7月10日の投開票が決定した参院選。民意を反映させる重要な機会だが、社会科の授業を離れてから幾年月、国政選挙にまつわる単語や仕組みについて実はあまりよくわかっていないという人も少なくないはず。

そこでマイナビニュース読者のアンケートであがった参議院や選挙に関するギモンについて、全5回にわたって名古屋大学の斎藤一久教授に回答・解説してもらった。連載最後となる5回目は、なぜ開票率数パーセントでも"当選確実"という結果がわかるのか? という素朴なギモンについて考えていく。

  • 参議院や選挙に関するギモンについて、全5回にわたって名古屋大学の斎藤一久教授に回答・解説してもらった

■開票率数パーセントでも当確がわかる仕組みとは?

――不思議なのですが、開票前や開票率数%パーセントという状態で、なぜ当選確実とわかるのでしょうか?

当確を出すためには、いくつかの情報をかけあわせて出していると言われており、1つは事前取材をして、情勢を調査します。次に、電話にかかってくる「世論調査」でどこの政党を支持しているかなどを調べます。また、投票所を出たところでアルバイトの人などが張り付いていて、「どこに投票されましたか?」みたいに尋ねる、出口調査を行います。

それらの調査に加え、開票所にマスコミ関係者が出向き、積み上がっている票を目視で見て、実際にどこの政党や候補者に票が集まっているのかということも確認。集めた情報を踏まえて、マスコミ各社が独自の経験則や傾向、方法論を加味して、当確予想というものを出しています。ただ、各社の経験則やデータの細かい算出方法などは企業秘密のため、私も知ることはできません。

それゆえ、激戦が予想されるようなところはすぐには当確は出しませんね。

――それでいくと、確実ではないこともあるんですよね? 間違った発表をしてしまうことはないのですか。

そのようなことがないように各メディアは慎重にジャッジをして発表していると思います。ですが、あくまで当確の報道は各メディアの判断なので、過去に読み間違えたことも実際にあります。端数で結果が変わってくるような拮抗(きっこう)している場面では、間違えることもあります。

――なかなか当確と言えないシチュエーションはあるのでしょうか?

衆院選における比例代表制の計算は時間がかかるので、結果予測がしづらい傾向にありますね。過去には衆議院の選挙区選で150票差で当落が分かれた、なんてこともあります。ちなみに、激戦になると0時を回っても結果が出ないこともありますね。

一方で参院選の場合、選挙区が都道府県と大きいので、"ギリギリまでわからない"ということはあまりないですね。

――ちなみにリアルタイムの選挙特番って、海外でもやっていたりするのでしょうか?

特番はやっています。ですが、アメリカみたいに国内で時差があると、日本ほどすぐに結果は出せないんです。一方で、日本は時差がないので、選挙も同じ時間で行うことが可能です。そのため開票結果が比較的早めにわかり、当確も出しやすいと言えるでしょう。

ただ、速報性も大事ですが、コストなどを考えるとどれほどスピーディーに開票作業をする必要があるのかは今一度考えてみてもいいかもしれません。個人的には、翌日でも良いなと思ってしまうことがありますね。


意外と尋ねられたら答えにくい「選挙のギモン」。ぜひ、記事を参考にギモンを解消していってほしい。

監修者 : 斎藤 一久(さいとう かずひさ)


斎藤一久

名古屋大学法科大学院教授。1972年、新潟県に生まれる。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程退学後、東京学芸大学准教授を経て、現職。その間、フランクフルト大学客員研究員、テキサス大学ロースクール客員研究員。専門は憲法学・教育法学。大学院では主として裁判官、検察官、弁護士などの法律家を目指す学生を指導しているが、高校生、大学生、一般人向けに憲法や選挙についての著書も執筆している。著書に『高校生のための選挙入門』『高校生のための憲法入門』(すべて三省堂)、『図録日本国憲法〔第2版〕』『教職課程のための憲法入門〔第2版〕』(すべて弘文堂)、『教職のための憲法』(ミネルヴァ書房)など、翻訳書に『憲法パトリオティズム』(法政大学出版局)などがある。


図録日本国憲法〔第2版〕

『図録日本国憲法〔第2版〕』
400点にせまる写真・図解で、教科書の行間に広がる豊かな憲法の世界を実感できる、新しいタイプの憲法教材。