サイボウズでは、2007年に導入した「選択型人事制度」により、子育て中の女性にも活躍のフィールドが広がった。社員の働き方が年々多様化していく中で、給与評価はどのように決めているのだろうか。前編に引き続き、サイボウズ事業支援本部 人事部マネジャーの松川隆さんに話をうかがった。

残業時間数は給与額と直接関係なし

給与は、「市場価値(社外的価値)」と「社内信頼度(社内的価値)」を総合的に判断して決定する仕組みだ。まず、公的統計や民間データをもとにした職種別のモデル賃金と社員個々のスキルを照らし合わせて、「この人が転職したら、大体このぐらいの金額の給与になる」といったレンジ(幅)を一人ひとり割り出して「市場価値(社外的価値)」を算出する。

次に、「社内信頼度(社内的価値)」を「Action5+1」と呼ばれる同社の行動指針(1)理想への共感(2)あくなき探求(3)知識を増やす(4)心を動かす(5)不屈の身体に「公明正大」をプラスした計6つの軸にもとづいて直属の上司と複数のマネジャーが評価する。その結果を加味してレンジの上下を決め、半年に1度の評定会議で最終的な給与を決めるという流れになっている。

また、給与決定後に大切にしているのが、社員へのフィードバックだ。「質問してくる社員に対しては、なぜこの給与額になったのか、具体的に今後どうすれば市場価値や社内的価値を上げられるのかをきちんと説明するようにしています」と松川さん。「選択型人事制度」の導入により、社員の働き方が多様化したが、それぞれの働き方の違いも含めて「市場価値」という社外的価値を基準に評価すること。また、徹底したフィードバックを行うことで、人事評価の公平性と納得感を高めているのだ。

「選択する働き方と給与額は必ずしも比例していません。勤務時間が短くても、アウトプット(成果)によっては、残業をより長くしている人より給与が高くなることもあります。また、キャリアアップの面でも不利になることはありません」。実際に、同社では女性の管理職も増えており、10人中2人が女性。役員の中根弓佳さんは、2人の子どもを育てながら短時間勤務を利用して働くワーキングマザーだ。

多様な価値観を認め合う企業へ

取材を進めていくと、同社は、いわゆる「女性に優しい企業」を目指しているわけではないことがわかった。最終的に目指すのは、「あらゆる立場の社員が活躍できる企業」だ。同社では、より多くの人がより長く働ける企業を目指し、現在もさまざまな取り組みを続けている。2012年からは副業が可能となり、転職や留学で退職しても復帰できる「育自分休暇制度」もスタート。2014年からは、「子連れ出勤制度」の試験運用も進めている。

キッチンスペースを併設した「BAR」。日中はランチや打ち合わせに、業務後は社内外の勉強会やイベントで使用されることもある

さらに、社員同士が顔を合わせる機会が少ないため、部署を越えてコミュニケーションを取りやすい仕組みもつくった。社員5人以上が集まるイベントや誕生日会、部活動などの費用を会社が助成する。お酒を飲みながらさまざまなテーマについて語り合う「仕事BAR」も定期的に開催している。

同社では、このように新しく制度を導入する際にはトライアル期間を設け、社員同士が意見を出し合い改善を加えたうえで本導入する流れとなっている。「制度は与えられるものではなく、つくるものである」という文化が浸透していることも、働きやすさの一因だろう。

「新しい制度が増えるごとに、完全在宅勤務の人、2つの企業で働く人、起業する人、学校に通う人など、社員個々の働き方がより多様化してきました。そうした流れの中、育児と仕事の両立は特別なことではないという風土が自然と根付いてきたように思います」と松川さん。

この言葉の通り、2006年の育児休暇制度導入以来、社員の働き方の選択肢を増やしていくことで、より働きやすい環境の構築に力を注いできた同社。いずれも制度としてしっかりと定着している。

社員専用のコミュニケーションラウンジ

最後に、今後の展望をうかがった。「当社は『100人100通りの働き方』をコンセプトに掲げています。障がい者雇用も含めて、さまざまなバックグラウンドを持った人に対して働きやすい環境づくりを目指し、今後もチャレンジを続けていきたいですね」と力強く語った。

さまざまな取り組みを進化させ、文化として根付かせたサイボウズ。このように、多様な価値観を認め合い、”真のダイバーシティ”を目指すことこそが、結果的に女性の働きやすさにつながっていくのではないだろうか。

【DATA】
社員の男女比: 65対35
平均年齢: 33.8歳
正社員数: 339人
育児休業からの復帰率: 100%