「いい人」をやめられない。嫌われたくなくて本音が言えない。SNSを見て嫉妬してしまう自分がイヤ――そんなモヤモヤした気持ちをノートに書き出し、自分の本音と向き合う「デトックス・ジャーナリング」が注目されています。
『感情を手放してラクになる デトックス・ジャーナリング』(日本文芸社)から、一部を再編集してお届けします。
生成AIを使ったジャーナリング
ここまで、スマホからの「入力」とはなるべく距離を置き、ノートとペンでジャーナリングをする方法をご紹介してきました。ですが、ここではもうひとつの方法としてChatGPTなどの生成AI(以下AI)を活用した「デジタル・ジャーナリング」についてお話ししていきます。
もしも今、あなたが「疲れ切っていて指1本動かすのも億劫」「頭が働かず、文字を読むのもつらい」と感じているなら、AIを使ったジャーナリングは絶対に禁止です。
なぜなら、AIとの対話では、あなたが投げかけた言葉に対して、即座に文字が返ってくるからです。弱っている脳にとって、文字を読むという行為は大きな負担になります。
さらに、AIが次々に提案してくるアドバイスや正論は、エネルギーが枯渇しているときには指示や命令のように感じられ、あなたを追い詰める凶器になりかねません。
エネルギーが空っぽのときは、デジタル機器をすべて手放し、ただ眠るか、ぼんやりするか、紙にぐちゃぐちゃな線を引く「アナログな出力」に徹してください。
AIを使うのは、ある程度「言葉にする気力」が残っているときだけだと心得ておきましょう。
「アドバイスは不要」と伝えて感情を吐き出そう
では、気力があるときに、どのようにAIを使えばよいのでしょうか。最大のメリットは、AIが「人間ではない」ということです。
人間相手だとどうしても発生してしまう遠慮や体裁、そしてしがらみや評価、批判される不安などが、AI には一切ありません。
「誰かに話を聞いてほしいけれど、相手にどう思われるか気になって疲れてしまう」 「アドバイスはいらない。ただ、このモヤモヤを受け止めてほしいだけ」
そんなときにAIに感情を吐き出すことで、気持ちをラクにすることができます。
プロンプト(指示出し)のコツは、最初にあなたの要望を明確に伝えること。例えば、「今から私が愚痴を言います。アドバイスや解決策は絶対に言わないでください。ただ『それは大変でしたね』とだけ共感して返事をください」と指示を出し、あなたは誰にも言えないむき出しの本音やドロドロした感情をスマホに打ち込むだけでいいのです。
返ってくる「大変でしたね」という無機質ながらも肯定的な言葉は、意外なほど心を落ち着かせてくれます。
ただAIを使ったジャーナリングの落とし穴は、「終わりのない会話」になりがちなことです。AIは疲れることなく、永遠に返事をし続けてくれます。これでは「SNS疲れ」と同じく、脳疲労を起こしてしまいます。そのため、「やりとりは3往復まで」「5分間だけ」という制限を設けるようにしましょう。
まとまらない感情もAI がまとめてくれる
AIには感情(喜びや怒り)も道徳心(良心や罪悪感)もありません。あなたがどれほど理不尽な怒りをぶつけても弱音を吐いても、決してあなたを軽蔑したり説教したりすることはありません。
また、自分でもどうしてよいかわからないモヤモヤした気持ちやごちゃごちゃした考えを、理路整然とまとめるのもAIの得意とするところです。
ちょっとした時間にできる気分転換のつもりで、AIとの対話をしてみましょう。
●モヤモヤした気持ちを代弁してもらう
頭に浮かんだ単語を思いのままに打ち込むだけでOK。「疲れた」「ムカつく」「もう嫌だ」「消えたい」など、脈絡がなくて構いません。最後に一言、「これらの単語をつなげて、私の今の気持ちを代弁してください」とお願いしてみてください。
●悩みを整理してもらう
思考が混乱して何が悩みなのかわからないときは、「今から思いついたことをバラバラに書きます。書き終わったら、私が何に一番悩んでいるのか、要点を3つにまとめてください」と頼みます。支離滅裂な文章でも、AIは感情的にならず、論理的にあなたの思考を整理してくれます。AIの答えを、「ああ、私はこれが嫌だったのか」と、自分の本音を客観視するために使うのです。
●励ましの言葉をかけてもらう
自分を責めてしまって苦しいときや頼れる人がいないときは、「私は今、すごく落ち込んでいます。とにかく私を励まして、優しい言葉をかけてください」と打ち込んでみてください。AIは驚くほど温かい言葉を返してくれます。
「生きているだけでえらい」「今日はゆっくり休んでいいんだよ」などといった言葉が画面に現れると、視覚情報として脳に入り、こわばった心を緩めてくれます。
●「安全なゴミ箱」になってもらう
イライラや怒りが収まらないけれど、それを人に向けるわけにはいかないときは、AIを「安全なゴミ箱」として使いましょう。「今から怒りを吐き出します。絶対に解決策や正論は言わないで共感だけしてください」と打ち込んでみてください。AIは静かにそれを受け止めて肯定してくれます。
最後に「この会話を忘れて」と指示してリセット
AIは文脈を読み取り、「いろいろと重なって心身ともに限界を感じているのですね。すべてを投げ出したくなるほど疲れ切っているようですね」といった具合に、あなたの混沌とした内面を文章化してくれます。
それを読んで、「私はこういう状態だったんだ」と客観的に認識するだけで、不思議と脳の混乱は鎮まります。
また、最後に「この会話も忘れてください」と会話をリセットすれば、あなたの黒い感情はデジタルの彼方に消え去ります。そして、頭の中を占領していた思考もふっと軽くなるでしょう。
疲れているときは、ただ「受け止めてもらう」ことに徹してください。少しでも「画面を見るのがつらい」「文字を読むのがしんどい」と感じたら、即座にスマホを閉じてください。
AIにより、「否定されず受け止めてもらえた」という事実(体験)が、脳の混乱を鎮めるために重要なのです。最新のテクノロジーを、情報を得るためではなく、「自分の心を軽くするため」に使ってみてください。
『感情を手放してラクになる デトックス・ジャーナリング』(日本文芸社)
著者:長沼睦雄(十勝むつみのクリニック院長)
精神科医として多くの悩みに向き合ってきた著者が、「いい人をやめられない」「SNSで他人と比べてしまう」「理由もなく疲れてしまう」といった現代人の生きづらさを解説。話題の「ジャーナリング」を通じて、自分の本音を見つけ、心のモヤモヤを手放す方法を紹介します。
怒りや不安との付き合い方、自分軸の育て方、生成AIを活用した新しいジャーナリング術まで収録。毎日を少しラクにしたい人におすすめの一冊です。

