――今年で50歳になられたということですが、この年になってまでお尻を叩かれる芸人人生とは想像されていましたか?

全然思わなかったですよ。僕だって学校で面白いって言われて、19歳でNSC(よしもとの養成所)に入って、テレビの仕事も普通の芸人より早くあって顔も売れたんですけど、「ヘタれ」とか「アホ」とか言われる芸人人生だったんですよ。それがねぇ、若い頃は受け入れられなくて。まだ、「ヘタれ」「アホ」はいいんだけど、「おもんない」だけは、自分の中で咀嚼(そしゃく)できないんです。だって、面白いと思ってこの世界に入ってきたのに、「面白くない」って言われるんですよ? そのとき24~25歳くらいだったんですけど、それが苦しくて苦しくて、1年半くらい苦しんで、もう辞めようと思ったんです。

でも、本当にここで辞めたら、「俺ほんまにおもんないやつで終わってしまうな」って思って。「こんなクソ面白くないことない、ムカつくな」と思って半年くらい考えて、やっと受け入れようってなったんです。それはある種、自分の芸人の魂というのを1回伏せて、その代わりお金もらうぞって。

――切り替えたんですね。

そこから楽になりましたよ。でも、芸人としての僕のキラキラした思いはあるから、それは40歳までフタをして、そこからは“面白くない芸人”というのをやめて、自分の求めていた芸人像を目指すことにしたんです。ちょうどそこでモリマン対決もやめて、落語をやらせてもらうことになったんですよ。

――そうすると、この『笑ってはいけない』での“リアクション芸”というのは、貴重な機会なんですね。

はい、ここだけです。5年前に家族全員で大阪に引っ越して、今の拠点は大阪なんですけど、東京のテレビ局からオファーが来るのは、全部リアクションなんですよ。やっぱりそれが欲しいんですよね。だって、それでやってきたんだし、安心感もあるでしょうから。でも、今は全部断ってるんです。ただ、『ガキの使い』だけは、僕のテレビ史でもあるので、リアクションもやります。「モリマン対決」は、落語で頑張ってきた10年がなくなってしまうから、そこだけは無理ですけど。

  • 蝶野正洋のビンタ会場=『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』DVD&ブルーレイ(発売中)より

――蝶野ビンタはギリギリセーフであると。

のど元まで出かかってるけど、たぶん「ビンタやめてくれ」って言ったら、スタッフの人めっちゃ悲しむと思うんですよ。だから、それは言ったことないです。

――でも、あのビンタがこんなに続くとも思わなかったですよね。

最初の年があって、その次の年はまさか来ると思ってなかったから、かなり粘りましたよ。「ちょっと勘弁してください!」って言って。4~5年目くらいから、「今年もか…」って思うようになりました。

――ここまで恒例になると「体育館に行きます」みたいなことを言われると、「来たか…」って分かるんですか?

分かります。だいたい最後の方なんです。僕、ケガしたら目に見えて心が折れるんですよ。だから、蝶野さんが出てきたときに5人座ってて、他の4人はガヤガヤ言ってるけど、僕だけはずっと下向いてる。それを中盤でやられたらその後に引きずっちゃうから、しっかり後半に組み込まれてます。

■30年でのダウンタウンの変化

――そこも含めて、長いことやっていると信頼関係があるんですね(笑)。ところで、この30年のダウンタウンさんの変化というのは感じますか?

それは変わりましたよ! 昔は尖っててヒリヒリしてたけど、今怖いと思うことはないです。松本さんはあんなに鍛えられてるから、怒ったら怖いかもしれないけど(笑)。今年の『M-1グランプリ』でも、「泣きそうになった」って言ってたでしょ? 昔だったら「俺だったらどうするか、ダウンタウンだったらどうするか」って考えてたと思うんですけど、やっぱり人間やから、年齢が丸くさせるんでしょうね。

  • ダウンタウン

――浜田さんはいかがですか?

もともと優しい方なんですけど、この前、別の浜田さんの番組で、かわいがってるどりあんずをレギュラーにするかどうかという企画があって、奥さんから応援のビデオレターがありますっていうシーンがあったんですね。それを見て、浜田さん号泣して、セットの後ろにバーっと隠れて。俺からしたら見たことのない浜田さんで、もう多重人格じゃないかって思うくらい(笑)。やっぱり年齢ってすごいなと思いましたよ。

――昔から変わらない毒や緊張感もありつつ、ある種丸くなってきた部分もあって、それが今後の『ガキの使い』の魅力になって続いていくんですね。

そうですね。だから、今回の『笑ってはいけない』でも、55歳の等身大の魅力というのが、すごい出てると思いますよ、本当に。

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 大晦日年越しスペシャル! 絶対に笑ってはいけないトレジャーハンター24時!』(日本テレビ系、12月31日18:30~24:30)
    13年目となる今回は、ダウンタウン(松本人志、浜田雅功)、月亭方正、ココリコ(遠藤章造、田中直樹)の5人が、新人トレジャーハンターにふんし、「ヘイポー財団法人お豆考古学研究所」でさまざまな研修を実施。数々の笑いのトラップに笑ってしまうと、お仕置きを受けることになる。

  • 『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時』DVD&ブルーレイ(発売中)
    ダウンタウン、月亭方正、ココリコが、新人アメリカンポリスにふんし、「ヘイポー州立おまめ中央警察署」でさまざまな研修を受ける。