメチャクチャ真剣になっている自分に気づきます。そして、狙いをしっかりと、しっかりと定めて……、ボンッと落ちるフィギュア、「おおっ」と叫ぶ齋藤さん、村山さん、そしてワタクシ。「やりましたね」という齋藤さんたちの力強い声に、「やったーっ」と感激している自分がいる……。

「知らないお客さん同士でも、お互いにすごく盛り上がるんですよ」。齋藤さんの言葉、よーくわかります。そして、リピーター率が高いというのも、とても頷けます。射的、おそるべし。シンプルだけど、いやシンプルだからこその楽しさ、感動と言っても大げさじゃありません。「そこまでのものでも……」などと思っている人、とにかく「射的王」に行って、やってみてくださいって。本能、揺さぶられますよ。

村山さんと齋藤さんに遊んでいるところを再現してもらった。見ず知らずの客が射的を通じて仲良くなることも珍しくない

射的王
住所 : 東京都新宿区歌舞伎町1-8-5 第16東京ビル1階
営業時間 : 10時~23時 年中無休