ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「仮想通貨取引所と仮想通貨銀行って何が違うの?」。

仮想通貨取引所とは?

仮想通貨取引所とは、ユーザー同士が仮想通貨の売買を行うプラットフォームのことです。マッチングサイトと言い換えても良いでしょう。

日本の仮想通貨取引所は、「仮想通貨交換業者」と呼ばれ、ライセンスを得るためには金融庁の認可が必要です。2019年9月時点では、以下の企業が仮想通貨交換業者として金融庁に登録されています。

テックビューロ マネーパートナーズ ビットポイントジャパン
ディーカレット bitFlyer DMM Bitcoin
TaoTao LVC ビットバンク
楽天ウォレット QUOINE フィスコ仮想通貨取引所
SBI VCトレード Bitgate GMOコイン
BITOCEAN Xtheta フォビジャパン
コインチェック BTCボックス

「取引所」と表すと、証券取引所のような権威と信頼のあるものと捉えてしまうかもしれませんが、仮想通貨という存在自体がまだまだ草創期にありますから、「どのような規制や管理が必要か、手探り状態」というのが実態でしょう。

日本のように金融庁の認可が必要という国の方がまだ少なく、規制がない国も多くあります。そのような国では、「マッチングサイトさえ作れば、だれでも仮想通貨取引所を始められる」というのが実情です。その仮想通貨取引所が信頼できるかどうかは、投資する私たち自身で判断しなければなりません。

また、「仮想通貨取引所で扱われているコインだから安心」というのも幻想です。「仮想通貨取引所に手数料さえ支払えば、どんなコインでも取引所で扱ってもらえる(上場できる)」という取引所もあります。結局は、仮想通貨取引所が信用できるかどうかも、特定の仮想通貨が信用できるかどうかも、自分自身で確かめる必要があります。

仮想通貨銀行とは?

一方仮想通貨銀行とは、26回33回45回の記事でご紹介した「フュージョンバンク」(FUSION BANK)のように、仮想通貨と法定通貨を取り扱う新しいタイプの銀行のことです。フィンテック時代のスタンダードになるかもしれません。

フュージョンバンクの他、チューリッヒに本社を置き、スイス金融市場調査局(FINMA)から銀行業の営業許可を得た「シグナム」(Sygnum)も仮想通貨銀行の1つです。

また、ブロックチェーンと既存の銀行サービスを掛け合わせた新サービスを目指す仮想通貨の開発プロジェクト「バンクエラ」(BANKERA)などの仮想通貨銀行構想もあります。

フュージョンバンクのバンキングシステムはすでに完成し、イギリスの銀行ライセンスを持って今年11月に開行する予定です。世界中の仮想通貨取引所や仮想通貨を発行する企業に無償配布される方針と発表されています。

仮想通貨取引所と仮想通貨銀行の違いは?

仮想通貨取引所も仮想通貨銀行も、「仮想通貨と法定通貨を交換(換金・両替)できる」という点は一緒です。ところが仮想通貨取引所の場合、仮想通貨取引所から銀行・金融機関の口座へ送金しなければ、換金・両替したお金が手元まで届きません。着金まで数日かかることもありますし、手数料も割と高いのです。

仮想通貨銀行であれば、そのような煩わしさはありません。仮想通貨銀行という同じプラットフォーム内で、「仮想通貨と法定通貨の交換(換金・両替)」「仮想通貨と別の仮想通貨の交換(換金・両替)」「交換(換金・両替)した法定通貨の送金」などの機能が完結します。さらに、デビットカード機能が利用できるようになるので、世界中の店舗などで決済に利用することも可能になります。仮想通貨銀行の口座から自動で引き落とされますから、とても便利ですよね。

さらに、フュージョンバンクでは、投資プラットフォームの構築も進められています。仮想通貨銀行内で、金・銀などの現物資産への交換、有価証券、不動産REITなどの投資も可能になるでしょう。送金や決済、投資・資産運用をワンストップで可能にするプラットフォームが仮想通貨銀行であり、そのメリットを感じられる日も近いはずです。

次回は、イギリスで行われたCCフォーラムについてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。監修を担当した書籍『THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える』が発売中。
オフィシャルブログも運営中。