ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。
本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。
今回のテーマは、「今さらちょっと聞きにくいけど、コンセンサスアルゴリズムってなに?」。
コンセンサスアルゴリズムとは
仮想通貨の用語って、カタカナが多いのでわかりにくいですよね。
「トランザクション」は「取引」 「マイニング」は「承認作業」 「マイナー」は「承認作業者」
カタカナのせいで、どれも難しく感じられるかもしれませんが、本連載ではなるべくわかりやすくお伝えしたいと思います。
「コンセンサスアルゴリズム」は、仮想通貨を実用する上でとても重要な技術です。
コンセンサスアルゴリズムとは、ブロックチェーンに新しいブロックを追加する際に行われる承認作業を"合意形成(コンセンサス)"するための"方法(アルゴリズム)"のことです。
ちなみに、ブロックチェーンのブロックというのは、仮想通貨における取引記録のかたまりのことです。
例えば、ビットコインの場合。
取引の記録は、承認作業によって成り立っています。複数の承認作業者が同時に計算(暗号の解読)を行い、データを検証して取引の処理が行われると、チェーンに新規ブロックが追加されビットコインの送金(送信)が完了します。
このとき、承認作業者毎に計算処理の答えが変わってしまうことがままあります。
複数の承認作業者の答えが一致しなかったとき、どの答えが正しいのかを選択する必要があります。しかし、ユーザーすべてに「どの承認作業者が正しいですか?」と聞いて回ることはできませんよね。
そのため、ビットコインの送金処理のスピードを保つためにも、正しい答えを自動で決めるシステムが必要になります。
そこで生まれたのが、コンセンサスアルゴリズムというシステムです。
ビットコインでは、複数の承認作業者のなかで、「もっとも速く計算を行えた承認作業者が正しい」というシステム(ルール)をつくりました。中央管理者を持たず、取引データの検証をユーザー自身が行わなければならないブロックチェーン技術において、重要なシステムだといえますね。
コンセンサスアルゴリズムがあることで、複数の情報管理者がいる状況下でも、データの改ざんや不正がなく、正しく取引が承認されるというわけです。
コンセンサスアルゴリズムにはどんな種類があるの?
コンセンサスアルゴリズムの種類は、一種類ではありません。
・プルーフオブワーク(PoW)
・プルーフオブステーク(PoS)
・プルーフオブインポータンス(PoI)
・プルーフオブコンセンサス(PoC)
などの種類があります。
プルーフオブワーク(PoW)とは
プルーフオブワークは、ビットコインをはじめとするさまざまな仮想通貨で使われているアルゴリズムです。
ビットコインでは、承認作業者がブロックの追加作業を行います。承認作業者たちは、専用のコンピューターを使って「すぐには解けない難しい計算問題」に取り組んでいます。
いち早くその問題を解いた承認作業者には、新規ブロックを追加する承認権と、新規コインを受け取る権利が与えられます。「もっとも仕事をした人に権利を与える」のが、プルーフオブワークの特徴です。
前述のとおり、ビットコインでは「もっとも速く計算を行えた承認作業者が正しい」というシステム(ルール)が採用されています。そのため、承認作業者たちは、より高性能なコンピューターで承認作業をしています。
これによって、マイニングマシンと呼ばれるコンピューターが多くつくられ、日々多くの電力が消費されています。つまり、「ビットコインはエコではない」ということになりますね。これは、ビットコインが抱えている問題のひとつです。
プルーフオブステーク(PoS)とは
プルーフオブステークは、電力を使用しないコンセンサスアルゴリズムで、ブロックの承認権はコインの保有量によって決められます。
前述したプルーフオブワークで発生している以下の問題を解消できると注目されています。
・承認作業の中央集権化
・承認作業者とホルダーの利害の相違
・承認遅延による取引手数料や承認作業による電力消費量の拡大
一見素晴らしい仕組みなのですが、プルーフオブステークにも問題はあります。
コインの保有量が多ければ多いほど承認権を得られる確率が上がるため、コインが市場に流通しづらくなってしまうのです。
コインの流動性が低下することで、そのコインの価値も下がるかもしれません。また、コインを多く保有できるだけの経済力があるユーザーが有利となり、フェアではありません。
プルーフオブインポータンス(PoI)とは
プルーフオブインポータンスは、仮想通貨のネム(NEM)が採用しているコンセンサスアルゴリズムです。
コインの保有量、取引回数、取引量など複数の指標から重要度スコアを作成し、ブロック生成者を決定する仕組みになっています。重要度スコアが高ければ高いほど、新規ブロックの承認権を与えられる確率が高くなります。
プルーフオブステークの問題である流動性の低さを改善したとされていますが、経済的な平等性については完全に担保されているわけではありません。
プルーフオブコンセンサス(PoC)とは
プルーフオブコンセンサスは、「特定の参加者が新規ブロックの承認権を得る」というコンセンサスアルゴリズムです。不特定多数ではなく、決まった人だけが承認作業を行うことができます。
そのため、承認スピードがとても速いという特徴があります。これは、ブロックチェーン技術における非中央集権的な特徴を完全に無視したコンセンサスアルゴリズムです。
このコンセンサスアルゴリズムを採用しているのは、中央集権的に運営会社が存在しているリップル(XRP)です。中央集権的なコンセンサスアルゴリズムのため、承認作業の透明性が低いというデメリットがあります。リップル(XRP)をベースに開発されたフュージョンコイン(XFC)も、プルーフオブコンセンサスを採用しています。
主要なコインのコンセンサスアルゴリズムと、その問題点は?
■ビットコイン/プルーフオブワークを採用
プルーフオブワークの問題点は、電力消費量が大きいことです。現在では、「マイニングファーム」と呼ばれる、承認作業を行うためだけに存在する組織まで生まれてしまいました。この組織による承認作業の寡占も、ビットコインの大きな問題点となっています。
一般の承認作業者に承認権が与えられず、一部の承認作業者たちが承認作業を寡占することで、ビットコインも中央集権的になってしまう可能性があります。
■イーサリアム/プルーフオブワークからプルーフオブステークに移行
イーサリアムは、2019年3月1日に予定されていたハードフォークが完了しました。これにより、コンセンサスアルゴリズムをプルーフオブワークからプルーフオブステークに移行する手続きが進められていきます。
プルーフオブステークに移行することで、プルーフオブワークが持つ問題点を解決できるでしょう。しかし、前述のとおりプルーフオブステークにも問題点は残ります。
■リップル(XRP)/プルーフオブコンセンサスを採用
リップル(XRP)は、リップル社が多くのコインを保有していることから、中央集権的なコインといわれています。今後、リップル(XRP)が非中央集権化を目指していくなかで、中央集権的なコンセンサスアルゴリズムは不安要素となる可能性があります。
コンセンサスアルゴリズムは、中央管理者を持たないブロックチェーン技術において、とても重要な仕組みです。コンセンサスアルゴリズムがあることで、不正のない、安全な取引が行われています。
「取引データを承認し、新しくブロックをつくるときに必要なもの」と覚えておいてください。
次回は、「仮想通貨には投機の要素も必要?」についてご紹介します。
執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)
1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。