次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載では、ビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第66回は「ハードセルツァー」。

  • オリオンビールのハードセルツァー「DOSEE」<ドゥーシー>

「ハードセルツァー」って何?

近ごろ注目度が急上昇しているアルコール飲料「ハードセルツァー」とは、アルコール入り炭酸飲料のこと。フルーツなどのフレーバーが付いており、アルコール度数は2~5%前後と低め。低カロリー、低糖質の商品が多い。

チューハイにも似ているが、チューハイは焼酎など蒸留酒をベースにしているのに対し、ハードセルツァーはさとうきびを発酵させたアルコールなどで作られることが多く、ベースが蒸留酒に限らない。

チューハイのようなお酒がなかったアメリカでは、アルコール度数やカロリーが低いお酒を飲みたいという若者の需要にマッチしたハードセルツァーが、2019年ごろからブームになっている。

日本では数年前までアルコール度数が7~9%と高いストロング系チューハイが人気だったが、最近は若い世代を中心に、低アルコールや低カロリーのお酒を求める人が増えている。そんな声に応えるように、今年になって日本でもハードセルツァーが続々と販売されはじめた。2021年は日本のハードセルツァー元年といってもよさそうだ。

「ハードセルツァー」はどこで飲める?

  • Far Yeast Brewing「Dragon Seltzer」は4種の味を展開。左から黒豆・柚子、クロキイチゴ、柚香・しょうが、きゅうり・スイカ(オープン価格、実売価格363円※編集部調べ/各350ml)

ハードセルツァーは製造方法がビールに近いことから、ビールメーカーの参入も相次いでいる。山梨県のクラフトビールメーカー、Far Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)では、今年3月に香港のブルワリー、Double Haven Brewing(ダブルヘブンブルーイング)とコラボしたハードセルツァー「Dragon Seltzer(ドラゴンセルツァー)」を発売。おしゃれなデザインの缶に気分も上がる!

Double Haven Brewingがハードセルツァーを日本市場へ売り込むにあたり、コラボを打診されたのだという。すでに香港で販売されていたフレーバー「Blackraspberry」(ラズベリーの一種、クロキイチゴ)と「Cucumber Watermelon」(きゅうり・スイカ)に加え、日本オリジナルの「Yuko Ginger」(柚香・しょうが)と「Kuromame Yuzu」(黒豆・柚子)を開発し、計4種のラインナップを展開。香港のメンバーが数回日本を訪れ、共にテイスティングしながらレシピを検討・決定したそうだ。

「アルコール度数が4.5%と低く、フレーバー炭酸水のような軽やかでドライな飲み口で、スッキリ飲めます。普段ビールやチューハイを好んで飲む方はもちろん、低糖質・グルテンフリーなので、健康管理やダイエットの観点からお酒を控えているヘルシー志向の方やコロナの自粛太りが気になる方にもおすすめです」とPR担当の若月香さん。

  • 左から「サッポロ WATER SOUR レモン」「サッポロ WATER SOUR オレンジ」(参考小売価格各155円/350ml)

サッポロビールからは、8月24日にハードセルツァー「サッポロ WATER SOUR」が発売予定だ。フレーバーはレモンとオレンジの2種類だ。

「無糖のシンプルな味わいとアルコール3%の軽い飲み心地で、炭酸水感覚でスッキリ爽快に楽しめる、まったく新しい次世代アルコール飲料です。20-30代の若いお客様に向けて、日常の中でのリフレッシュや、仕事から自分時間へと切り替えるきっかけとなるような、新しい軽やかなお酒の時間をイメージしています」(マーケティング本部ビール&RTD事業部の市川昇平さん)

アメリカのハードセルツァーをヒントに、日本のニーズに合わせて開発。具体的には、ミネラルを調合することにより雑味を軽減し、後味が口に残りにくくする「澄みキレ製法」(特許出願中)を採用し、スッキリとした後味のキレと雑味のない澄んだ味わいの実現を目指したという。どんな味か発売を楽しみに待ちたい。

「ハードセルツァー」を飲んでみた

今回はオリオンビールが今年3月に発売したハードセルツァー「DOSEE<ドゥーシー>」を飲んでみた。定番の味はグレープフルーツ、シークヮーサー、アセロラの3種。このほかに夏限定のパイナップルもある。いずれもさとうきびを醸造したアルコールに、それぞれのフレーバーの果汁や月桃由来エキスなどを加えて作られている。

  • 「DOSEE パイナップル」(左)と「DOSEE グレープフルーツ」(右)(オープン価格、実売価格各221円※編集部調べ/250ml)

まずは夏限定の「DOSEE パイナップル」。色は透明で、生のパイナップルのようなトロピカルな香り! 飲んでみると思った以上にスッキリした味わい。チューハイにありがちな甘ったるさは一切なく、スパークリングウォーター感覚でグビグビ飲める。

続いて「DOSEE グレープフルーツ」。こちらも色は透明で、グレープフルーツのいい香り。グレープフルーツのほのかな苦味とほどよい酸味が心地よく、ドライな後味がクセになる。

  • 「DOSEE シークヮーサー」(左)と「DOSEE アセロラ」(右)(オープン価格、実売価格各221円※編集部調べ/各250ml)

続いて「DOSEE シークヮーサー」。 色はわずかにグリーンがかったイエロー。レモンにも似た、あのシークヮーサー特有の爽やかさを香りでも味でも感じられる。酸っぱいものをおいしく感じられる夏は特に飲みたくなる味だ。

最後は「DOSEE アセロラ」。色は透明。アセロラらしい甘酸っぱさは、女性が好みそうなキュートな味。ほっとひと息つきたいリラックスタイムにぴったりだ。

アルコール度数はすべて2%。後味にちゃんとアルコール感があり、飲み進めていると、ほんのりお酒がまわっていい気分になった。

「沖縄県産ハーブの月桃由来エキスを使用することで低アルコールでありながらも、アルコール飲料として満足感を得られるよう工夫しており、適度な飲みごたえとドライな後味の本格感のあるお酒に仕上げています」とマーケティングコミュニケーション課の崎山茜さん。

沖縄のビール会社とあって、商品名は沖縄方言「どぅし」(友だち)が由来。気の合う友だちと賑やかに楽しく飲んでもらうことをイメージしているそうだ。

新感覚の味わいと心地よいほろ酔い気分が楽しいハードセルツァーは、これからどんどん商品が増えていきそうな気配。いろいろなフレーバーを飲み比べるのも楽しそうだ。