先週の4月16日、中国で1-3月期のGDPが発表されました。その結果は前年比で7.4%の成長になり…と、分析を書き始めた時点でこの記事を読み飛ばす方も多いかと思いますが、今回のテーマは経済指標の分析ではなく、中国の経済指標はどんなのがあって、どのように注目されているのかを、3つのキーワードを使って整理してみたいと思います。

まず、最初のキーワードは「まとめてドン」です。中国の主だった経済指標は、「国家統計局」というところが発表しているのですが、まとめて発表される傾向があります(以前に比べてバラツキが出はじめてはいますが…)。

今回のGDPが発表された4月16日には、工業生産や小売売上高、固定資産投資なども同時に発表されました。年間の発表スケジュールは国家統計局のホームページ上に記載があります(中国語・英語)。また、統計局のページですが、最近になって過去の指標結果をまとめて表示できたり、グラフ化も可能になるなど、格段に使いやすさが増していますので、興味があれば覗いてみてください。

「中国国家統計局」トップページ画面

続いてのキーワードは「ダブルスタンダード」です。中国の経済指標の中で注目度が高いのはPMIと呼ばれるものです。PMIとは購買担当者景気指数といって、製造業や非製造業の購買担当者に景気に関するアンケート調査を行い、その結果を指数化したものなのですが、中国では民間金融機関のHSBCが発表するものと、物流購入連合会(CFLP)と国家統計局が共同で発表するものと2種類あります。

両者の違いですが、HSBC版は中小企業や輸出企業を中心に調査を行い、CFLP版は国営企業など大企業を中心に調査を行っています。景気の動向に敏感に反応する先行指数として注目されるのはHSBC版のPMIになります。

最後のキーワードは「リカちゃん」です。有名玩具メーカーの着せ替え人形の名称ではなく、中国の現首相である李克強氏を中国語読み(Li Ke Qiang)したものになります。何故、中国の首相と経済指標が結びつくかと言うと、実は、中国の経済指標に対して信頼性への議論が絶えません。李首相自身もその点を認識しているらしく、以前、遼寧省の党委員会書記に就任していた際に、「GDPはあてにならない。電力消費量と鉄道輸送量、銀行融資の3つの指標を参考にしている」と発言したのが注目され、この3つの指標を「李克強指数」、または「リカちゃん指数」と呼ばれるようになりました。

この「リカちゃん」指数ですが、意外とあなどれないものがあります。例えば、2012年6月の電力消費量が前月比で横ばいだったのにもかかわらず、大量の電力を使用するはずの工業生産が9.5%の伸びとなっており、「矛盾してない?」というツッコミが国内外のエコノミストから挙がった経緯がありました(当局の報道官は「省エネ対策が効果をあげた」と説明しましたが…)。

信頼性はともかく、何だかんだ言っても、こうした経済指標は中国の経済状況を把握する手掛りになることは間違いないわけですから、ひとつひとつの指標を鵜呑みにし過ぎず、複数の指標を全体的に眺めてみるなど、ちょっとしたコツが必要になります。

中国国家統計局のサイト

執筆者プロフィール : 土信田 雅之

楽天証券経済研究所 シニア・マーケットアナリスト。国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト。新光証券(現:みずほ証券)、松井証券を経て、2011年10月より、現職。国内株市場の動向はもちろん、世界の株式市場、特に中国経済や中国企業の分析にも強みを持つ。テレビや新聞、雑誌など幅広いメディア媒体で活躍中。