根室本線は函館本線滝川駅を起点とし、富良野駅、新得駅、帯広駅、釧路駅を経由して根室駅に至る。営業キロ443.8kmの長い路線で、道央と道東を結ぶ幹線として重要だった。もっとも、1981年に石勝線が開業してからは、札幌と帯広・釧路を結ぶ特急列車や貨物列車が石勝線経由となった。現在は滝川~新得間、新得~釧路間、釧路~根室間の各区間で役割が異なっている。列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」でダイヤを表示すると、大きく3つに分かれている様子がよくわかる。

根室本線列車ダイヤ(2015年10月)

赤い線が特急列車、緑色の線が快速列車、黒の実線が普通列車、黒の点線は貨物列車だ。特急列車と快速列車は停車駅に印を表示した。

貨物列車の時刻表は正確ではない。参考までと考えてほしい。「2015貨物時刻表」を参照したけれど、発着時刻の情報が少なかった。今回は滝川駅・富良野駅・帯広駅・音別駅・新富士駅(釧路貨物ターミナル)の数値を入力し、新得~帯広間は普通列車の速度を参考に所要時間を1時間と見積もった。他にも、帯広駅を5時台に発車する釧路行は、途中で長時間停車しているはずだ。根室本線は全線単線だから、途中駅ですれ違ったり、特急列車に追い越されたりするための待避設備もある。しかし情報不足で反映できていない。

「帯広駅」というけれど、列車ダイヤを見たら「どこだ?」と思うかもしれない。長大路線の24時間を圧縮したため、たしかに駅名が見にくい。しかし、列車の運行をなぞればわかる。たとえば特急列車は新得駅から釧路駅まで走っている。正確には新得駅ではなく、その少し手前、石勝線と根室本線が合流する上落合信号場から釧路駅までが特急列車の運行区間。時刻表では上落合信号場の時刻がわからないので、新得駅から表示している。

根室本線の特急列車には2系統ある。札幌~帯広間の「スーパーとかち」と、札幌~釧路間の「スーパーおおぞら」だ。つまり、長いほうの赤い線が「スーパーおおぞら」で、描かれている区間の上が新得駅、下が釧路駅。そして「スーパーとかち」は短いほうの赤い線。これで帯広駅の位置がわかる。

特急列車の運転区間は赤い線が目立つから、根室本線は全体的に3つに分かれたように見える。滝川~新得間はローカル線。釧路~根室間もローカル線で、「花咲線」という愛称がある。花咲線は駅の廃止や列車の減便に関する報道が続いている。それでも、先週は超閑散路線の三江線を見たから、意外と列車が多いなと思うかもしれない。地方路線のダイヤを見ると、「この程度の本数で足りるのか。こういう路線が全国にあるなら、やっぱり東京や大阪のラッシュダイヤのほうが少数派だな」なんて思える。

路線全体としては3分割だけど、普通列車の数に注目すると、主要駅の存在が見えてくる。たとえば釧路駅付近。白糠~釧路~厚床間の列車の数が多い。この区間が釧路市の生活圏だ。同じく帯広付近も、芽室~帯広~池田間の列車の数が多い。このあたりが帯広市の生活圏といえる。滝川~富良野間も列車が多い。滝川市の生活圏であると同時に、富良野という人気の観光地にアクセスする列車といえる。

その他の区間は閑散としている。新得~釧路間は特急列車が走ってにぎやかに見えるけれど、その中の浦幌~白糠間は3時間以上も普通列車が走らない空白時間帯がある。富良野~新得間も同様だ。

その閑散区間を通じて、滝川駅から釧路駅まで走り抜ける普通列車がある。日本最長鈍行として鉄道ファンに有名な2429Dだ。「2429D」とは列車番号で、すべての列車に付けられ、列車ダイヤの表記など業務用に使われている。時刻表にも掲載されているから、愛称がない列車の場合は列車番号で呼ぶというわけだ。

日本最長鈍行2429Dを青くしてみた

2429Dをわかりやすくするために、青い線で強調してみた。滝川駅を9時36分に発車して、釧路駅に18時3分に到着する。滝川駅から列車の線をなぞってみよう。富良野駅で長時間停車する。これは滝川駅からの2両編成のうち、1両を切り離すためだ。次の長時間停車は落合駅で、上り列車のすれ違いを待つ。帯広駅では特急「スーパーおおぞら5号」に道を譲り、幕別駅・尺別駅で上り「スーパーおおぞら」とすれ違う。

その中間の浦幌~上厚内間で貨物列車とすれ違う。駅間だけど、ここには常豊信号場というすれ違い設備がある。根室本線には10カ所の信号場がある。ダイヤを作れば、列車の線の交差するところで、その存在が浮かび上がるというわけだ。

最長距離鈍行2429Dの乗り通しにチャレンジするなら、このような列車ダイヤを作ってプリントして持っていこう。いつ、どんな列車とすれ違い、特急列車に追い越されるか、すぐにわかる。長距離列車だとダイヤが乱れる場合もある。そのときは予定された場所とは違う駅ですれ違うこともある。それはどこかと推理しても楽しい。

ところで、前述したように、JR北海道で普通列車の減便報道が続いている。花咲線だけでも8本減便されるという。おもな原因は使用車両キハ40系の老朽化とのこと。普通2429Dもキハ40系で運行されているし、他の区間にも減便はあるかもしれない。先日発表された冬の臨時列車の概要を見ても、前年比の半分くらいだろうか? とても少ない。JR北海道は大変な状況だ。最終結果は2016年3月のダイヤ改正までわからないけれど、どうか2429Dが日本最長鈍行として残りますように……。