「全人代」がマーケットに与える影響とは?

中国の北京にて、9日間の日程で開催されていた「全人代」というイベントが3月13日に閉幕しました。この全人代は毎年3月に開かれ、何かと国内外の株式市場などで注目されるのですが、今回は全人代と何なのかをざっくり理解し、マーケットに与える影響などを簡単にまとめてみたいと思います。

全人代の正式名称は「全国人民代表大会」と言います。これまでにも繰り返し登場してきたように、日本では何故か「全人代」と表記されるのですが、地元の中国では「全人大」、「人大」などと略されます。言葉の通り、全国の人民の代表が集まる大会という意味です。

人民(国民)の代表が集まるわけですから、議員が集う議会のイメージに近いです。事実、全人代は日本の国会と同じく立法権(法律を制定する権限)を担っています。また、議員にあたる人民代表の数は最大で3,000名(この人数を超えてはならないというルールがあります)、任期は5年です。

ただ、日本の国会と異なるのは、代表を選出するプロセスが直接選挙ではないことや、日本の内閣に相当する国務院や司法機関を監督するなど、単なる立法機関以上の権限を持ち、中国の憲法でも国家の最高権力機関として位置付けられている点です。全人代は最高権力機関のイベントですから、確かにマーケットの注目を集めるのも頷けます。

大体の政策方針は、共産党のイベントで決まっていることが多い

とはいえ、ひとつ頭に入れておきたいのは、中国は共産党によるほぼ一党独裁政権であるということです。今回の全人代でも、経済政策や改革への取り組み、予算の承認などが議論されたわけですが、実は、大体の政策方針は、昨年11月の三中全会や中央経済工作会議など、共産党のイベントで決まっていることが多く、全人代は共産党の意思決定を承認するだけという側面があり、注目度が高い割に、必ずしも何か目新しい決定事項が次々と出てくるわけではありません。

そのため、マーケットにとって重要なのは、開幕式で李克強首相が行う演説(政府活動報告)や、閉幕後に開かれる記者会見などです。今年の経済成長率の目標はどのくらいなのか、今後の政策運営の方針はどうなのか、どの分野の課題に力を入れて取り組むのかといったことから、株式銘柄やセクター探しの材料となります。

ちなみに、最大の注目点だった、2014年の経済成長率目標は7.5%でした。全人代の開幕前は改革の実行を重視して7%に下方修正するのではという見方もありましたが、結果は3年連続の目標据置きでした。中国は今後も景気優先のアクセルと改革優先のブレーキを上手く踏み分けながら政策運営をしていくことになりそうです。

参考

「全人代」の専門のサイトは以下の通り。

http://www.npc.gov.cn/ (中国語)

http://www.npc.gov.cn/englishnpc/news/ (英語)

執筆者プロフィール : 土信田 雅之

楽天証券経済研究所 シニア・マーケットアナリスト。国際テクニカルアナリスト連盟 認定テクニカルアナリスト。新光証券(現:みずほ証券)、松井証券を経て、2011年10月より、現職。国内株市場の動向はもちろん、世界の株式市場、特に中国経済や中国企業の分析にも強みを持つ。テレビや新聞、雑誌など幅広いメディア媒体で活躍中。