70代を超えてなお、かっこよさを更新し続けている俳優・舘ひろし。「ハンコ、押してくれよ!」のフレーズも注目を集めた映画『免許がない!』(94)から30年以上、明らかに舘をモデルとした俳優・南条弘を、再び演じる。タイトルは、ずばり『免許返納!?』。

「タイトルは『もう免許がない!』でもよかったんだけど」と笑う舘に、1976年のスクリーンデビューから50年の俳優キャリアにおける“岐路”を尋ねると、渡哲也、『あぶない刑事』、『パパとムスメの7日間』のワードが上がった。

  • 舘ひろし

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前作から30年、「歌っちゃいけない?」男のカラオケ

――『免許返納!?』というタイトルを最初に聞いたとき、どんな印象でしたか?

驚きましたよ。プロデューサーたちが来て、『免許がない!』の南条弘を主人公にした新作をやりたいと。即OKしました。

――タイトルは最初から『免許返納!?』だったのですか?

僕はね、『もう免許がない!』とかでもいいなと思ったんですけど、皆さんの反対を受けまして(笑)。でも今、「免許返納」って結構、話題のワードですから。そういう意味では良かったかなと思っています。

――主人公の南条弘は、前作と同様、舘さんありきのキャラクターです。昨年、映画『港のひかり』の取材で舘さんにお話を伺った際、歌の話になり「自分の歌が下手だということにやっと気が付いた」「僕は、歌っちゃいけないんです」とおっしゃっていて「えー!」と思っていたのですが、今作でカラオケシーンが。嬉しいサプライズでした。

今、後ろにいる彼ら(※プロデューサーを振り返りながら)二人が仕掛けたんですよ(笑)。脚本を読んだときは、あんなに長く歌うと思っていなかったんです。ちらっと歌って終わりかなと思ったら、永遠に続くから(苦笑)。

――南野陽子さん演じるスナックのママにせがまれて、なんと「泣かないで」を!

やっぱり照れますよね。ちょっと後悔してますけど(笑)。

  • (C)2026「免許返納!?」製作委員会

    (C)2026「免許返納!?」製作委員会

「6カ月だけ」のつもりが、人生を変えた

――このコーナーのテーマである「役者の岐路」についてお尋ねします。ご自身のキャリアを振り返ったとき、ここが岐路だったと思える出来事はありましたか?

僕にとっては3つあります。デビューして、渡哲也さんとの出会いが1つ。もう1つは『あぶない刑事』との、恭サマ(柴田恭兵)との出会い。そしてもう1つ、『パパとムスメの7日間』(TBS系/07)をやる勇気があったこと。この3つが、今の僕のいる方向が正しいのだとすれば、今ある自分を作ってくれたと思います。

――最初の岐路、「渡哲也さんとの出会い」についてもう少しお願いします。

最初、石原プロで『大都会』をやっていて、そのパートIIIへの出演を打診されたんです。でも僕はその頃、映画をやっていて、「俺は映画の俳優だからテレビはやらないよ」なんて生意気なことを言って断ったんです。でも次に『西部警察』の話が来て、「じゃあ、6カ月だけやってみよう」と。そこで渡さんと出会いました。もちろん石原裕次郎さんとも。

――石原裕次郎さん、渡哲也さんというスターとの出会いはどんなものだったのでしょうか。

「スターさんって、これなんだな」と思いましたね。石原さんも渡さんも自分のロケバスを持ってるんです。シャワーとトイレ、キッチンの付いた。「スターだな」と思いました。

――なおかつ、渡さんのジェントルマンな姿に惹かれたのでしょうか。

まあそうですね。ジェントルマン。たしかにジェントルマンですけど、何より圧倒的な存在感ですよね。たたずまい。石原さんも渡さんも。『西部警察』ってどっかんどっかんやったり、いろんなお話がありますが、結局最後に頭に残っているのは、波止場で二人が向こうから歩いてくる画だけなんですよね。

――撮影中に石原プロ入りを勧められたそうですが、舘さんも“スター”の道を選ばれたんですね。

スターかどうかは分かりませんけど、お芝居で生きていく俳優ではなかったんですよね。僕に合った育て方をしてくれたのはあるでしょうね。たとえば走り方。『西部警察』で僕が走ったとき、最初に「走り方がおかしい」とプロデューサー達に言われたんです。僕はラグビーをやっていたから。それで「走り方からやり直そう」となったときに、小林専務が「ダメだ」と。「あれがひろしのスタイルだから、あれでやらせろ」とプロテクトしてくれたんです。専務はね、いつも「芝居は放っておいたってうまくなる、だからそんなことを気にするな」とも言っていました。

――石原プロの哲学に、自問自答した時期はありましたか?

全くないですね。全くない。だから合っていたんですよね。僕は勉強と努力が嫌いで今の仕事に入りました(笑)。親父が医者で、子どもの頃からずっと周りから「医者になるんだ」と育てられた。でも結局、高校の時はラグビーと恋に夢中で、医学の受験なんか成功するわけがない。その時に一生、努力と勉強はやめようと思ったんです。それが石原プロとよくマッチしたんじゃないですかね(笑)。

恭サマとの出会い、そして「勇気」の一作

――2つ目の岐路である『あぶない刑事』は、非常に長く愛されるシリーズになりました。これだけ支持されるキャラクターを持つということは、俳優としてどんな意味を持っていますか?

僕の場合、ただただ幸運だったと思います。周りの人がそういうふうに支えてくれたんでしょうね。その世代の人たちからすごく愛されて。恭サマと一緒にできて、すごくよかったと思います。

――3つ目の岐路には、新垣結衣さんと入れ替わり親子を演じた『パパとムスメの7日間』を挙げていただきました。

僕みたいな、いわゆるアクション系の俳優は絶対やらない作品なんです。女の子みたいになっちゃうわけですから。うちの父親なんかは、最初に見て、「ひろしは情けないことやってるな」とテレビを消しちゃったぐらいですから(笑)。

――企画が来たときには、舘さんも驚かれたかと。

石原プロに脚本が来て、小林専務が「こんなのが来てるぞ。やらないだろうが、一応見ておけ」と。でも読んで、僕は面白いと思ったんです。そもそも俳優ってどこかで“入れ替わりたい”という気持ちが根本にある。それがストレートに出ていた。それに、この作品を方程式で解くと、僕をアクション系で見たいと思っている人は、この作品は見ないだろうと。親父みたいに。逆に、そのとき僕が一番欲しかったマーケット層つまり女子中高生は見るぞと。すると、答えは出る。

――なるほど。

それで、先ほど3つ目は「『パパとムスメの7日間』をやる勇気があったこと」と申し上げたように、「やる勇気があった」。当時、ずっとハードボイルドばかりやってきた中で、あの勇気があったことが、岐路だったと思います。

「薄っぺらなかっこよさ」に人生を捧げた

――ありがとうございます。もうひとつ、舘さんにお会いするたびに、本当にいつもかっこいいなと感じるのですが、今回『免許返納!?』で主題歌を担当したTHE ALFEEさんが、舘さんのことを「かっこいいのではなく、かっこよくあり続けている人」とコメントされていました。

ありがとうございます。僕はね、“薄っぺらなかっこよさ”に人生を捧げたんですよ(笑)。

――え?

僕が思う本当にかっこいい人って、きっともっと地味にいろんなことを積み重ねている人じゃないかなと。でも僕のかっこよさは本当に薄っぺらで、吹けば飛ぶようなかっこよさ。でも、たぶんそのことに、自分は人生を懸けたんだろうなと思います。

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■プロフィール
舘ひろし
1950年3月31日、愛知県出身。1976年に映画『暴力教室』で俳優デビュー。ドラマ『西部警察』(79~/EX)をきっかけに渡哲也と出会い、石原プロモーションへ入社。ドラマ『あぶない刑事』(86~)のタカ役で大ブレイクを果たす。映画『終わった人』(18)ではモントリオール世界映画祭最優秀男優賞をはじめ数々の賞を受賞。2020年には旭日小綬章を受章。近年の主な出演作に映画『アルキメデスの大戦』『ゴールデンカムイ』シリーズ、『港のひかり』などがある。現在は2021年に立ち上げた舘プロに所属。主演映画『免許返納!?』が2026年6月19日公開。