「東京は物価が高いので、生活費が高い」または、「地方は物価が安いので、生活費が東京に比べてあまりかからない」と世間でよく言われていることは、本当なのでしょうか。

連載コラム「地方の生活コストは本当に安いのか?」では、ファイナンシャル・プランナーの高鷲佐織が、実際に東京から地方へ移り住んで感じたことを交えながらお伝えいたします。

小学受験・中学受験は一般的?

地方で暮らしていたときに、自宅のポストに投函されているチラシには、塾のチラシが多かったです。特に高校受験をする中学生をターゲットにしたチラシが多かったと記憶しています。塾に通う子供たちもよく見かけました。

東京に戻ってからも、ポストには塾のチラシが多く入っていますが、地方で暮らしていたときに見たチラシと少し違うのは、小学受験をする幼児をターゲットにしたチラシや中学受験をする小学生をターゲットにしたチラシが多いことです。

地域の場所に関係なく小学受験や中学受験はあると思いますが、人口密度が高く、多くの私立校が存在する東京や神奈川などでは、幼いころから受験を経験する子供たちが多いようです。

小学生の教育費

受験をしない場合でも、小学生の時期に、習い事を経験させる親御さんは多いでしょう。

小学生の子供を持つ親御さんは、「我が子には、金額関係なく高度な教育を受けさせてあげたい。しかし、住宅ローンの返済がある、親の介護もある、自分の老後の蓄えもしなければならない」などと、家計の資金繰りについて頭を悩ませているのではないでしょうか。私自身、ファイナンシャル・プランナーとして、教育費を捻出するための家計の資金繰りなど相談を受けることがあります。

では、小学生の教育費は具体的にいくらぐらいかかるか、見てみましょう。

文部科学省による子供の学習費調査

文部科学省では、子供の学習費調査として細かく教育費に関する統計調査を行っています。小学校での支出として、公立小学校と私立小学校に区分し、授業料や修学旅行・遠足・見学費など、項目ごとに分かれています。

下記の表Aは、保護者が支出した1年間・子供1人当たりの学習費総額(保護者が子供の学校教育および学校外活動のための支出した経費の総額)です。

学習費総額を見ると、公立小学校の32万1,281円と私立小学校159万8,691円の差は、約5倍となっています。学校教育費の詳細を見てみると、公立小学校では「学用品・実験実習材料費」1万7,127円の支出が最も多く、私立小学校では「授業料」48万5,337円の支出が最も多いです(黄色で表示)。

また、学校外活動費の中の「学習塾費」を見てみると、公立小学校では5万3,313円、私立小学校では、25万2,790円となっています(緑色で表示)。受験をして私立に入学したのだから学校教育だけで十分というわけではないことがわかります。

  • (表A)平成30年度(2018年度)子供の学習費調査(小学校部分を抜粋)

    ※出典:平成30年度(2018年度)子供の学習費調査の結果(文部科学省ホームページ)
    ※調査の対象は、公立ならびに私立の小学校と、その小学校に通う児童の保護者である。
    ※調査項目は、保護者が支出した1年間・子供1人当たりの経費(学校教育費、学校給食費、学校外活動費)である。

終わりに

私が暮らした地方の地域では、私立小学校が近くになかったせいか、制服姿の小学生を電車の中で見かけることはありませんでした。東京に戻ってきて、制服を着た児童が、大きなランドセルを背負い大人の中に混ざって電車に乗っている姿をよく見かけます。このような光景を見ると「東京だなぁ~」と改めて実感します。

文部科学省のホームページの統計情報には、上記の表Aの他にも教育費に関する統計調査の結果が公表されています。子供の教育費に関して、親御さんの考え方はそれぞれ違いますが、「教育費の支出はだいたいどれくらいなのか」いろんな視点から見ておくことは、ご家庭で教育費について考えるときの参考となるはずです。

文部科学省ホームページ「子供の学習費調査」の「結果の概要」などをご参考になさってください。

高鷲佐織(たかわしさおり)

ファイナンシャル・プランナー(CFP 認定者)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/DCプランナー1級。

資格の学校TACにて、FP講師として、教材の作成・校閲、講義に従事している。過去問分析を通じて学習者が苦手とする分野での、理解しやすい教材作りを心がけて、FP技能検定3級から1級までの教材などの作成・校閲を行っている。また、並行して資産形成や年金などの個人のお金に関する相談を行っている。