2019年4月30日に幕を下ろす「平成」。マイナビニュースでは、「平成」の中で生み出されたエンタメの軌跡をさまざまなテーマからたどる。この「平成を駆け抜けた番組たち」は、平成の幕開けと同じ時期にスタートし、現在まで30年にわたって続く番組をピックアップ。そのキーマンのインタビューを通して、番組の人気の秘密を探っていく。

第10回は、平成2(1990)年12月にスタートした、フジテレビ系バラエティ特番『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』(今年は、12月24日深夜1:10~3:10)。番組スタート時から、明石家さんまふんする“明石家サンタ”の横でアシスタントを務めてきた八木亜希子に、長年続く同番組、そしてさんまの魅力などを聞いた――。

  • 『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』MCの八木亜希子(写真:マイナビニュース)

    八木亜希子
    1965年生まれ、神奈川県出身。早稲田大学卒業後、88年フジテレビジョンに入社し、同期の有賀さつき、河野景子とともに“花の三人娘”と呼ばれて人気を博す。『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー』のほか、『笑っていいとも!』『さんまのスポーツするぞ!大放送』『めざましテレビ』『スーパーニュース』などを担当し、00年に退社してフリーに。その後、『BSフジLIVE プライムニュース』(BSフジ)、『久米宏のテレビって奴は』(MBS)などで司会を務めたほか、映画『みんなのいえ』で本格的に女優デビューを果たし、『あまちゃん』(NHK)、『カルテット』(TBS)、『黄昏流星群』(フジ)などのドラマにも出演。現在のレギュラー番組は『八木亜希子 LOVE&MELODY』(ニッポン放送)、『八木亜希子のおしゃべりミュージアム』(BSフジ)、『おいしさのカタチ』(BSテレ東)、『八木亜希子 週刊シティプロモーション~ご当地サタデー♪』(J:COM)。
    撮影:蔦野裕

生放送でさんまが遅刻危機

――28年間の放送で不幸話もものすごい数になりますが、特に印象に残っている話はなんですか?

一番印象に残ってるのは、携帯電話が普及し始めた頃で、家の中で電話をかけるとうるさくて怒られるということで、外に出てかけていたら家族に気づかれずに鍵を締められて、イブの夜に寒い思いをしながら電話してますという人ですね(笑)。本当に寒そうで、いろんなシチュエーションでかけてくる人がいるんですよね。「今、彼女と別れてきました」とか「彼氏にフラれました」とか、生々しいことを語ってくれる人も覚えてます。

――生放送ならではのハプニングもありましたよね。

入社9年目のときにフジテレビがお台場に引っ越したんですけど、当時は今以上にすごい観光地で、クリスマスの夜がものすごい渋滞になったんです。それで、「さんまさんが間に合わないかもしれないから、最初八木1人でやることになるかも」と言われて、セットにスタンバイしたこともありました。三宅(恵介ディレクター)さんがレインボーブリッジに自転車で迎えに行くなんて話もしてたけど、結局ギリギリ間に合ったのかな?(笑)

――番号通知が普及し始めて、不合格の人が直接スタジオの電話にかけ直してきたこともありましたよね(笑)

ありました!ありました! こっちの着信履歴が出ちゃってね。平成って電話の進化の歴史なんですよね。私の最初のレギュラーは『笑っていいとも!』のテレフォンアナウンサー(「テレフォンショッキング」でお友達に電話をかける役)だったんですけど、最初は黒電話で“テレ隠し”を使っていたのが、コードレスになって、携帯でかけるようになって。『明石家サンタ』も電話のスタイルがどんどん変わって、「非通知の着信拒否を解除してくださいね」とか、いろんな案内をするようになりました。

三宅恵介氏

――さんまさんとはいろんな番組で共演されていますが、『明石家サンタ』だけで見せる特別な顔ってあったりしますか?

さんまさんはね、いつでもどこにいてもあのまんまで変わらないんですよ(笑)。たぶん、お1人でいるときだけが唯一変わってる姿で、30人いる特番だろうが、ゲスト1人の番組だろうと変わらないんです。そんなさんまさんが発するオーラというか、空気感やテンポを演者もカメラさんもみんなが感じ取って動いていく感じが、特徴的なスタイルだと思います。でも、私は最初の『明石家サンタ』が終わった後、さんまさんが不幸話をする人の電話を途中で切ったり、不合格だと言ったりするのを「かわいそう」だって言ってたんですよ。そしたらその生放送が終わった翌週に、三宅さんから「そんなに良い子に見せたいのか? 目の前の人に冷たく思われても、放送を見てる多くの人が納得すればいいんだよ」と言われて。実は、そういう“多くの人が見てフェアであるべき”というテレビの本質というのを、ニュースではなく、この番組から最初に学んだんですよね。次からは、むしろ私もガンガン電話を切るようになりました(笑)

――さんまさんから受話器を奪い取って切るときもありますよね(笑)

さんまさんは唯一、女の人が相手になるとフェアじゃないときがあるんです。ある時、かわいい声の人が電話してきて、もう全然不幸な感じじゃないのに「そうかぁ、そうかぁ」って話聞いて、「さんちゃん、お願~い」とか言われて全然切らないから、私が奪い取って「すいません、もう時間なので」と言って切ったのが最初だったと思います(笑)

街で「ファンです」と呼びかけられ…

――恒例の「八木さん、ファンです」「どこが?」「別に…」のやり取りは、どうやって生まれたのでしょうか?

あれは本当に自然発生的に生まれたんです。男の人が電話を切られる直前に「八木さん、ファンです」と言ったら、さんまさんが普通に「へぇ、どこが~?」って聞いたんですよ。そしたら、「ファンです」って言うことに対して、まさか「どこが?」って聞かれると思ってなかったみたいで、とっさに「うーん、別に…」って答えたのがさんまさんのツボにハマったんです。それから次にかける人、次にかける人にそのやり取りをやって定番化したんですけど、いまだに視聴者の皆さんがそれを忘れないで続けてくださって(笑)

――街で言われることもありますか?

ありますあります! 突然「八木さん、ファンです」って言われて、「どこが?」って返し忘れて「ありがとうございます」って言っちゃうと、「『どこが?』って聞いてほしかったんです…」って怒られることもあって。で、『明石家サンタ』の放送が終わってすぐのときに「八木さん、ファンです」って言われたことがあって、調子に乗って「どこが?」って返すと、このやり取りを知らない人で「えっと!えっと!」って焦っちゃって…。結構難しいんですよ、あれ(笑)

  • 『明石家サンタの史上最大のクリスマスプレゼントショー2018』(フジテレビ系、12月24日深夜1:10~3:10)
    「今年1年間に身の回りで起こった寂しい話」を募集し、採用された人に“明石家サンタ”が電話。より寂しい出来事を話した人に、豪華プレゼントが当たる。応募はハガキで12月19日(水)消印有効。詳細は、番組ホームページ参照。
    (写真左から)明石家さんま、八木亜希子 (C)フジテレビ

――同じノリで話しかけてくるから、判別できないですよね(笑)。あらためまして、この番組がここまで続いてきた理由は何だと思いますか?

作りがシンプルなことと、毎回相手が変わること、そして、さんまさんのトーク術のすごさを楽しむことができることじゃないですかね。それに、平成の30年間にいろんなことがあって、不幸なことも時代とともに変化していったんです。始まった頃はバブルで浮かれてる人たちの中で、表に出てこない不幸な人にスポットを当てていたのが、不幸事をことさら取り上げて良いのかという時期もあったんですけど、逆にかけてくる人のほうが元気に笑い飛ばしてくれるんですよね。経営破たんした山一證券の人とか、つい昨年も経営危機の東芝の人が電話してきて、社名を出しただけで鐘が鳴る(笑)。つらいことも笑って乗り越えていけるんだということを、私は教えられたなと思いました。

――スキャンダルのあった芸能人の方からの電話は、昔から変わらないですよね。

きっとさんまさんが他の番組で会ったときに「かけてこいやー」ってスカウトしてるんだと思いますよ(笑)。ご本人がかけてきて、それでさんまさんのトークと鐘を鳴らすことで、年末にお清めするみたいな感じですよね。