次々に新しい料理や食材などが登場するとあって、『食のトレンド』は刻一刻と移り変わっていく。しかし、クライアントや職場の同僚と「あれ食べた?」という話になることはよくある。そんなときに「……聞いたこともない」というのは、かなりマズい。この連載ではビジネスマンが知っておけば一目おかれる『グルメの新常識』を毎回紹介していく。第25回は「牛とろ丼」。

  • 「牛とろ丼」

    ネギトロ丼のようだが実は牛肉! 「牛とろ丼」

「牛とろ丼」って何?

ローストビーフ丼や牛かつ丼など、牛肉を使った丼は人気だが、ビジネスマンのランチとしても注目を集めているのが「牛とろ丼」だ。温かいご飯に、凍った牛肉フレークをたっぷりとのせ、海苔やネギなどの薬味をトッピングしたものに醤油ベースのタレなどをかけていただく。

牛とろ丼に使われているのは、牛肉の名産地である北海道・十勝で良質な牛肉の生産・加工・販売を行う「十勝スロウフード」の「牛とろフレーク」。牛の健康状態を最重要視し、牛の生態に合わせた牧草中心の飼料で飼育した牛肉を使用。加工は徹底した衛生管理の下、塩漬けなど生ハムと同様の加工を施したのち凍結してフレーク状に粉砕したものだ。

モモやウデ、ロースなどの赤身とバラなどの脂身を適度に混ぜており、基本的には凍ったまま温かいご飯にのせる。健康な牛だからこその濃厚な旨味やコクがあるが、凍っているのでさっぱり食べられて重くないと評判だ。

「牛とろ丼」は十勝の郷土料理として知られ、「牛とろフレーク」をお取り寄せするファンも多い。「近年、東京ドーム主催の『ご当地どんぶり選手権』に2012年から毎年入賞したり、今年の日本最大級のフードフェス『まんパク』でも3連覇、殿堂入りを果たしたこともあり、認知度が全国的に上がっているようです。弊社こだわりの牛とろ専用牛肉のおいしさを味わっていただきたい」と、十勝スロウフード 代表取締役 藤田惠さん。北海道だけでなく、最近は都内でも牛とろ丼が楽しめるようになって話題だ。

「牛とろ丼」はどこで食べられる?

都内では、「円らくグループ」系列店のうち次の10店舗で牛とろフレークを使ったメニューを提供している。肉料理を楽しめる「円らく」(中野など3店舗)や「ジンギスカン楽太郎」(新橋など5店舗)のほか、「京風おでん でんらく」(恵比寿本店・蒲田)、「かるびあーの 新橋本店」、「ジンギスカン らむすけ」(北千住)、「たれ山」(高田馬場)、「塩ホルモン さとう」(中野)。さらに、東京・大井町の居酒屋「濱田」、東京・銀座のお取り寄せダイニング「十勝屋」などでも、牛とろ丼が提供されている。

地方だと、宮城・仙台にある牛たん炭焼き「利久 本町店」でも食べることができ、今後、全国的に牛とろ丼が食べられる店が増えてくるのかもしれない。

  • 十勝スロウフード「牛とろフレーク」(1カップ200g入り/2,484円)

ちなみに十勝スロウフードのオンラインショップでは牛とろフレークが販売されているので、自宅に取り寄せ自分で牛とろ丼を作ってみることもできる。

牛とろ丼の作り方は簡単。「アツアツご飯に凍ったままの牛とろフレークをかけ、ネギや刻み海苔などをお好みでトッピングすればできあがり。専用のタレかわさび醤油をかけて召し上がってください。ご飯茶わん1杯(ご飯約150g)に牛とろフレーク20~30gが目安です」(藤田さん)。牛とろフレークのカップ(写真上)1つで7~10杯程度の牛とろ丼が楽しめる。藤田さんによると、寿司飯に刺身と一緒に盛りつけて豪華な牛とろ海鮮丼にするなど、アレンジも簡単とのこと。

「牛とろ丼」を食べてみた!

お取り寄せダイニング「十勝屋」では「牛とろ丼」(1,100円、ミニサイズは660円)を提供している。お店がオープンした14年前から提供しているが、「最近、牛とろのメディア取材が増えてきました」と話すのはグリーンストーリープラスの代表取締役 林真由さん。リピーターが多いが、たまに知らないで注文したお客が凍った牛肉に驚くこともあるという。

  • 「十勝屋」の「牛とろ丼」。真ん中には十勝産の山わさび(ホースラデッシュ)

さっそく注文してみると、「醤油をかけたら、よくかき混ぜてから召し上がってください。牛肉の脂身がトロリと溶けかけたときがおいしいので」とスタッフが説明しながら提供してくれた。言われた通り、よくかき混ぜてから食べると、最初は凍っていた牛とろフレークがご飯の温かさであっという間に常温近くまで溶けてきて美味しくなる。

口の中には牛肉の旨味と山わさびの風味が贅沢に広がる。口に含んでからも肉の急速解凍は進んでいるようで、噛めば噛むほど牛肉の旨味がどんどん増してくる。すぐには飲み込まずに、よく噛んで変化する旨味をよく味わうとより楽しい。

牛肉なのに重くないので、年配の方でも楽しめそうな丼だ。北海道は豚丼も有名だが、豚丼が重いという方にはこちらがおすすめかも。ちなみに地元では牛とろのパスタや、牛とろうどん、牛とろの軍艦巻きなども見られるという。

  • 最初は凍って白っぽかった牛肉は、次第に溶けて赤色に

「牛とろフレークは凍っていますのでテイクアウトなどができず、北海道のお土産商品としてもほとんど売られておりません。それが他のご当地丼と違う点。お店で味わうか、牛とろフレークをお取り寄せして自分で作らないと食べられない、関東ではとても貴重な丼となっています」と林さん。

牛"とろ"丼というぐらいだから、大トロ並みに濃厚旨味系のどっしりと重い丼かと想像していたが、冷たいからか、細かいフレーク状だからか、とても食べやすく意外に軽かった。話題の牛とろ丼はガッツリ系丼ではないので注意したい。急速解凍される牛とろフレークの旨味が七変化する味わい系丼である。

※価格は全て税込