「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、東京に比べて生活費があまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。 連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京と地方、両方の生活を経験して感じたことを交えながらお伝えいたします。

奨学金とは

  • 地方の生活コストは本当に安いのか? - FPが地方に移り住んで感じたこと - 第67回「地方で働く人を応援する奨学金返還支援制度」

経済的な理由や家庭の事情等で高校や大学、大学院等に進学することが困難な人や、進学後に授業料等の支払いが困難になり、退学せざるを得ない人もいます。学びたい気持ちを金銭的なことや、親や親族の事情で諦めることは、とてもつらいことです。

そのようなことがないように、誰でも安心して進学できるように金銭的なサポートを受けられる制度として、奨学金制度があります。

大学卒業者が地方定着するために

奨学金制度の中で最も世間に知られているのは、独立行政法人・日本学生支援機構の奨学金制度ではないでしょうか。その日本学生支援機構は、地方の産業等の担い手となる若者の地元企業への就職やUJIターン(※)を促進するため、地方大学等に進学する学生に対して無利子で奨学金を活用できる特別枠への推薦を行ったり、地元の企業等に就職した人の奨学金返済を支援したりするための基金を造成する地方公共団体の取り組みを支援したりしています。今回は、都道府県が行っている奨学金返還支援制度をお伝えしていきます。

※ 以下3つの人口還流の総称
「Uターン」地方で生まれ育った人が都市に移住したあと、再び生まれ育った地方へ戻って生活すること
「Jターン」地方から都市に移住したあと、故郷近くの地方都市へ移住すること
「Iターン」都市で生まれ育った人が地方へ移住すること

秋田県「秋田県奨学金返還助成制度」

 
募集期間 : 2020年4月1日から2021年2月20日まで
 
応募要件 :
【1】奨学金に関する要件 : 秋田県内での就職日以降に、日本学生支援機構の貸与型奨学金など、県が定めた奨学金を返還予定または返還中であることなど
【2】定住に関する要件 : 2018年度以降に大学・高校等を卒業した人の場合、2019年4月1日以降に、定住の意志を持ち秋田県内に居住していることなど。また、秋田県内に本社機能を有する企業等に雇用された場合で、一時的に県外事業所または事務所で就労する場合も助成の対象となる
【3】就労に関する要件 : 2019年4月1日以降に秋田県内に本社がある企業等に雇用されていることなど。なお、有期雇用やアルバイトの人でも就労の事実や所得を証明できる人は、全て対象となる。ただし、公務員などは対象外である
 
助成金上限額
【1】一般分     年額13万3,000円
【2】未来創生分   年額20万円
 
助成期間 : 奨学金貸与期間による(最大で36ヵ月分)
 
未来創生分の対象者は、「一般分」の対象者で、県が指定する「特定5業種」について認定を受けた企業等に就職する、専門分野の大学等を卒業した人。
 
秋田県公式サイト
 

和歌山県「和歌山県中核産業人材確保強化のための奨学金返還助成制度」

 
募集期間 : 2022年3月卒業予定の場合 最終応募締め切り : 2021年1月15日
 
応募要件 :
【1】奨学金の貸与を受けている、または貸与を受ける予定の人
【2】2021年3月卒業予定または2022年3月卒業予定の学生で、理工系、情報系、農学系、薬学系の学部・研究科に在籍する人
【3】和歌山県内の製造業、情報通信業の企業へ研究・技術開発職として就職を希望する人
 
助成金上限額 : 100万円
 
和歌山県公式サイト

熊本県「ふるさとくまもと創造人材奨学金返還等サポート制度」

 
熊本県と県内企業(参加企業)が2分の1ずつを負担して、県内就職する人の奨学金返還等を支援する制度。当該制度による奨学金返還等の支援を受けるためには、あらかじめ制度に登録することが必要です。
 
募集期間 : 2021年4月就職予定者の場合
 
2019年10月1日から参加企業への採用内定前日または2021年2月28日のいずれか早い日まで。
 
応募要件 :
【1】新卒予定者、既卒者、社会人経験者も対象。ただし、社会人経験者の場合、2019年10月1日時点で熊本県外に在住している人で、2020年4月1日時点で35歳以下(1984年4月2日以降生まれ)の人に限られる
【2】登録申請時点で熊本県内の企業等に就職していないこと
【3】登録申請時点で参加企業への就職が内定または決定していないこと
【4】2021年度に参加企業に就職し、当該企業で概ね10年以上継続して就業することを希望していることなど
 
支援金上限額 : 456万円(就職後10年間に分けて支給)
 
なお、支援金額は設定上限の範囲内で参加企業が設定する。
 
熊本県公式サイト  
 
※ 上記は8月24日12:00時点の情報となります。詳しい詳細に関しては、公式サイトをご確認ください

終わりに

3つの県の奨学金返還支援制度についてお伝えしましたが、県ごとに、応募要件も支援する金額も異なります。地方の大学に入学して生活することにより、その地域に魅力を感じて定住を考えている学生さんもいらっしゃるはずです。

今回ご紹介したように奨学金返還支援を行っている都道府県が他にもありますので、お住まいの地域で奨学金返還支援制度があるか、調べてみてはいかがでしょうか?