近年、「食い尽くし系」という言葉がよく聞かれるようになりました。SNSを中心に、「うちにもいる」「夫がまさにこれ」など、“食い尽くし系”に困らされてきた人たちの共感の声が、次々と共有されています。

食い尽くし系は、なぜこんなに一気に広く知られるようになるほどの共感を集めたのでしょうか。「食い尽くし系」体験をもとにした人気マンガ連載『身近な“食い尽くし系”生態記』(みつほし・画)をもとに、臨床心理士の視点から、このタイプの行動原理を読み解いていきます。

■「食い尽くし系」と名前がついて救われた人たち

以前は、周囲の都合を考えず食べてしまう行為や、それによって怒りや困惑などを感じることは、“個人的な問題や体験”ととらえる人が多かったと推察されます。それが、「食い尽くし系」という言葉が登場したことで、名前がつけられるほど類型化可能な現象として認識されるようになったことも、その広がりを後押ししたと考えられます。

「気にしすぎじゃない?」と軽く扱われたり、食い尽くされる側自身でも「こんなことで不快になる私に問題があるのだろうか」と思わされてきた出来事が、同じ体験をしている人が少なからずいる共通の現象なのだと知ることは、「このことで困っているのは自分だけではなかった」と救われた感覚などを引き起こします。

体験や事象に名前がついたことによって、これまで抱えてきたモヤモヤが言語化された納得感を得られた李、率直な気持ちを否定されることなく安心して表出できるようになったことが、「食い尽くし系」が広まった一要因と考えられます。

■「食い尽くし系」の被害エピソード

  • イラスト/みつほし『身近な“食い尽くし系”生態記』より

    イラスト/みつほし『身近な“食い尽くし系”生態記』より

今日もまた夫にデザートを食い尽くされた……。「全部ケーキの味が違うんだし、しょうがないじゃん?」とシレっと開き直る夫には、何度も「みんなで食べる用だから」と諭しても全く響かない。憂さ晴らしにSNSに愚痴を書き込んだところ……(※『身近な食い尽くし系生態記29話より』)

✅夫からの“食い尽くし被害”の愚痴コメントが共感を呼んだ結果……続きは漫画で読む

■SNSで「わかる…」が連鎖する理由

直接の知り合いには話せないことでも、SNSなら言いやすいものです。日頃言いにくいからこそ、日常の小さな違和感や不満が多くの人と共有されやすい環境が、SNSにはあります。中でも「身近で起こりやすいトラブル」は共感を集めやすく、「食い尽くし系」はまさにそんなテーマだと言えます。

一般的にネガティブなものと捉えられがちな怒りや不満はただでさえ表出しにくいものですが、それが個人的な問題だと思われる場合、ますます口にしづらく、一人で抱えてしまいがちです。つらい感情を誰とも共有できないととても苦しいですから、その分、同じ体験をしている人が見つかった時の喜びや共感も強まります。

共感によってつらさが軽減されるなど、良い影響ももちろんありますが、自分の体験と似たエピソードに感情移入しすぎると、客観的な判断が弱くなったり、少しでも異なる部分があると過剰に否定的な気持ちがわいたりすることもあり、その点には注意が必要です。

■SNSで共有することで気持ちが整理されることも

「食い尽くし系」という言葉が広まったのは、SNSによって日常の体験が共有されやすくなった背景があることをお話してきました。食い尽くし系やそれによって周囲の人が感じる困惑は、誰にとっても身近な人間関係の中で起こりうる出来事で、簡単に解決できないケースも多いものです。

困り果てている体験を言葉にして、同じような思いをしている人と共有することは、気持ちを整理する助けになる場合も少なくありません。そんな形でSNSの力も借りつつ、食い尽くし行動の背景にある心理を理解し的確な伝え方を試みることで、食い尽くし行動の軽減やよりよい関係づくりの一助となりますように。

\他人の食べ物まで食べ尽くす…/「 食い尽くし系」の実態とは!? ✅『身近な「食い尽くし系」生態記』全話を一気読み