次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第77回は「マヌルパン」。
「マヌルパン」って何?
2021年はイタリア生まれのスイーツパン「マリトッツォ」が大ヒットしたが、次なるパントレンドとして注目されているのが、韓国生まれの「マヌルパン」だ。ここ数年、「ピンス」(かき氷)や「トゥンカロン」(韓国の大きなマカロン)など、韓国生まれのグルメトレンドが数多く生まれている。
マヌルパンの「マヌル」とは韓国語で「にんにく」の意味。その名のとおり、にんにくを主役にしたパンだ。にんにくのパンというと、ガーリックトーストを思い浮かべる人が多いかもしれないが、まったくの別物。やわらかな丸型のフランスパンをガーリックバター液に浸し、切込みを入れて、クリームチーズを挟んだパンである。香ばしいガーリックの香りに食欲を刺激され、クリームチーズの甘さとガーリックバターの塩気による甘じょっぱい組み合わせにハマる人が続出。ちなみに韓国では甘いクリームチーズが使われるが、日本は甘味を比較的おさえたものが多い。
「マヌルパン」はどこで食べられる?
マヌルパンはパン屋さんで売られているほか、スーパーやコンビニで見かけることもある。大手パンメーカーも続々と開発しており、たとえば山崎製パンでは2021年11月に「ちぎれるマヌルパン」を発売した。
ネーミングのとおり、ちぎって食べやすい横長の形状がユニーク。ふわもち食感のフランスパンにガーリッククリームをしみこませ、チーズクリームをサンドして、彩りにパセリをトッピングしている。香ばしい香りと旨みのあるガーリッククリームが滑らかなチーズクリームとマッチ。後を引く美味しさに仕上がっている。
「ガーリッククリームには、ローストしたガーリックを使用し、ガーリックの風味を引き立てました。また、本場韓国のマヌルパンは、チーズクリームにかなり甘い味わいのものを使用していますが、当社の『ちぎれるマヌルパン』は、日本人の好みに合わせて少し塩味を効かせたチーズクリームを採用しました」とマーケティング部の荻野陽文さん。
売れ行きは好調で、発売1カ月で約60万個を出荷したとのこと。SNSには「チーズとガーリックの組み合わせがおいしい」「トーストするとよりガーリックの風味が引き立つ」など美味しく味わっている声が多数投稿されている。
ユニークなマヌルパンも登場しはじめた。神奈川県・川崎市のベーグル店、ベーグルカンパニーでは、2021年11月23日より「佐世保ジャンボにんにくマヌルベーグル」を販売している。
最大の特長は、ベーグル店らしく、パン生地にベーグルを使っていること。弾力があり、もちもちした食感のベーグル生地のマヌルパンだ。
「もともとは佐世保のジャンボにんにくを使うベーグルを作りたくて試作を繰り返していたところ、お客様から『マヌルパンが好きなのでベーグルで作ってもらえないか』というリクエストを受けて誕生しました」と店主の茶野佐知子さん。
別名オイスターにんにくとも呼ばれる香りのよい佐世保のジャンボにんにくを100%使用。にんにくの香りが生きるように、ベースとなるベーグルは糖分がないリーン(基本材料で作るシンプル)なものを使っているそうだ。にんにくはクリームチーズの中にも、トッピング液の中にも入れており、ダブルで使うことで、風味を際立たせているとのこと。通常のにんにくよりも臭くないため、量を多めに使えるという。たっぷり使ってもどぎつい感じにはならず、食欲を誘うなんともいい香りに。トップにはパセリをふんだんに散らしてあり、これも味わいのアクセントになっている。
販売直後から反響が大きく、「やばい美味しさ」「リピート決定」「優しい甘さですぐに完食」などの声が届いているそうだ。
この他にも、最近はデリバリー専門のマヌルパン専門店なども登場しており、いろいろな場所で購入できるようになっている。
「マヌルパン」を食べてみた!
今回は、横浜・元町に1969年に創業し、いまでは国内に70店舗以上を展開するベーカリー、ポンパドウルの「マヌルパン」を食べてみた。
ポンパドウルではマヌルパンブームを予感し、2021年9月よりマヌルパンを発売。コロナ禍でマスク着用が普通となり、ガーリックを使ったパンも、においを気にせずに楽しみやすい状況になったことも発売を後押ししたという。
店頭に「おいしい召し上がり方」として、「200wで予熱したトースターで1分15秒」と書かれていたので、そのとおりにしてみる。すると、ガーリックバターのいい香りが! 早く食べたくてウズウズしてくる。
食べてみると、パン生地は外はカリッと香ばしく、中はふんわりサクサク。ガーリックバターがしっかり仕込みんでいて、噛むとじゅわりと染み出してくるのがたまらない。ハーブ入りのクリームチーズの適度な旨みと塩味が味わいのアクセントになっている。
「下にカップを敷くことで、溶けたガーリックバターを逃がすことなく、パンを焼き揚げられるため、中はふんわり、外はカリッとした食感をお楽しみいただけます。メディアでの紹介も多く、とても好評です」とポンパドウル広報担当の小泉勝さん。
健康ブームの昨今だが、たまには背徳感があるグルメも悪くない。やみつきになってしまう美味しさで、一度食べればブームにも納得のマヌルパン。ぜひ味わってみては。